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    shushoku_10moru

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    どうかその手に(🌇風邪ネタ)前編

    どうかその手に(前編)早朝、空が明るくなってくる頃に目覚めた。
    ─────朝ご飯の用意をしなきゃ。
    そう思って起きあがろうと思った時、言い得ぬ違和感を覚えた。
    体が、重い。
    昨日の夜まではそんなことはなかった。
    原因を頭の中で探るが、それらしいものは出てこない。
    ────そういえば昨日の夜あたりから少し倦怠感があったかもしれない。
    そんなことを考えながら身を起こしつつ、ベッド横の引き出しに腕を伸ばして、個包装のマスクと体温計を手に取る。
    体温計を起動した後、マスクの包装を破る音で隣の彼は目を覚ましてしまったらしい。
    すこし微睡んだ目でこちらを見たと思うと、急に目をぱっちりとさせ、
    「え、あ、大丈夫ですか?!」
    と聞いてきた。
    「大丈夫。ちょっとだるいかもなぁと思って一応熱測ってるだけだから。」
    そう答えた後、体温計の音が鳴ったので取り出した。
    ────思ったよりも高い数値だったため少々驚いた。
    「まぁ、そのほかの症状が何かあるわけではないしな……」
    一応会社に行く準備だけは整えておくかと体温計の電源を切ろうとしたら、コウスケが手元から体温計をひったくってきて、数値を見られてしまった。
    「38度超えてるじゃないですか…何体起こしてるんで……まさか仕事に行く気ですか?!」
    「まぁまぁ、落ち着いて。何はともあれ朝ご飯用意しなきゃでしょ」
    「いや、いやいやいや何言ってるんですか?その熱で動き回ったら倒れますよ本当に!!」
    「大丈夫だって。昨日の残り物だから調理しないし」
    慌てるコウスケを宥めながら朝ご飯の用意へ移った。
    「……会社に連絡しないんですか」
    ダイニングの椅子に座ったコウスケがこちらに尋ねてくる。
    「……ご飯食べたらね」
    「嘘だ。絶対しないやつですよねそれ」
    と、呆れたようにため息をついた。
    「知ってます。どうせ後で連絡するとか言ってなぁなぁにして誤魔化すつもりでしょう?さっさと連絡してくださいよ死にますよ」
    テーブルに料理を並べ、席についた。
    「死にますよ、本当に」
    「分かったって…………今日は休むよ…」
    「やっぱ行く気だったんですか、バカ!!」
    「ごめんごめん、今日は大人しく寝ておくよ」
    「そうしてください、ほんとにもー…」
    食器を流しに持って行き、片付けを始めようとするとコウスケに制止された。
    「いいですから!会社に電話してください、片付けはやっときますっ!」
    何をそんなに怒っているのかは分からないけど、とにかく言われた通り会社に連絡をいれることにした。
    「すみません、───部のシノノメです。────の方に繋いで頂けますか」



    『もしもし、──────のササダです』
    「ササダ部長、おはようございます、シノノメです」
    『おう、シノノメか。どうした?なんか声のトーンが低いな』
    「申し訳無いのですが、今朝から発熱があり…」
    『休め。』
    「…はい、休ませて頂きたく連絡させて頂いた次第です」
    『おう………了解した。珍しいな、自分から欠勤の連絡とは…。「会社に来ようと仕事はさせないからな」という気満々だったんだがな』
    「申し訳ないです」
    『何故謝る?成長したなお前も。_____或いは恋人から何か言われたか?』
    「……叱られました、死ぬぞと」
    『ハハハ‼︎…当たり前だろ、心配かけてやるな、あんまり』
    「はい、…それでは失礼します」
    『お大事に』
    「ありがとうございます…」
    受話器を置いて、寝室に向かう前に流しに寄って、一声かけた。
    「連絡した。今日は一日大人しくしておくよ。」
    「そうしてくれると嬉しいです。僕も今日は家にいます」
    「え?!ま、待って、そこまでしなくても大丈夫だって…!」
    「そりゃ家事もそんなに上手くできませんけど。見張ってないとあなたどうせ家事やりだすでしょ、だから見張りです」
    やはり怒ったような───どこか誇らしそうな───表情で言った。
    「俺、そこまで信用がないの?落ち込むな、少し」
    「言い方がキツかったことに関してはごめんなさい。これを機にちゃんと改めてください。
    僕のことはいいから寝室戻っててください」
    寝室に戻って布団に潜ると、流しからガチャンと音がした。
    「大丈夫です!!割れてないですから!!!」
    とこちらに謎に宣言してくる。
    …………………心配。



    洗い物を終えたらしいコウスケが、こちらに駆け寄ってきて、ベッドの縁に腰掛けながら聞いた。
    「何か欲しいものとかありますか?」
    「ないかな」
    「して欲しいことは?」
    「いや…何も。大丈夫だよありがとう。」
    「そうですか…なんかあったら声かけてくださいね」
    と得意気に言い、何やら小説を取り出して読み始めた。
    読み始めたはいいが、ずっとソワソワしている。世話を焼きたいらしい。
    ………ちらちら視線を感じる。
    「そんなに世話を焼くこともないよ」と言おうと、彼の方を見たらなんとも不安そうな顔をしていたので、言葉を引っ込めた。
    「……そんなに不安そうな顔しないでよ」
    「ヨシノさん、体調崩しても普通を装うじゃないですかいつも…ほんとは見かけよりずっと辛いんじゃないかと思って…」
    「大丈夫だって、動ける時は動くってだけだから」
    「さっきだって、普通に家事しようとしてたじゃないですか!!…ほんとに放っといたらすぐ無理する……!」
    「ごめんって……ふふ」
    「何笑ってるんですか」
    「いやちょっと………可愛いなって」
    「もー!!!!分かってますか?!僕怒ってるんですからね?!」
    そう言った後はっとした顔をして、
    「ごめんなさい…体調を崩してる人にムキになって言い返しちゃって…でも本当のことですからね」
    「分かったよ、ごめん」
    ふう、と息をついて天井を見た。
    少し視界が歪んでる気がするのと、少々寒気がしてきた。
    あまり目に見えて調子が悪そうにしていると彼により心配をかけてしまうので、あまりこれ以上悪化されても困るんだよな……
    そう思いながらもう一度体温計を手に取った。
    ____________39.2。………上がってる…
    参ったなと思いつつもう一度横になる。
    昔ならどんな時も、体調を崩していても動き回れていた。
    昔家族全員で熱を出してしまった時、家事をこなしていたせいで誰よりも治りが遅くなってしまった、なんてことがあったな。
    とにかく俺はじっとしているのが苦手なのだ。
    今も、こうしていると何かをやらなきゃいけない気がしてしまう。
    ふとコウスケが立ち上がって、冷蔵庫から氷枕を持ってきて、箪笥から取り出したタオルを巻いて持ってきてくれた。
    「……あ、ごめんなさい何も聞かずに持ってきてしまって…いりますか?」
    「ありがとう、使うよ」
    「顔真っ赤ですね…もしかして熱上がりました?」
    「39.2になってた」
    「ええ?!明日病院行ったほうがいいですよ、それ…今日はまだ発症したばかりだから見てもらうの難しいかもしれないけど……」
    「考えとく…とりあえず一日寝てみて、かな」
    と言うと、冷蔵庫から警告音が聞こえてきた。
    「あれ、ちゃんと閉まってなかったんだ」
    慌ててコウスケは音のする方へ走っていった。
    流石に普段より一層不器用とかいうレベルでは無いような気がするが…不安にさせてしまったかな、と申し訳ない気持ちになった。

    …さすがに少し辛くなってきた。急に弟が生まれる前のことを思い出した。40度の熱を出して、わけもわからずただ辛くて、泣いていた俺にお袋がリンゴを剥いて食べさせてくれた記憶。
    熱のせいでリンゴの味はほとんど分からなかったが、一人で病気と戦っているのでは無いという安心感が本当に心強かったのを覚えてる。
    コウスケがため息をつきながら再び隣に戻ってきた。
    「……たまたまです。今日は。普段こんなことやらかしません」
    「……ふふっ、何に対しての言い訳なの、それは。別になにも言ってないよ」
    そう言った後、ふと買い出しに行っていないので昼ご飯を作ることができないことを思い出した。
    「そうだ、……ごめんコウスケ、今日の昼飯、材料買えてないから作れないんだった」
    「僕は大丈夫です。ヨシノさん、何なら食べれそうですか」
    「俺…?うーん、あんまり食欲ないから昼はいいかな…」
    「料理、凝ったことはできないですけど多分おかゆくらいなら作れますよ、多分」
    「2回保険入ったね」
    「いやいや、作れますよ!大丈夫ですから!」
    「普通にコンビニのやつ買ってくるのとかでいいよ…というか昼は本当に大丈夫」
    「そうですか…?まぁそう言うことだったら、今ちょっと買い出し行ってきますけど……
    他にいるものはないですか?」
    「ないよ、大丈夫」
    「わかりました。いろいろいるものあると思うのでスーパー行ってきます。お金は立て替えておきますね」
    そう言って、彼は外へ出ていった。
    外の通路から聞こえる小さくなっていく足音を聞いて、ベッドから身を起こした。
    ……洗濯物だけでも片付けておかないとと思ったからだった。
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