🦜夢もどき「あぁ、もう無理だ!どぉせ俺なんて、売れない俳優だよう」
店のカウンターで、ホセ・キャリオカはそう愚痴を漏らした。どうやら飲みすぎたのか悪い方向に出来上がっているらしい、人目もはばからずテーブルに突っ伏し、紅潮した頬でグラスを煽り、
「マスター、もう一杯!」
とオーダーする彼だが、その中身が水なことに彼はいつ気がつくだろうか。
「ミスター、そのくらいにしておいた方が良いですよ。明日もお仕事、あるんでしょう?」
見習いだろう、小さな少年がカウンター越しにホセに問う。
「そう、劇場の「スタッフ」としてね」
未練がましく言うホセに、少年はため息をついた。
「それも立派なお仕事です。せっかく南米の方からやってきたっていうのに、こんなことで燻ってる暇無いですよ」
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