【不源】源田が頑張って誘う話我ながら察しはいいほうだ。だから当然、源田が言わんとしようとしていることも分かっていた。気づかないふりをしているのは単純に、あたふたしているこいつを見ているのが楽しいからだ。
「不動、明日休みだよな」
「ん。夕方からバイトあるけど」
「そう、だったな。俺も部活は午後からで……」
「さっき聞いた」
確かにさっきも言ったな……と思案気に額に手を当てているので思わず吹き出しそうになる。別に初めてでもあるまいし、普通に言えばいいだろうに。今日はぜひヤりたいと。
「ちょっとはえーけど、もう寝るか?」
急かす意味も込めていじわるをしてみると、源田はハッとした表情になり、腕組みをしてしばし目を伏せた(面白いからそのまま見てた)。
そしておもむろに両眼を開いたかと思うと、俺の両肩を正面からつかんだ。どう考えてもセックスに誘いたいときの行動じゃない。
「……不動!」
「あ?」
「好……きだ……!」
「ブッハァ」
今度はさすがに耐えられなかった。盛大に吹き出すとのけぞって、「……どうして笑う」と拗ねて顔を拭いている。いや、笑うだろ。どっからやり直してんだよと。
「そこから始めてたら夜が明けるだろうが」
「……。ムードが必要かと思ったんだが」
「バカ、男同士でいらねえだろ、そんなの」
「お前が男だろうが女だろうが、大事にしたっていいだろう」
「……………」
俺が黙ったのを何か勘違いしたのか、「今日は失敗したから、今度もっとうまくやる」と鍛錬バカらしく自己完結して、寝室に向かおうとする。それで済むわけがないだろう。アホすぎる源田をつかまえて、さっさとソファに押し倒した。
おしまい