隣人の声 榮寿は庭の片隅にしゃがみこみ、木の根元に手を伸ばしている。
李牧はその背を見つけて、ゆっくりと近づく。大きな音を立てて近づくと、榮寿はこれでもかと顔を歪めるため、そっと近づく。
「そんなところで何をしているんですか?」
「お前に関係ない」
声をかけると、榮寿は顔も上げず答える。そうつれないことを言わなくてもいいでしょう。とは言わずに、李牧は小さく息をついて、榮寿の隣にしゃがみこみ、その手元を覗き込み、ぴしりと固まる。
「ろ、……えと、榮寿?それは……」
「そこにたくさんいた」
「そ、そう、ですか」
あの李牧でさえ狼狽える。ひく─と、口の端が引き攣る。榮寿は李牧をちらりと見て、また手元に目を戻す。
榮寿の指には、一匹の青虫。反対の手には、別の芋虫が何匹も乗っていた。
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