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    morp_apl

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    MAIKING
    いとしのいとこ「おい」
    「今おいってった?」
    凛の鋭い呼びかけに、女は作業の手を止め、ぐるりと振り向いて即座に問いかける。凛のすっと伸びた背筋がより一層ピンとして、らしくもなく顎を引いて口ごもった。「…………はろちゃん……」ばつの悪そうな凛の表情と柔らかく言い直された呼びかけに首を傾げて、「なあに?」柔らかい声で嘉会かあい玻璐はろは返事をした。それでいい、と言いたげに。
    「麦茶出なくなった」
    「なくなったのかな、追加するねー」
    「ん……」
    弱々しい凛の様子に向けられた視線は二分化される。信じられないものを見たという視線と、哀れむような視線。前者は、普段「チッ」「ぬりぃ」「うぜぇ」時々「タコ」しか言わないような凛がしょんもりとした背中をしていることに対する、えッぐいホラーを見てしまったな……という視線だ。後者は、監獄の外にいる家族の中に、という生き物が含まれている男たちからの、同情の視線である。彼らは姉から「ねえ」と呼びかけられただけで即座に「すみません」と返す生態をしている。覚えがなくても先手を打って謝ることで、のちに訪れる悲劇を矮小化させるためだ。たとえ呼びかけの内容が昼食のメニューの相談だったとしても、先手は欠かせない。
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