Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    かいこう

    @kaikoh_h

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 292

    かいこう

    ☆quiet follow

    鼓動/花流
    花流の日まで後12日~

    #花流
    flowerFlow

    鼓動 居残りを終え、学校を出れば外はもう真っ暗だ。流川は自転車を押しながら、桜木とともに冬の夜の家路を辿る。桜木には、先月告白された。密かに好きになっていて、でも桜木はマネージャーが好きで、だから、バスケやってりゃ同じコートに立てるから、それでいいかと思っていたのに、思いがけない事態にびっくりして、てめーマネージャーはいいんか、と聞いてみたら、ハルコさんはそういうんじゃねぇんだよ…とはっきりしない返事を寄越されたが、そういうのじゃないなら、と流川は納得する。そう言えば告白されて頷くのは初めてだったので、いいけど、と、何となくすっとしない答えになってしまったが、流川が言った直後、緊張でこわばっていた桜木の顔がほわほわと綻んだので、こいつも納得できたらしーからこれでよし、と流川は満足した。つき合い始めて、登下校は一緒にしている。朝、お互いに何の用事もなければ待ち合わせしている場所で、帰りは別れた。今日も辿り着いてしまう。どちらともなく、足を止めた。
    「…じゃあな」
     十二時間もしない内にまた会えると分かっていても、外灯の下で何かをこらえるようにぐっと眉間に力を入れて、顔を赤くしている桜木と離れ難い。
    「ん」
     向かい合わせに立っている流川が頷けば、この三叉路で桜木は右、流川は左へとそれぞれ一歩踏み出すのだった。その前に、住宅街の壁が影を作っている通路から出る前に、二人は身を寄せ、ぎゅっと相手のからだに腕を回す。最初に恋人と手を繋いでみたい、と言ったのは桜木で、帰り道で繋いだ手を見ながら、もっとてめーとくっつきたいのにどうしたらいいか分からん、と流川が言えば、見える肌は全部赤くして、こういうのはどうだよ、と抱き締められた。くっついた肉体の感触や抱擁の強さ、包み込んでくる体温に、これはいいな、と流川も抱き返す。ぐいぐいと桜木に身を寄せると、衣類越しに、桜木の鼓動を感じた。これはいい、いいんだが、最近は早くない。流川は桜木へ全身を預けて目を閉じた。最初の頃は数えられないぐらい早かったのに、今は桜木の心音を計れた。とく、とく、とく…と十二回まで追いかけたところで、肩をつかまれ、ぐい、と距離を取られる。流川は桜木を見やった。
    「そろそろ帰るぞ、お、親御さんが心配するからな!」
     はー?流川としても桜木と仲よくやっていきたい所存はある。それと同時に、はー?とも思うのだった。はー?てめー余裕かましやがって、コンニャロウ、最初は手を繋ぐのもぎゅっとするのも、手のひらを汗だくにして、全身カイロか?ってぐらいほかほかに、でも触感は使い終わったそれぐらいガチガチで、心臓だってうるさかったのに、最近ではほとんど汗は掻いてないし、体温は高いがからだはそこまで硬くなくて、ドキドキもそんなにしてねー…何か、つまらん。流川は自分が好きで、緊張しまくりの桜木が見たかった。好きで好きでたまらないのがもっとよく分かるような。
    「…そんな顔するなよ、明日も学校あんだから、なっ?」
     うるせー、てめーはちっともそんな顔とやらをしやがらねぇで…自身の口元がへの字を描こうとするのに、流川は気づいた。
    「イヤダ」
    「何?」
    「帰りたくねー」
     桜木にため息をつかれる。
    「しょうがねぇな…後ちょっとだけだぞ」
    「三十分」
    「長いっつの」
    「じゃー、一時間?」
    「伸びてんじゃねぇか、五分だ、五分、あーまじ可愛いとこしかねぇ…俺は一体どうすれば…」
     ぶつぶつ言う桜木に抱き込まれた。短く区切れてむっとしたものの、少しして流川はにやっと笑う。桜木の鼓動が早くなっていたからだ。
    「メロメロになってれば?」
    「もうなりまくりだっつーの」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💗💞💞💞💞💗💘💖❤💗🌸💓🍁✨🐵💓🐱✨🎑☺💯👍💒☺👍👏❤😭💖😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    かいこう

    DONEタオル/花流
    花流の日まで後6日~
    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
    2612

    related works

    かいこう

    DONE最高のバレンタイン/花流
    14でバレンタインだなってなったけど、たくさんのチョコをもらうるかわに嫉妬を爆発させて暴れるはなみち、を回避しようとして中途半端
    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
    2593

    recommended works