声 鈴音
優しく呼び止めるこの声は、麻鉱様。
鈴音
低く咎めるような、でも呼び戻してくれる声は、亜光様。
鈴音
勢いがあって、怒ってるみたいだけど、本当は怒ってない声は、田里弥様。
鈴音─ 鈴音─ 鈴音─ 鈴音─
その声も、あの声も、どの声も。全部全部憶えている。申赫楽様、蛇輪公様、虞寧様、もう傍にはいない、大切な人達。全部全部憶えている。顔もちゃんと、手の大きさも、背の高さも、見上げた時の首の痛みも、私はちゃんとちゃんと、全部憶えています。
だから、お願いだから、私のことを忘れないでください。お願いですから、私を連れて行って……。
一人は嫌なの。一人は怖い。独りは寂しい。独りはもう嫌なんです。
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