Character Episode名無し鬼(IF)
黒の国の奥のさらに奥。とある鬼の住まう山がある。
鬼の力は強かった。千里を見通す100の目と、世の理を理解する知能。
鬼に決して名前を与えてはいけない。
名を与えたが最後、山から出てしまう。
人を惑わせ、欲を放ち、世を乱す。
どんな名前も、鬼に与えてはいけない。
「………と言われてものぉ、暇なものは暇なのじゃ。焔夜や、焔夜。遊びに来ておくれな。お主のための菓子もたんまり用意してやるでの。いつでも我を訪ねておいで」
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ある日山に迷い込んだ“人”が居た。
この場に相応しくないその客に鬼は興味を示す。
根城に招き、さまざまな幻術を持ってもてなした。人は大層よろこび、快楽に酔い、入り浸る。
「あんたのこと何と呼べばいい?」
「我には名がなくての。そうだ、お主が付けておくれ。我に名を…名前(自由)をつけておくれな」
鬼はにんまりと笑った。
次の日、人の国にあるとある集落が一晩のうちに消えたという。
まるで最初から何も無かったかのように更地となり、鬼の高笑いだけが残った
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鬼は根城にて酒を飲みながら笑う。
「人の国の神獣は強くてな、我にも出来ぬ事はあるのだ。焔夜は愛らしいの。
我の言葉に惑わされずにいつも真っ直ぐ見てくる子や。
さぁ遊びにおいで、鬼は暇での」
いつでも訪ねておいでな。
知りたいモノがあるなら視てあげよう。どんなものでも。対価を払うならばどんな事でも叶えてやろう。
さぁ、おいで人の子よ。名を付けれおくれな。