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    かいこう

    @kaikoh_h

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    かいこう

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    全部俺の/花流
    花流の日まで後19日~

    #花流
    flowerFlow

    全部俺の「おめーがそんなにトマトが好きだとは知らなかったぜ」
     朝食の目玉焼きにかける醤油を忘れたと、台所に立った間の出来事だった。戻ってきた桜木の前で、流川は片頬を膨らませている。桜木は呆れながら卓袱台の流川の向かいに腰を下ろした。
    「それとも俺には食わせたくねぇってか」
     よく家に泊まらせてもらっているからと、流川の母親が持たせてくれた食料品のひとつであるミニトマトは、ヘタを取って洗ってから、それぞれの皿に半分ずつ、桜木が分けて入れたのに、流川が全部、引き取ってしまっている。流川がごくんと口の中のミニトマトを呑み込んだ。残った十九個の、大きくて真っ赤に熟れたミニトマトが、桜木が作ってやった目玉焼きを皿の淵に沿うようにしてぐるりと取り囲んでいる。
    「何か俺様に文句でもあんのかよ」
     例えば昨日の夜が気に入らなかったとか…口を動かしながら桜木は慌ただしく昨夜のセックスを振り返っていた。特に流川が怒ったり素っ気なかったりした様子はなかったから、やらかしたわけではないはず…今朝起きた時もいつもと同じだったはず…目の前の顔つきからも怒りは感じられない。単なるちょっかいなのか、食い意地なのか、食べさせたくないにしても他の理由があるのか、純粋にトマトが好きなだけなのか、一体何なんだ、と目まぐるしく頭を働かせていたせいで気もそぞろになっていた桜木の手から、流川が醤油を抜き去った。
    「あっ」
     たらーと目玉焼きに醤油をかける。
    「貸してくれの一言ぐらいねぇのかよ」
    「のろのろしてんのが悪い」
    「つーか、いい加減、どういうことか言いがれっ」
     別にいいのだ。取りに戻った醤油を先に使われようが、美味しそうなミニトマトを全部奪われようが、本当のところは別にいい。悔しい気持ちが湧かないわけではないが、好きなようにしろよと言いたくなるぐらいには惚れていた。山王戦で負傷した背中の治療を終えて部活に復帰し、プレイを見ている内に気になって、好きになって、リングしか見ていないような目で自分を見ていてほしくて…気持ちを抑えきれずに告白して、てっきり振られると思っていたが、いいけど、と受け入れられてそろそろ二ヶ月。毎日、どうにでもしてくれ、と思っていた。それぐらい、好きでぐずぐずになっている。だから今の問題は、自分に対して何か含みがあるのでは、ということだった。流川がその唇を開くのをじっと見つめる。
    「別に、普通」
    「何が」
    「トマト、そこまで好きでもねー」
    「人の皿から取りたかっただけとか言うんじゃねぇだろうな」
    「でも赤いのがてめーに似てるから欲しくなって貰った」
    「あ、はーん?」
    「俺んとこにどあほうがいっぱい、ハーレム」
     そう言って満足そうに細められた目で真っ赤なミニトマトが丸く並んだ皿を見下ろした。杞憂は霧散し、顔がぐんぐんと赤くなっていく。全身が心臓になったかのように、ばくばくと速まる鼓動がうるさかった。好きな男にそんなことを言われて、桜木はどうすればいいのか分からない。ただ岩のごとく赤らんだからだを硬くしているしかなかった。軽く伏せられていた瞼が上がり、切れ長の目がこっちを見る。お前の唇こそ、赤くて艶々でおいしそうだと、今になって気づいた。欲しいものを自分の皿に並べて得意げな表情をするような年相応さとは相容れないようで、びったりと嵌っていて、心臓がキュンと疼く。それはまるで自分がミニトマトになって流川に丸ごと食べられたかのような感覚だった。
    「トマトより真っ赤」
    「ふぬぬ…誰のせいだと…」
    「俺以外のせいだったらぶっころす」
    「おめーってめちゃくちゃ俺のこと好きだよな」
    「好きじゃなかったら夜も朝もどあほうを食わねー」
    「うぐ」
     昨夜のセックスと朝食のトマトを並べられ、桜木はますます顔を熱くする。告白した時はそれまで憎たらしい態度を取ったり喧嘩ばかりしたりだったので、こんなにも好いてくれるようになるとは思っていなかった。嬉しくてじわ…と涙が滲む。ぐうう…と腹の虫が鳴った。流川はひとつも残さずトマトを食べている。
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    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
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    かいこう

    DONE最高のバレンタイン/花流
    14でバレンタインだなってなったけど、たくさんのチョコをもらうるかわに嫉妬を爆発させて暴れるはなみち、を回避しようとして中途半端
    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
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