久しぶりの二人の時間、久しぶりの嶺二の家。模様替えまでされた小綺麗な部屋にはじまり、おもてなしの域を超えた、嶺二による蘭丸の歓迎は、二人が並んでプレステに向かうと同時に、その意味が蘭丸には分かった。ゲーム画面が点き、「手加減無しだ」と宣言したものの、結果は嶺二の圧勝。負けず嫌いが高じ、ひたすら勝負に燃え、子供のように馬鹿騒ぎをした。つまるところ、馬鹿になりたかったのだ。蘭丸をもてなす部屋作り、料理、遊び、その他の気遣いのようなすべては、自分の――嶺二自身のための――快楽的一興。事務所の空き部屋に引き摺り込まれてから、嶺二の思うまま。それに気付いた時、蘭丸もまた、どこか欠乏していた欲求に気付いた。しかし、「それ」は口にしたら嶺二の思うツボだった。同時に、蘭丸にとっては口が裂けても言いたくはなかった。だから、今は流れに流されるだけだった。
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