「いづみちゃんと手を繋いで!」「世界一」*咲いづ
『監督と手を繋いでこい!』
そんな命を鹿島雄三から受けた佐久間咲也はリビングソファに座るいづみに声をかけた。
「カントク! 今、いいですか?」
「うん、いいよ。雄三さんが呼んでた?」
居残り稽古をするからと聞いて先に上がっていたいづみは立ち上がるが、咲也は頭を横に振る。次いで、手を差し出した。
「? なに?」
当然のように、いづみは小首を傾げる。
対して咲也も声をかけることはできたのに、いざとなると恥ずかしくなったのか、赤く染めた頬を反対の手で掻きながら『えっと』と続けた。
「その……オレと手を繋いでくれませんか?」
「? もちろん、いいよ」
「あ……」
警戒のない手が咲也の手を握る。それは小さく、柔らかな手。なにより。
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