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    IFの世界の先

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    IFの世界の先

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    リンゼ×レイシー 
    リンレイ2

    ##IFの世界の先
    ##Episode
    ##リンゼxレイシー
    ##リンゼ・ミルア
    ##レイシー・ミラー

    Episode「……ーー神獣様のご加護があらんことを」

    朝はミサがあり、信徒達と祈りを捧げ、厳かな空気の中で1日がはじまる。


    きゃいきゃいとはしゃぐ人々に囲まれながら信徒の声に耳を傾け、時に頷き、時に助言を施す。

    告解の希望があれば施し、おおよそそう過ごしていれば午前の仕事は終わっていた。


    「今ねー好きな人がいるんだけどー。あ、リンゼっていうんだけどね?俺のこと放り投げるの。冗談じゃなく本当に」

    「へー、ここは恋愛相談室ではないのでお帰りください。国に」

    ………ここ最近、淫魔に取り憑かれるまでは。


    よほど暇なのか、他にすることがないのか朝から晩まで追い回してくる淫魔、もといレイシーを掴んでは投げ、つまみ出しては戻ってくるのを数日繰り返している。

    厄介なものに懐かれた…と思いながらも、そのうち飽きるだろうと放っておけば、黙ってるのをいい事に勝手に背に抱きつくわ、耳に触るわで好き放題だ。構うと喜ぶので手に負えない。
    それでもそこまで悪い気もせず好きにさせていた。


    しかしここ最近のリンゼは様々な理由で疲れていた。
    レイシーではなく、ここのところリンゼを狙ってなのか謎の「えろい女です」アピールしてくる信徒もいるわけで…


    「あ"〜〜……ここはどろどろの昼ドラ劇場かってんだ。くたばるなら俺の管轄外で死ね、めんどうだから…」

    しかも不倫。神の国だぞここは。
    告解を愛の告白の場と勘違いでもしてるのか毎回毎回それはもうながーいポエムを聞かされている。最近は聖書と見せかけた漫画を読む事で退屈さを紛らわせているが…

    「あのアバズレよりレイシーのがよほどいい…」


    酒を飲みながら天井を仰ぎ見ればガタンッと音がする。嫌な予感のまま振り向けばそこには噂をすればなんとやら…レイシー本人がいた


    「………おや、まだお帰りではなかったのですね。外はもう暗いので気をつけてお帰りください」

    「いやいやいや、今なんて言った?ねぇもう一回!もぅ1回言って?俺可愛い?可愛いよね??」

    「はいはいかわいいかわいいよかったですねー」


    明らかに感情のこもってない言葉でも嬉しかったのか笑顔でぴょんぴょん跳ねている。
    平和なその様子にふっと笑えば、それを見たレイシーはピタっと止まり顔を逸らした。

    「…え、今の…ぇ。何それ。本当顔いいわね…」

    「ではそろそろお帰りください」

    むんずと首根っこを掴み外に放り投げる。
    きゃんきゃん騒ぐ声はスルーして酒をあおった。


    ------


    「……レイシー。少しよろしいですか?」

    数日後の昼下がり。淫魔にも関わらず堂々と教会でくつろいでいた彼に声をかけた。
    裏の部屋に招き入れて茶を差し出す。

    当の本人は「ついに俺の魅了がつうじた?…んなわけないか…」とぶつくさ言いながらもおとなしい。


    「ここ最近迷惑な……おっと失礼。熱心だった女性信徒が教会に来なくなったのですが何かご存知ですか?」

    「あぁ、あれ?俺は知らないけど。最近見ないわよねー、今頃どっかで遊んでるんじゃない?黒の国とかで♡」


    別にその信徒がどうなろうと知った事ではないが(正直自業自得としか思えない)、なんとなくレイシーが関わったことが気に障るのだ。


    「…レイシーが…ご人身が魅了を使用されたので?」

    「俺が?まさか。俺はリンゼだけだし♡まぁ冗談はおいといて、そもそも俺の好みじゃないしまずそうだし…なにより俺のリンゼに粉かけてムカつくし。知り合いの淫魔が暇してたから…たまたま会ったとかじゃない?」

    「あなたのリンゼではないですね」

    「そこ重要?未来は俺のでしょ??」


    きゃんきゃんと吠えるレイシーを横目に見て少しホッとする。
    …………なぜ俺がホッとしてるんだ。だいぶ毒されている気がする。良かったじゃないか、見ず知らずの淫魔が勝手にしたことだとわかって。
    そうだ、知り合いがやらかしていたら対処しなければならないし、きっとそれだ。そうでなくてはいけない。


    「ふ…まぁ、そういう事にしておきましょうか。私は今機嫌がいいのでたまには貴方のしたい事にでも付き合いますよ?」

    「え。……え!?本当に!?いいの??」

    「まぁ今だけですが…無ければいいですよ。出口はあちらです」

    「ある!あるから!………じゃあキスして?」

    「はい」


    ある程度予想していた反応だったので額に祝福を与えるようにキスを落とす。
    きっとこの後違うだなんだと騒ぐことも念頭にいれておいたのでサッと離れた。キンキン声は耳に響く。
    しかしそこは予想を裏切りキスを落とした額を抑えてレイシーは固まっていた。顔を真っ赤にして。


    「…………想像以上にウブなんですね」

    「…う、うるさいわね!本当にするなんて…そん、そんなこと思うわけないでしょ!!いつもなら絶対ないのに……」

    「淫魔として大丈夫ですか?」


    あぶない。うっかりかわいいとか思ってしまったではないか。そういえば顔は好みだった。
    別にもう隠す必要もないか、と思い目の前で酒をあおる。洗い物を増やすのも面倒だったのでラッパ飲みだ。ツマミがほしい。

    「あなた一応神父よね?俺の前でそれ大丈夫なの?」

    「神獣様は飲酒については何もおっしゃってないので」

    2人してクスクス笑う。お茶よりそっちがいいなどと言うので酒を分けてやることにした。
    いつもは1人で飲んでいる為、少し不思議だが悪くない。その日はたわいもない話をしてから…追い出して眠りについた。

    ----



    「は?何、お前如きが俺の相手とか無理だから」



    いつもは鈴を転がすような可愛らしい声を発する同じ口で、地を這うような低音で言い放つ。
    男なんだよなー、と思いながらも様子を伺えばあまり治安のよろしく無さそうな男共に囲まれているではないか。

    「そんなこと言わずに付き合えよ、どうせあの神父には相手されてねぇんだろ?」

    ありきたりなゴロつきに品のない仕草に言葉。ここはそういう奴らも集まる場所だ。
    教会とはいえ、国境沿いの…見捨てられた教会。ここを抑えれば入国しやすくなるのもあり、ああいう輩が集まるのだ。

    あぁ見えてレイシーは黒の国の民、リンゼには効かないが魅了等の能力もある。きっと放っておいても自分で解決するであろう。
    そう思ったはずだ。確かにそう考えてタバコを吸っていた。

    だが意思に反して身体は動き、まだ吸いかけであったタバコをレイシーの肩を掴んだ汚い手に押し付けていた。


    「!?!アッツ!!!!てめ、なに」

    「…あぁ、うっかり。灰皿と間違えてしまいました。吸いかけだというのに…勿体ない事をしてしまいましたね」


    3人。奥にいる、おそらく見張りであろう男達を足しても5人。全くしょうもない。
    イライラする。汚い手で触れたことも、声をかけた事さえも。気に入らない。


    「本日のお客様、ですかね?残念ですが…あなた方に対価を払えるとは思えませんね。恥をかくまえにお帰りになられては?」

    「てめぇ…神父が舐めやがって…」

    「おやおや、刃物ですか…、古風ですね。…………俺を脅すってんならせめて鉄砲玉ぐらいもってこいや」


    刃物を構えた男の腕をへし折りぶん投げる。そのまま後ろに居た男達にぶつけて勢いを殺さず蹴り飛ばした。
    見張りの男達もこちらに気付き姿を見せたのを確認し、その足に向けて男達が持っていたナイフを投げる。
    命中したのを横目で確認し、もう1人には苛立ちを込めて思いっきり顔面にお見舞いした。


    「……運動にもならねぇなぁ?恥をかくって言っただろ、あ"?神父だからなんだって??ほらこたえてみろよ。素っ裸にしてそこらの木に吊るしてやろうか?良かったなぁ、心優しい誰かが助けてくれるかもしれないぞ。たっくさんの人に見られるからなぁ」


    リーダーであろう最初の男の前髪を掴み揺さぶる。笑みを浮かべたこちらとは対照的に悪魔でも見たような表情を浮かべガタガタと震えていた。何もこたえないことに興が覚め、ぶん殴って気絶させる。他の奴らも同様に気絶させていれば呆然とこちらを見ているレイシーと目が合った。


    「…………お怪我はありませんか?怖かったですね」

    「今さらそのキャラ無理あるから。違和感すごいわ。もぅ素でいいわよ。」

    「チッ、何絡まれてんだよ。うちの敷地内で問題起こすんじゃねぇ、めんどくせぇだろ」

    「あんたの変わり身のが怖いわ」


    ズルズルと男共を引きずり縄で縛り上げ、宣言通り木に吊るす。汚物は見たくなかったので裸には剥かなかったが金目の物だけは貰っておいた。迷惑料にしては足りないが大目に見てやろう。


    「………なんで来てくれたの?一人でどうにかできるってわかってたでしょ?」

    「やべ、タバコ最後の一本だったじゃねーか。おいレイシー、この銘柄買ってこいよ」

    「パシリじゃないのよ。話聞いて」


    拗ねたように袖を引く姿は最初の男共に対する態度とはまるで違って、上目遣いでこちらを伺っている。
    それにどこか満足感を覚えて自然と口角があがるのを自覚した。これはまずい。


    「ここはそう治安のいい場所じゃねぇ。国境沿いの、中央に見放された教会“ということにしている”いわば城壁なんだよ。つまりこういうのを処理するのが俺の本来の仕事ってことだ。わかったか?」

    「へぇ……それリンゼ危ないじゃない。ってそうじゃなくて!俺が聞きたいのは」

    「その前に俺に言うことあんだろうが。助けて貰ったら言うことは?」

    「………ありがと」


    よく出来ました、と頭を撫でる。レイシーといるといつもより笑っている気がするな…と思えば撫でられたのが嬉しかったのかレイシーが顔を赤らめていた。


    「……それわかっててやってるの?ほんとその顔ズルいわね…。」

    「確かにレイシー1人でも対処できただろうな、雑魚だったし。ただアイツ…肩掴んだだろ。汚ねぇな、と思って手をだした。あぁ、そうだ…消毒」

    「………へ?」


    掴まれた肩をぱっぱとはたいて屈んでその肩口に頭を擦り付けた。
    すりっ…と擦り付ければ髪がくすぐったかったのかびくりと身体がはねる。
    自身の香りがついたのを見て満足し、ひょいと持ち上げる。いつも思うがコイツ軽すぎないか?


    「さぁて、レイシー。貴方もお帰りの時間ですよー」

    「は?ちょ、待っ!!!ばかぁぁああ!!」


    うーん、小さいからかよく飛ぶな。
    レイシーは魔力で浮くことも出来るから怪我をすることもないだろう。今までも容赦なく投げてきたが怪我一つせず翌日には来る。

    「あ、しまった…タバコ…」

    仕方ない。自分で買いに行くか。ついでに強い酒も買って飲もう、臨時収入もあったしな。
    翌日も来るであろう淫魔用の菓子も買ってやってもいい。


    「…………菓子よりツマミでいいか。俺も食えるし」
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