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    かいこう

    @kaikoh_h

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    かいこう

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    ノックアウト/花流
    花流の日まで後15日~~

    #花流
    flowerFlow

    ノックアウト 屋上での眠りを妨げた上級生らしき男たち四人を退けたところで、背後の扉が開いた。振り返ると、赤いリーゼント頭を先頭に、五人組が立っている。自分と同じようながたいの派手な赤い頭の男と視線が絡んだ。
    「流川楓」
     リーゼント頭の後ろから誰だと聞かれたので、名前を教えてやる。赤いリーゼントの男が驚いた様子で繰り返してきた。落ち着きのない動物みたいなしぐさで人の周囲をうろつきながら、ジロジロと人の顔を眺めては、何故だか知らないが、自分とこっちの身長を手で比べたりし始める。取り敢えず屋上で伸びている奴らの仲間かと聞けばオレの名前を教えてやろうか、と喚き始めた。別にいいとあしらったのが気に喰わないのか、学ランの胸元をつかんでくる。
    「オレは一年の桜木花道だ!よーく覚えとけ!」
     大声が耳にうるさかった。流川は、はーとため息をつく。それから、何だその態度はと、腹を立てつつ、戸惑っている桜木の顔を片手でぐっとつかみ返した。
    「う、ぐ…っ」
    「知ってる。そっちこそよく覚えとけ。俺は流川楓。てめーの夫になる男だ」
     流川の言葉に桜木が目を瞠った後で顔をじんわりと赤らめる。最後に手に力を入れ直して顔の骨を軋ませてから、流川は桜木を解放した。ぎゃん、と犬みたいな声を上げた桜木がさっきとは違うぽーっと気の抜けた目でこっちを見ている。人の胸倉をつかんでいることを忘れているようだ。流川がその手首を握ればぴくっと手が震える。離そうとするのを許さなかった。桜木の足の間に流川は自身の靴を突っ込む。ひたいや鼻先が、今にも触れそうな距離で見つめ合った。桜木は赤面を濃くしながら緩く喘ぐ。流川が上唇を桜木のそれにすり寄せても、逃げずにじっとしていた。これから何をするか、分かっているなと問うつもりで、桜木の目を覗き込む。ごく、と桜木が唾を呑み込む音がよく聞こえた。至近距離で感じる体臭や瞬きの音、唾液のにおい…次の瞬間、流川は桜木に口づける。

    「…何だそりゃ」
    「てめーをノックアウトする方法」
    「おかしいだろ、いきなりそんなことしやがったらただの変な奴だ」
     げえ、と引いてみせる桜木を睨みつける流川の手には学生証があった。桜木のもので今年の春の入学式の翌日に撮った写真が貼られている。冬休みの最中、大掃除をしている桜木の部屋でどこからか出てきたのだった。今日は掃除すっから来んなよと言われていた流川は構わずアパートを訪れて、来たんなら手伝えと言ってきた桜木に濡れた雑巾を押しつけられている。学生証の桜木は今はしていないリーゼントで、窓を拭かされている時に制服から落ちたか鞄からこぼれたかあるいはまったく違うとこからなのか、とにかく気づいたら踏んでいたそれを、流川は拾い上げた。試合に負けたのは俺のせいだ、なんてど素人が坊主にしたから、リーゼント姿の桜木は懐かしい。写真を見ている内に当時が蘇り、そういや初めて会った時にいきなり殴りかかってきたなと思い出した。あの時は不覚を取った、と負けん気が顔を出して悔しくなる。今ならどう反撃するか、と考えた結果を、桜木は気に入らないようだ。
    「突然キスされたって嬉しかねぇ」
    「今朝は喜んでたくせに」
    「今はな、今は!」
    「今喜んでんならあん時俺がキスしてやりゃてめーは喜ぶはず」
    「そういう自信過剰つーか、傲慢つーか、どっから来んだろうな」
    「嬉しくねーんか」
     学生証を見て動かなくなった流川に気づいて台所から何してんだとやって来た桜木が、スポンジを片手に天井を見上げる。
    「…嬉しい、かも」
    「そら見ろ」
    「思えば最初からおめーに惹かれてたかも」
    「かもじゃねぇ、どあほうは最初から俺が好き、鈍くさくて気づかなかっただけ、どあほうだから」
    「ふぬ…いやおめーだってあの日にんなこと言えねぇっつーの、今があっから言えんだよ、今ってか、俺様が告白したからだな!」
     山王戦で負傷した背中の治療を終え、夏休みが明けてしばらくしてから部活に復帰してきた桜木に、秋の終わり頃、告白された。
    「俺はてめーが告白してくる前から好きだった、てめーがマネージャーってうるさかったから何も言わなかっただけ」
    「うるさいとは失礼なっ」
    「事実」
    「それはともかく、ルカワ君よ、あん時もおめーいわくうるさかったと思うがね、おめー、本気で言えんのか?」
     澄んだチョコレートみたいな色の目にじっと伺われる。桜木が言うように、今があってこその空想だった。桜木から告白されると知らなければ、放課後や休日にこんなふうに桜木のアパートを訪れて親密に過ごす仲になると知っていなければ、あの日の十五の自分は、初めて視線を交わした時に落ちていた恋を自覚するのは難しい。バスケ以外は得意じゃなかった。返事をしないのをどう思ったのか、桜木から、口にちゅ、とキスされる。
    「じゃあ、顎に一発」
    「そもそも何で俺様をノックアウトさせたいんだよっ」
    「やられっぱなしは性に合わねー」
    「おめーだって殴り返してきたじゃねぇか!」
    「先制点…」
    「バスケじゃねぇっつの」
    「リーゼント頭のてめーと一発…」
    「喧嘩なら散々してきただろうが」
    「セックスはしてねー」
    「うぐ…っ」
     過去には戻れないからあの日の桜木に先制パンチを喰らわすことはできないが、今、正面にいる彼には一発お見舞いしてやれたようだ。顔をかっと赤くして、鼻血を垂らしている。桜木の姿に、流川の中の勝ち気さや優越感が満たされた。本当は早く好きだと言いたかった、自分ではない人間に惚れている姿など見たくなかった…実のところの後悔の苦さは抱えたまま、流川はふん、と笑う。いつかこの苦さは昇華できるのだろうか…十五歳では目も眩むような、顔を顰めずにはいられないような、きつさだった。
    「はっ!つか、おおおお夫って何だ!」
    「もしかしてしねー気か、俺と結婚」
    「す、す、するに決まってんだろ、だからんなふうに睨むなっ」
     鼻血を手でこすって桜木が大声を出す。十五歳の初々しい反応が、甘い未来を口にした十五歳の心を柔く撫でた。硬い指の腹が触れている学生証の桜木の、こっちを見ているまだ何も知らない、知る可能性もない顔に、流川はもう一度目を落とす。
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    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
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    かいこう

    DONE最高のバレンタイン/花流
    14でバレンタインだなってなったけど、たくさんのチョコをもらうるかわに嫉妬を爆発させて暴れるはなみち、を回避しようとして中途半端
    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
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