ハプニング目を覚ますと見慣れない部屋に居た。
「んー?」
さらに聞き慣れない声がボク自身から聞こえ違和感が頭を埋め尽くす。
ここは確か拓海クンの部屋だったはずだ。
なのになんでボクが拓海クンの部屋に居るのか?
最後の記憶を探る。
確か、海の合宿に行った道具の片付けをしていたら拓海クンが来て手伝ってくれたのだ。ただ、筋肉痛が残っていたのか拓海クンが荷物を持った時ふらついて、その下で片付けてたボクの頭と拓海クンの頭がぶつかってしまって…。
そこからの記憶がなかった。
違和感だらけの中でとりあえずベッドから起き上がる。
「あれ?」
拓海クンの部屋で何故か拓海クンの服を着ている。そして、聞き慣れない声。
何だかとても嫌な予感がして、そのまま鏡に向かう。
そこには拓海クンが映っていた。
いや、よく誰かが入れ替わる小説はあるけどさ。まさか、これがそうなのだろうか?
というより。拓海クンてこんな姿だったんだ。赤い髪に紫のメッシュが入っている髪を撫でる。よく面影クンが拓実クンの事をカワイイって言ってるけど、確かにボクより小柄で線が細い拓海クンは可愛いのかも知れない。
初めて見るボク以外の人間の姿に思わず見入ってしまう。
そこまで考えて肝心の拓海クンがどうしてるのか、やっと思いたった。
そうだ、もし本当に拓海クンが入れ替わってしまったとしたらボクが洗脳にかかっておらず、しかも認識障害が治ってないのもバレてしまう。
ボクは急いで部屋を出て、ボクの部屋に向かう。
その途中で川奈さんと霧藤さんが話合って居た。
「あ、澄野君。目を覚ましたんだね。良かった」
急いで素通りしたかったが話かけられてしまった。
「あ、えっと。今、目を覚ましたんだ」
「びっくりしたんだよ。二人ともガレージで倒れてるんだもん。運ぶの大変だったんだから」
「二人が運んでくれたの?」
「いや、運んだのは男子なんだけどね」
そこまで話てから川奈さんがジーッとボクを見てるのに気がついた。
「澄野は普通なんだね」
嫌な胸騒ぎがする。
「何かあったのかな?」
「いや、蒼月君の様子がおかしいみたいなの」
「目が覚めていきなり悲鳴上げて部屋に引き篭っちゃったの」
「それは、気になるね。様子見て来るね」
それだけ言って急いで、ボクの部屋に行く。
チャイムを連打しながら言う。
「拓海クン。ボクだよ。開けて」
しばらくして恐る恐るという感じでドアがゆっくり開いた。
怖がらせないように拓海クンがドアを離れたのを確認して部屋に入る。
部屋にはボクが居た。
「認識障害、治ってなかったんだな」
ボクが正確には拓海クンが睨んで言った。
「はぁ。バレちゃったね」
「お前はどうして…」
部屋に重い空気が漂っていた。
「それで、これからどうしようか。まずはこの入れ替わりを治さないとね。それからボクの処分を考えばいい。また監禁生活に戻ってもいいし、また洗脳してもいいんじゃないかな」
どうせ効かないだろうけど。
あえて明るい声話かける。
「…ない」
「え?」
拓海クンが何か言ったのが聞き取れなくて聞き返した。
「戻らないよ」
「どういうこと?」
今度は意思の強い目で見つめ返してくる。
「お前はこの認識障害のせいで人類を滅ぼしたいんだろ?だったらオレがこの認識障害を引き受ける。オレはもう誰も死んで欲しないんだ。だから、蒼月。オレ達の仲間になってくれ。オレはお前も殺したくない」
ボクは初めて美しい意思を心を見た。