転換点 かわいい。
パッと頭に思い浮かんだ感想はそれ。
冴え渡る冬空の下。いつもの公園にいつも通りお父さんと来た。握られた手は手袋越しでも温かい。ホゥと口から出る息が生まれる度に白くなり曇天に消えていくのが面白くて、鼻が赤いのも気にせず、ボクは息を吐く。「吸うのも忘れるんじゃないよ」とお父さんは嗜めるが、幼いボクは「うん!」と形だけの返事をした。そんな父でもボクの好奇心を止められなかったのに、まさか名前も知らない初めて出会った子がじゃじゃ馬を宥めるなんて思いもしないだろう?
何度目かも分からない白い空気が晴れたその先に、お人形さんがいた。柔らかな金髪、小さな顔にちょこんとおわしますは小さな口と形のよい鼻と、それから…「未来」を見つめる二つの赤い瞳。ボクと同じ赤い瞳。
かわいい。
脳内に瞬時に浮かんだ言葉はそれ以外になかった。
「はじめまして。ボクはフィアフィールド。きみは?いっしょにあそぼうよ」
何も考えずに声をかけた。社会のしがらみとか子供には関係ない。だって、まだよく分からないんだもん。
でもその子は答えなかった。答える雰囲気もなかったし、再び声をかける前に品の良い女性が彼女を連れて行った。ポカンと去りゆく小さな背中を見つめるボクにお父さんは「フラれたなあ」となんてことない声音でつぶやいて、ボクの頭を撫でた。