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    Lionsomps

    ラウヴァアアアアアアアン!
    14の二次小説とか>http://studiosxr.web.fc2.com/index.html
    おえかき練習中

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    Lionsomps

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    江のものたちうちの本丸設定

    青葉闇私は鍛刀の儀を終え足早に自室に向かって廊下を歩いていた。
    着込んだ儀式用の巫女装束をさっさと着替てしまいたかったのだ。
    その途中にあるこの本丸の玄関の前を通りかかる。

    土間は滑らかな黒い岩肌が微かに艶めいて輝くほどだ。
    正面玄関として常に綺麗に掃き清められていて、横にある下駄箱の上には歌仙が気分で季節の花や美術品を飾ったりしてくれている。それはこの本丸が立ち上がった初期の頃からの習慣になっていた。下駄箱は素人目にも高級そうな木材で作られていて結構な大きさがあるのだが、入っているのは私の私物と客用のスリッパ、偶に男子達が現代へ行く時用の時代に合わせた靴だったり。

    この本丸を与えられ、歌仙と初めてこの玄関の扉を開いた時の事を思い出す。建てられたばかりの家特有の木材と畳の匂いに心が弾んだ記憶。
    屋敷の作りは前もってどんな間取りにするか自分で決める事は出来たのだが、ここで暮らすという事に全く想像が湧かなかったので政府が用意したデフォルトの間取りになっている。
    この正面玄関も当初は任務で出かける時にも使ってはいたが、人数が増え戦いから戻ると時に泥まみれに血まみれになってしまう事も多々あり汚すと掃除する自分達が面倒だと思い至ったらしい。いつの間にか皆屋敷の横側にある大道具部屋から屋敷に上がるようになったのだ。
    なので使うのはほぼ私とたまに来る客人のみ。
    だから普段ならここに靴が置かれている事は無いのだ。
    けれど今見下ろす土間には靴が6足並んでいる。


    真ん中にあるのは豊前のライダーブーツ。
    慌てて脱いで上がって来たのかつま先がこちら向きで片方のブーツはちょっと横に倒れている。それを揃えてつま先を外に向ける。
    その隣には行儀よく揃えてつま先がちゃんと玄関に向いているローファー風の靴。
    これは籠手切君のだな。直す必要が無い
    反対側の隣には松井君のショートブーツがあった。
    中々のヒールの高さなのだが、よくこれで戦えるなあといつも思う。特に行儀悪くも無いのだが、これもつま先を外に向けて揃える。・・・かっこいいなあ私もこういうの履きたい。歩く自信はないが。
    その隣に雲君のローファーがきちんとやる気なく脱ぎ落されている。
    ピンクの差し色が可愛い。この靴底が犬の肉球柄なのを私は知っている。揃えてつまみ上げ、裏を見てうん。と肉球を確認し外に向けて置いた。
    一番左端にあるのは桑名君のスニーカー。
    大きい。まるで岩の様に大きい。ネズミや小鳥なら一家族が中で暮らせそうなほど大きい。なんだかメルヘンな気持ちになりながら靴の中を覗き込む。脱ぎ方は几帳面だから揃える必要は無い。ちょっと持ち上げてみたが思ったよりは軽い。
    このメンツならあと一人居るはずだが・・・と見回した。
    すると何故か、結構な広さの玄関の入り口近くに雨さんの靴がきっちり揃えて置かれている・・・飛んだのか。いやそれぐらい忍者だから飛べるだろう。
    だが揃えた状態でどうやって飛んだんだろう・・・

    しゃがみこんで皆の靴を眺めていると背後からドタドタと足音が迫って来た。


    「すまんすまん!まさかあそこにあったとは・・・そういや鶴さんの部屋の前通った時に話しかけられて部屋に上がっちまったんだよな!」
    「全く、集合前にどれだけの部屋に引っかかったんだい」
    「豊前は人気者だからねえ~」
    「仕方ないですねりいだあだから・・・と言いたいですが予定時刻より遅刻ですよ急ぎましょう!」


    江の6人に遠征任務を頼んだのだが出発前になにか忘れ物でもしたのだろう。
    勝手口から出発してそれに気が付き時間短縮の為にこの玄関から入って来たという所か。

    「あれ!主!なにしてんのー?」
    「おやお頭。その服は・・・」

    雨さんと雲さんが見つけた飼い主に駆け寄る犬の様に目ざとく私の巫女服姿に気が付いた

    「鍛刀の儀をしてたんだ。いつも終わったらすぐ着替えるから滅多に見ないよね」
    「はい。とてもお似合いです」

    ありがとう雨さん。犬のお手の様に反射的にほめてる感じがするけど。

    「うんうん似合ってる~」

    雨さんのついでみたいに言ってくれたけど、二人の時にでもちゃんと褒めてくれそうな普通さがきっとあるよね雲さんは。

    「・・・へへっ。似合ってんぜ」

    やめろ。そのちょっと照れた「へへっ」は。女を褒めるのが照れくさいだけなの解ってても君のその意味ありげな間は大変に心臓に悪いのだ豊前君。無意識にやってる分タチが悪い。
    隣で松井君が結構興味を持って私の頭から足元までをしげしげと見ている。
    興味持ってくれるだけで嬉しいよ主は。興味があるだけでも・・・。
    とはいえ、ややエキセントリックだけど常識に関してはそこまで変人でもないんだよな。

    「うんうんお仕事お疲れ様。いつもと違う服もいいよね」

    優しくて気が利くほめ方をありがとう桑名君。こないだ取れたキャベツをほめてた時の方がもっと熱こもってたとしても。

    「よく似合ってらっしゃいますよ!着付けも着こなしも美しくて素敵です!ご自分でなされたんですか?」

    服に関して篭手切君が絡むと緊張する・・・けど主のメンツをつぶす様な事をいう子じゃないか。

    「一応審神者の研修で習うんだけどね。最初の頃はうまく出来なくて歌仙ちゃんに見てもらったりもしたなあ」
    「ふふっ。歌仙がですか」

    ちょっと面白そうに篭手切君が笑う。
    想像通り、結構お小言貰いながら教えてもらってたよ。

    「で、忘れ物は見つかったの?」
    「はっ!そうです!申し訳ありません!りいだあが転移装置を何処かに置き忘れてしまって・・・すぐ戻るつもりでしたのでここから上がってしまいました・・・」
    「いいのよいいのよ。使っちゃいけないなんて決まりはないんだから。ただの勝手なローカルルールだから」
    「はいっ・・・ではすぐに出立いたしますので。では!」

    皆がせわしなく大きな体を横に並べて靴を履きだした。
    雨さんはいつの間にか、靴を履いている状態で扉前で待機している・・・。

    「うーん。じゃあ私転移ゲートまでお見送りに行っちゃおうかな?」
    「おっ?一緒に来るか?」
    「いっぱい褒めてもらっちゃったし、なんかもう少しこのまま着てたいなって。散歩ついでにでも!」

    ちやほやされて嬉しかったのは本当だけど、さっきまでの回想でここに来た当初の気持ちを思い出したのだ。神聖な衣装に袖を通す時、ピリリと気持ちが引き締まり、慣れぬ業務や毎日の執り行い一つ一つを必死に取り組んでいた頃を。
    もちろん今も真剣ではあるのだがあの頃みたいな新鮮さはない。こんなにも増えた男子たちとの日常の中であっという間に毎日が過ぎていく。

    「散歩ですか。是非参りましょう」

    散歩という言葉に速攻反応した雨さんがガラガラと下駄箱の戸を開けて私の和服用草履を出してくれた。
    そして私を中心に6人と屋敷の外にある転移ゲートまでの小さなパレードが出発した。


    正門から外に出ると政府管轄である「都市部」へと繋がるゲートまで直通の大きな道がある。現代的なコンクリートではなく優雅な石畳が敷き詰められていて、道を挟んで眼前には大きな畑が広がってる。
    これも当初はせいぜい田んぼ数枚分程度だったのだが桑名君の顕現後爆発的に面積を増やした。
    気が付けば特殊な植物の為の温室や果樹園までいつの間にか充実していた。

    「あれえ!主さんも出陣かい?」

    ぞろぞろと連なる私たちに向けて野菜畑の中ほどから大きな声が飛んできた。
    可愛らしい少女の様な外見の北谷菜切が籠を抱えて何かを収穫している様だった。

    「アハハ!まさかあ!転移ゲートの点検も兼ねて遠征のお見送りをね!」
    「そうかあ!桑名あ!なんかやっといて欲しい事はあるかあ?!」
    「ありがとうねえ!特にないかな!留守の間よろしくねえ!」
    「おうさあ!皆きいつけてなあ!」

    この面積なので二人当番制では当然回るはずもない。なので畑仕事が好きな男士達が適当に寄り合って面倒を見ているのだがそんな関係で仲良くなっていったのだろう。
    菜切も食に纏わりのある刀だし。
    遠くの方でこちらの姿を見つけた陸奥守や江雪さんや数人が手を振ってよこす。
    それに6人が大きく手を振り返しながらさらにパレードは進んでいった。


    畑区画を越えると石畳の道は鬱蒼とした雑木林に覆われる小高い丘の地帯へと繋がっている。その頂上には任務のための時間跳躍ゲートが設置されており、石造りの鳥居から木立の中へと延びる石の階段があった。
    そこをえっちらおっちら登り始めるとさすがに皆と歩調が合わなくなってしまった。
    スイスイと階段を登っていく豊前や松井君や桑名との距離の差が見る見ると出てしまう。
    焦って一生懸命追いつこうと階段を登る私の一段後ろを篭手切君が心配そうに付き添ってくれていた。私が心配というよりは多分袴が地面に擦れてしまわないかを見ている様だった。この巫女服を着て外に出るなんて無かったので汚す事などほぼなかったからなあ。

    「ごめんねーさすがに慣れない服じゃさっさと歩けないね」
    「いえ!お気になさらず。ゆっくり参りましょう」

    雑木林の木漏れ日が斜め後ろにいる少年の肩の上できらめく。
    小柄だけれども努力家で情熱的で江の中では一番男気があると私は感じている。ゆえにどこか自分を追い詰めてしまいかねない危うさも。

    「籠手切君。どう?レッスンは順調?」

    江の皆の非番が重なると庭の一角で音楽を流しレッスンしているのをよく見かけてた。
    練習とはいえ軽快な曲に見ごたえのある華やかなダンスに他の男士達も足を止めたりわざわざ見物に集まったりもしていた。もちろん私もそれに混じって。

    「えっ。はい。皆さんとても筋が良くて素晴らしいです!」
    「そっかあ、じゃあコンサートやっちゃう?大広間に高座作って舞台にしてさ」
    「えっ・・・?そんな!恐れ多いです…」
    「アハハ、いいじゃん!皆もすごく喜ぶと思うよ?」
    「そうでしょうか・・・?」

    多分こうした反応が返るんだろうと思っていた。
    気が強そうなのに妙に後ろ向きというか自信がなさげで、そこもまたアンバランスな危うさで。

    「もちろん!皆楽しい事大好きだからね。そうだ!観劇弁当も作ってさ。何種類か用意して選べるようにして。お酒も用意して。盛り上がるよお?!」
    「主ぃ。それコンサートが楽しみなの?お弁当が楽しみなの?」

    籠手切君のさらに後ろにおとなしく着いてきていた雲さんがあきれたようにそう突っ込んできた。雨さんはその隣で弟たちを見守るように優しく微笑んでいる。

    「いやいやいや。お祭りみたいなもんだからそこまで含めてがお楽しみなの!。幕の内とーおこわとー押し寿司も良いよね?日本酒もいいの用意して……」
    「主の食いしん坊ー」
    「おおーい。どうしたのぉ?」
    「楽しそうだな!でもおいてっちゃうぞ?」

    話を持ち出して一人俄然盛り上がって足を止めた私に、前を行く三人が振り向いてこちらを伺っている。

    「ごめーん!んじゃばびゅんと登ろっか!」

    ガバッと袴をたくしあげ、ぐわっと足を広げて階段を二段跨いで駆け上がる。

    「あ、主????」
    「いくよー!遅刻だー!」
    「主のお転婆ー」

    必死になりふり構わずやって来た私に3人は大笑いしている。

    だってこんな箱庭の中でひたすらに頑張ったって仕方ないじゃない。
    夢を語る彼の輝く瞳を見ていつもそう思っていた。
    小さなおもちゃ箱の中に閉じ込めてしまった罪悪感と共に。
    あんな素敵な光景、ちゃんとした舞台の上で輝かなきゃもったいないよ。



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