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    274(になし)

    274(になし)。原神の魈×蠱毒(オリキャラ)を載せます。空受け。他のカプも描くので地雷は自衛して下さい。えちちは気が向いたら量産されます。pixiv⇒https://www.pixiv.net/users/117406886

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    274(になし)

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    pixivのショ×蠱毒小説2話くらいのやつ。
    原作知らなくても読めると思う。

    ※魈は原神キャラ。蠱毒はオリキャラ。
    2次創作大好きな人が書いてます。

    #gnsn夢
    #魈
    #オリキャラ注意
    orientedCharacterAttention

    夜叉と仙獣1:いちばんぼし
    ───────────────

    「蠱毒!」
    「おうよ!」

    くるりと身を捻って妖魔から距離を取ると、蠱毒の鉄扇が炎の元素を纏いながら風の音と共に唸る。
    蠱毒の戦闘スタイルは独特であった。走り込んでギリギリまで敵に近づくと、鋭利な刃物で出来た鉄扇を広げる。そのまま時計方向に回転しながら下から上に的を切り刻みながら駆け抜けるのだ。
    扇は風の影響を受けやすい武器ではあるが、筋力がずばぬけて強く、力技での戦いを好む蠱毒ならではの戦い方である。

    その横を魈が風を纏って走り、槍を振り下ろすと荒ぶっていた妖魔達が力なくバラバラと黒い炭となって崩れ落ちた。

    魈が辺りを見渡す。今宵は街へと近づく妖魔達は殆ど狩り尽くしたようだったが、念には念をおいておきたい。
    もう少し。そう思ったとき、魈は蠱毒の目が自分を見ていることに気が付いた。

    「なんだ?」
    「街に近づく妖魔もいねぇ、今日はここらで様子をみねぇか?」

    蠱毒は服に付いた土埃をポンポン払い落としながら、魈へと身体をむけ歩み寄る。

    「否。この地に妖魔が居る限り我は休むことは出来ぬ」

    顔をそむけ提案を拒否するが、蠱毒は気にする事もなく魈の隣まで歩いてくる。
    すると、くるりと身体の方向を変えて魈の横にならぶ。

    「故に、帝君から魈の安否を任されている俺は、友人を休ませるために実力行使を使うのでした~!」
    「な?!」

    魈は、帝君の名前を出されて驚く。
    そんな魈の肩に手を回して、ワハハ!と笑う蠱毒の顔は、大切な友を心配する仲間そのものだった。





    2:雨降ってそのまま
    ───────────

    その日は朝日の登る前から大雨が降り出した。傾斜のきつい山の土は雨で土砂崩れを起こすほどだ。

    魈と蠱毒は、それぞれが別行動で人間たちの集落の安否を確かめに行っていた。元が仙獣の彼等にとって、悪天候などは気にはならないが、力の弱い人間となるとそうはいかない。岩王帝君は自ら出向くこともあれば、稀に知恵のある者達を人里に遣わして、水害や火災などの厄災から人間達を救うことがあった。

    滝のような雨が降りしきるなか、仙人や仙獣達が人間達の避難を手伝う。自分の役目を終えた魈も、その場に途中から合流し、手を貸していた。
    安全だと思われる土地へ人間達を避難させ終わったあと、蠱毒が川で溺れかけている子供に気がついた。倒れた木々を仙力を纏わせた鉄扇で細切れに刻みながら、その場へ駆けつける。

    「⋯いま引き上げてやる!」

    濁流が流れる川の中腹で倒れた木に必死にしがみつき、子供は泣きながら助けを求めていた。その泣き顔に、蠱毒は手を差し伸べ抱き寄せた。
    その時、山の上から大きな音を立てて、勢いよく倒れた木々をなぎ倒しながら土砂が流れてきたのが分かった。

    「こいつは、やべぇな。おい、がきんちょ、ちぃっと怖いかもしれねーが命は助かるから我慢してくれや!」

    ──これは良くない。

    そう思った蠱毒は、近くに魈が居ることを目視すると、腕に抱く子供に語りかける。
    次いで、勢いよく魈に向かって子供を放り投げた。
    それとほぼ同時に、流れてきた土砂に巻き込まれながら蠱毒が流されていく。魈はその光景を信じられない面持ちで見た。


    ───俺は大丈夫だから、人の子を頼む───

    その瞬間に蠱毒の口が紡いだ言葉を聞き取り、魈は苦虫を噛み潰したような顔をした。

    「あの、バカ者が⋯」

    ぽつり。呟かれた魈の独り言は、誰にも聞こえず風に消える。放り出された子供を丁寧に抱きとめると、後方から駆け付けてきた数人の仙人達にきょとんとする、子供をあずけた。
    流れる濁流に餐まれる瞬間をみた誰もが蠱毒の安否を心配する。

    「魈仙人、蠱毒仙人を助けてあげてください!!」

    「この子供なら、我らが親元へ送り届けましょう!」

    「ああ。お前達に頼む。我は、あのバ⋯。ごほん、蠱毒と、他の人間が巻き込まれていないか下流を見にいく」

    言葉を残して、翡翠色の風と共に魈は姿を消した。
    ─────いま、蠱毒仙人の事を馬鹿って呼ぼうとしたんだな。とはその場の誰も言えなかった。


    山から璃月湾に繋がる河口付近に辿り着くと辺りは無惨な光景となっていた。様々な岩と木々が土砂にながされ折り重なる。
    周辺を仙力で探ってみるが、人間の気配は感じられなかったため、魈はいちど安堵のため息をついた。

    「後は蠱毒だが。⋯自分が丈夫だからと何故いつも己をおざなりにするのか」

    辺りを見渡し、倒れかけた大木の中でいちばん高い枝を見つけると魈はその場所から視線を巡らせる。
    河口から海へ繋がる汽水域辺りに、蠱毒の仙力の名残を見つけた。その場所へ急ぐが、いくら見渡せど姿が見えない。

    「しかし、確かに蠱毒の仙力はここからなのだが⋯」

    そこまで言葉にしてから、魈はある事を思い出す。蠱毒は右手と両足が義手と義足であるが故に、短い距離を泳ぐことは出来ても、長時間自力で水に浮かぶことも泳ぐ事も出来ない。
    濁流に餐まれた衝撃で義手か義足がなくなっていたなら、幾ら丈夫な蠱毒といえど泳げはしないだろう。

    ──まさか、
    蠱毒の仙力が一番強く感じられる汽水域の水域を視線で探る。海に一番近い深い位置に小さな泡が浮かんで来ているのが見て取れた。

    魈の顔に初めて焦りが浮かぶ。
    いくら丈夫な種族だとしても生きている以上、息をしなければどんな形であっても生存することは出来ない。

    「我も馬鹿者だな⋯」

    周辺の安全を確かめ、魈は迷うことなく汽水域に飛び込んだ。瓦礫だらけの水の底から小さな泡がチラチラと浮かんでくる。その数も少なく、もしかしたら手遅れなのかも知れない。過去、幾度となく同じような形で夜叉の仲間を看取ることもあれば人間な事もあった。

    嫌な考えが魈の脳裏に浮かぶ。
    ──もし、蠱毒がこの様な些末な結果で息を引き取るというならば。我はあの時、どうしたらよかったのか?

    流れが早く視野が悪いなかで蠱毒の仙力を頼りに気配を探る。己も生きているが故に、そう長くは水の中で動けるわけではない焦りがつのってくる。
    瓦礫が重なった底に、蠱毒がいつも腰紐に下げて持ち歩いている酒が入った瓢箪ひょうたんがみえた。
    瓢箪を止める濃いすみれ色の長い帯が、木の板に絡まって水になびいている。その下に、白い髪の毛が毛先にかけてグレーに染まる色が見えた。
    いつも白い顔は今は青白く生気はない。

    水中に沈む、木の板に絡まった蠱毒の腰帯を槍で引き千切る。長い帯が濁流に流される木々に絡まり、何度か水を飲み込んでそのまま気を失ってしまったのだろう。
    予想通りに義手と片足の義足がなくなっている。これでは泳ぎたくとも泳げないし瓦礫を壊して自力で脱出する事も難しかっただろう。
    魈は瓦礫から器用に蠱毒を引きずり出すと、そのまま水面へ向かった。





    しとしとと雨の音が聞こえて、重いまぶたを上げる。鈍い痛みのある身体を何とか起こし、蠱毒は眠たげな目をパチパチ瞬かせた。

    天井には板が張られて小洒落すぎない落ち着いた木目調の室内色が優しく出迎えてくれた。
    眩しすぎない蝋燭の明かりが灯り、枕元でゆらゆらと揺れて部屋の中を薄ぼんやりと照らしている。

    望舒旅館の一室だと気がつくと、蠱毒は安堵した。

    確か土砂に流されながら何度か木に頭をぶつけて水を飲んだはず。そんな疑問が頭に浮かんで、小首をかしげる。
    寝ていた布団から出ようと、もそもそ動くと聞き慣れた声が寝ていたベットの死角からピシャリと聞こえた。

    「まだ動くな」

    「あれ、魈じゃん?」

    「気が付いたなら寝ていろ」

    魈は蠱毒の肩を軽く抑えると、その身体を布団に戻した。丁寧に掛け布団を頭からかける。

    「お前が優しいとか、俺は極楽浄土にでもきちまった、のか??」

    蠱毒は掛ふとんから顔だけを出し、上目遣いに魈を見る。魈から優しくされた記憶がないもので、その目は本気で戸惑っているように見えた。

    「冗談は身体が回復してから聞いてやる。今は安静にせよと帝君からのご命令がでている」

    「そっか」

    「なぁ、人の子らはあの後どうなったんだ?」

    「どうともない。其々が新しい土地で健やかに生活をしている。お前が助けた人の子も無事だ」

    「そっか」

    よかった。そう続けた蠱毒の顔が柔らかく微笑む。
    その顔を見て、魈は思う。コイツは何故自分の事でもないのに嬉しそうに出来るのだろうか。

    凡人達の集落に時折遊びにいっては、楽しそうに過ごす蠱毒を昔から幾度となく見てきた。
    時に無理やり凡人の輪の中に連れて行かれ、難儀した事も多いが、蠱毒が常に隣で話してくていたので嫌ではなかった。

    真剣な顔で考え込む魈の顔を怒っていると読んだ蠱毒は、頭まですっぽり掛ふとんを被る。
    身体を丸めると、布団の中から気恥ずかしそうなポソポソとした小声で話し始めた。

    「魈。助けてくれたんだろ。ありがと」

    「否。礼はいらぬ」

    「俺が嬉しいから言ってんの」

    「そうか」




    静かな空気がその場を満たす。しん、と静まり返った部屋で今度は魈の声が淡々と話しはじめた。

    「お前が土砂に沈みゆく時、我に言っただろう。俺は大丈夫だから、と。その言葉を鵜呑みにした己に恥じている」

    布団を被ったままの蠱毒からは魈の顔は見えない。しかし、旧い友人はその顔が悲しみで染まり悲痛な表情なのだと察する。そっと布団から表情を覗き込もうとして顔を出す。

    「蠱毒。我には仲間と言える同胞はいない。故にただ一人朽ちていくものだと心に決めている。故に、心許せる友など必要ない、そう、⋯思っている」

    その呟きを黙って聞きながら蠱毒は思う。
    もっと素直だった時の魈も、気持ちを言葉にするのが苦手で困り果てた顔をしていた事を。
    他者を傷つけない為に言葉や態度で突き放しては、己が傷ついている事すら気付けず、言葉に迷っていたことを。

    それを知っている応達や伐難が、魈を気にかけてやっていたことも、きっと魈はこの先も気づかないまま過ごすのだろう。

    「だからこれ以上、……我を、信用するな。迷惑だ」

    なんて悲しそうな顔をするんだろうか。ぼんやりとした思考で魈を見る。
    蠱毒は人間ではないが人と関わるうちにそれなりの感情は把握する事が出来ると思っている。無論自分の感情にもそれは当てはめられるのだが、この目の前の仙人様は、自分の気持にすら気付かないように心に分厚い蓋をしてしまっているようだ。

    「わあったよ」

    「そうか」

    蠱毒の控えめな声に魈は目を伏せる。
    言葉を理解してくれたなら、それでいい。己には不釣り合いな「友がいる」という張り紙のような言葉も、今日限りなのだ。そんな表情だった。

    「だが、一つだけ言いてぇ」

    「ああ、なんだ?」

    「俺は自分の意思でお前の横に居っけど、帝君との契約もあっから直ぐに離れられねぇの!思い上がんなよ、クソ鳥!」

    上体だけ起こした蠱毒が魈の首飾りを引っ張って顔を引きよせる。お互いの息がかかる位置で睨み合う。
    蠱毒に巻かれた包帯も、丁寧な傷の手当も、すべて魈が施したものだ。

    目の前の翡翠色の仙人は、友人だと思わない者に丁寧に傷の手当などしないし、友人である事をやめてくれ、なんてコトも嘘でも言うわけがない。
    だからすでに、魈の中では蠱毒は旧友であり、掛け替えのない親しい友人なのだとすべての行動が証明していた。

    蠱毒の言葉に魈の瞳孔が大きくなる。ややあって目線だけずらすと魈の表情が穏やかなものになった。

    「そう言えば、そうであったな。
    我とお前は帝君の契約で繋がっている。この契約が切れるまで、我はお前とは腐れ縁という事か。そうだろ、クソ蛇」

    そう言って二人して睨み合い、お互い にやりと意地悪く笑った。


    しとしとと降る雨の音はいつの間にか止み、紺色の夜空に月が浮かび光が璃月を照らしていた。



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