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    koimari

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    時々rpsの架空のはなし

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    koimari

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    ラクウォノ。短い幕間

     アイボリーのタイルに白熱灯が反射し、水を含んで重みを増したゴールドのナイトガウンの裾がゆらんと揺れる。剣呑な光を宿したまま、ウォノはラク以外を浴室から追い払った。白々した光でできたウォノの影はラクに重なったまま、伏せた瞼の奥を探るように視線が刺さった。死の淵から生還し、ひりひり尖った神経が、意識の遥か下層でラクを逃してはならないと警鐘を鳴らしている。その甲高い音に負けないように、ラクも心のうちで叫ぶ。僕を見つけてください。ほら早く。昂った熱がウォノの体を駆け巡り、下腹で煮える。ラクに押しあてる形になっていることに気づき、ウォノの方が驚いたように眉を上げた。
    「……ラク」
    「チーム長」
    「ラク」
     濡れた生地ごと腕を引き寄せると、ウォノの語気が強くなる。寄せられた眉根の隙間に威嚇とごく僅かな動揺が覗いた。壁に背をつけたまま、ラクはゆるゆると足元に跪いた。ジャケットの背が壁面のタイルを擦り、さらさらと音を立てた。重い瞼を伏せた先で、ウォノの猛った中心にびっしょりと濡れた冷たい生地が張り付き、形を浮き立たせている。ウォノの股座に顔を寄せると、スラックスごしの平らなひざが、硬いタイルにこつりとあたる。ふっと吐いた息が、冷えきった衣服の繊維を撫でた。主人に忠実な犬のように跪き、わんと鳴く代わりに口を開いた。
    「……僕、上手ですよ」
    「やめろ」
     口角の内側に親指を掛けられ、顔ごと力任せに引き剥がされた。噛み跡だらけのぎざぎざの爪がラクの頬の粘膜を抉り、滲む唾液に鉄の味が混じる。唇を閉じ、ウォノの親指を吸い上げ、血液混じりの唾液をこくりと飲み込んだ。チームの班員たちとを隔てる扉に鍵はないが、ウォノが望めばラクはそれすらスリルに変えられるだろう。ウォノの苛立った顔が、苦々しげに歪む。鏡を見るまでもなく、うっとりと目尻を染めているソ・ヨンナクはそれなりに淫靡に映る。
    「……触れるな」
     ウォノは吐き捨てた。無言でラクを引きずるようにして立ち上がらせると、手首を手錠で拘束した。勢いよく蛇口を捻ると、熱い湯がほとばしる。たちまちもうもうと湯気が立ち、レストルームはサウナに変わる。スーツのままのラクのこめかみに、じわりと汗の玉が滲んだ。
     氷から湯になった浴槽の中に、生まれたままの姿のウォノがいる。表情は伺えずとも、広い背中と引き締まった腰は雄弁に拒絶を伝えてくる。張りのある肌を幾粒もの珠がぱらぱらと落ち、その中で自身に指をかけた。ざあざあと続く水音に、ぬかるんだ音が混ざる。浴槽から勢いよく溢れ、跳ね返った水滴がラクのスラックスの裾を濡らしていた。むしむしと水蒸気とソープの香りが満ちた浴室で、ラクの白いシャツはじっとりと湿り、平坦な呼吸もわずかに浅くなる。ウォノがひと通り体を清めて、何事もなかったかのようにお仕着せのバスローブを羽織る様をラクは二つの目で見つめていた。わしわしとタオルをかき混ぜる間から、ウォノの抜け目ない眼光が突き刺さる。無力な協力者の貌をして、ラクは目を逸らした。
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