本編続き一閃、空を薙ぐ。
いつも持っている長物とは違い、長く鋭い刃が空気を裂く。持ち手に白い布を巻いただけの無骨な黒い刃には無数の傷が付き、これまで吸ってきた血の量を物語るように、じっとりと濡れた光沢を纏っている。
手入れを欠かさず常に持ち歩いているものの、少年を伴っている時は終ぞ抜かぬ武器だった。
数度振って感触を確かめると、男はそれを鞘に納めてセクレトに託す。
ごう、と勢いを増してうねる吹雪に空気が揺れる。雪と灰色の空の輪郭がぼんやりと溶けて、そこから吹き付ける雪は白い簾となって視界を遮っていた。
屋根と壁と言えるものがある簡易キャンプの側にいても、吹き込んだ雪が宙を舞う。
男は静かなこの場所が好きだった。止むことのない雪が音を吸収して、冷えて澄み切った空気が、彼に自身と環境との境界線を意識させる。
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