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    shushoku_10moru

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    shushoku_10moru

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    どうかその手に(後編)とりあえず洗濯機を回すだけ回して、干すのだけ彼にやってもらえばいい、あまり働くと怒られてしまいそうだし…
    そう思っていたのだが、普段からの悪癖というかなんというか……
    やらなくてはいけないことを次々思い出して、それを一つ一つ片付けてしまう。
    2回目に分けた分の洗濯物を入れて、洗濯機を回しながらそれを干し、干していたものを畳んでクローゼットに入れて…それから………


    結局いつも通り家事をしてしまっていた。
    熱のせいで手際が悪い分、普段より遅いものの、結構家事も片付いてきてしまった。
    露骨すぎて彼が帰ってきた時大目玉を喰らうかもしれない。まぁ、自業自得か。
    まだ時間がありそうだし、掃除機もかけようかと洗濯機のところへ行く最中、立ちくらみがして思わずしゃがみ込んだ。
    視界が歪んでいく。
    何はともあれ今は一人暮らしでない以上、彼に心配をかけてしまうのでなんとしてもベッドには帰らなくてはならない。
    平衡感覚がすっかりなくなっていたため、立ちあがろうにも立ち上がれない。
    頭痛とめまいもする気がする。
    しっかりしなければ、昔は出来ていたのに。
    昔はどれだけ体に鞭打っても悲鳴をあげすらしなかったじゃないか。
    これでは幻滅されてしまう_______。
    幻滅………あぁ、そうか。

    昔から俺は頼られる人物であろうとしていた。
    病気でも、あの人ならきっと大丈夫だろうと、周りに不要な心配をかけない人であろうとした。
    思えば、今まで実家や一人暮らしの時、普通に家事をしていたのは、こちらを気にする人がいなかっただけだったかもしれない。
    家事の最中、その場に倒れて眠り込んでしまうなんてこともザラだったし、それを叱る人がいなかっただけで、他人がいたら止められていたのだろうか。
    会社で一度動けないくらいに体調を崩して以来、カガミとササダ部長にもきつく叱られている。
    コウスケの様子を見て、家事をやらせるわけにもいかないと思ったにしても……
    今回は………彼に事前に止められていたにも関わらず……そりゃあ信用を失っても仕方ないだろうな。
    …………体調が悪くなると、過去のことやらいろいろ思い出して、思考も後ろ向きになってしまうから良くない。
    とにかく彼が帰ってくるまでに……と焦るが体がついてこない。自分で自分のことがどうにもならないと、こんなにも不安な気持ちになるのか。気がつくと彼がくる前にどうにかしなくてはと言う気持ちより、彼が早く帰ってくることを望んでいた。
    そう思っているうちに、ガチャリと部屋の鍵が開く音がした。
    小走りで帰ってきたらしく、少し息の上がった彼が、こちらの姿を見つけた途端に持っていた荷物を放り出して駆け寄ってきた。
    「時間がかかってしまいごめんなさい。予想が外れていて欲しかったけど……こんな気はしていました」
    「…ごめん」
    「言いたいことはありますが後でいいです。……立てませんか?」
    「厳しい」
    「肩を貸すくらいしかできないけど…助けがあったら立てますか?」
    「…多分」
    「それなら僕の肩に手回してください、支えますから」
    彼の華奢な体に自分の体重をかけるのは申し訳なかったが、それしか対処しようがないので、彼の言うことに従った。
    なんとかベッドにたどり着くことが出来、横になった時には全身に力が入らないくらいになっていた。


    冷蔵庫に買ってきた物を詰め込んで、彼は俺のところに来た。
    「…意識ありますか?」
    「あるよ」
    「よかった…ちょっとした風邪でも場合によっては危ないんですよ、分かります?これに懲りたら2度とこんなことしないで下さい」
    「ごめん」
    「ちょっと、そんな顔しないでくださいよ。
    僕が悪いみたいじゃないですか」
    「いや……」
    「いや、ってなんですか」
    「…分かってるよ、自分が悪いのは。後悔してる、もうしない」
    「でも貴方そう言って____」
    「不安だった」
    「!」
    コウスケは不意を突かれたような顔になってこちらを見た。
    「今なんて……」
    「いや…………自分でどうにも出来ない状況が
    、独りでいることが、こんなに不安になるとは思わなかった…………ごめんね」
    「いえ…ふふふ、まぁ、幸い何もなかったし……もう二度としないなら今回だけは見逃してあげます」
    彼はちょっとはにかんで言うのだった。
    「…怒ったり笑ったり忙しいね」
    「誰のせいだと思います?ほんとに……僕たしかにちょっと不器用ですけど…もう少し頼ってくださいよ……………それと」
    「?」
    彼はぎゅっとこちらの手を握ってきた。
    「います、ここに。」
    「…?」
    「さっき一人が不安だったって言ってたから」
    「あー…うん、……ありがとう」
    この日から、無理をしたところで手間をかけさせるだけだからやめておこうと思えるようになった。
    それに無駄に恥を晒してしまうし(彼は嬉しそうだが)、やはり無茶をすべきでないなとこの歳にして学ぶ羽目になった。



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