毒人形 ココ×夢主さんココさんの自宅で一緒に過ごしているとき。お手洗いをかりてリビングに戻った私は、一瞬目を疑った。
そこにいたのは、普段のココさんの面影を持ちながらもはるかに幼い姿をした彼だった。12、13歳…それぐらいだろうか。
その子は私をじっと見つめ、落ち着いた声で言った。
「こんにちは」
「え……こんにちは?」
思わず戸惑いながら挨拶を返した。
何これ、夢?
私の驚きが伝わったのか、奥の方から本物のココさんが現れた。
「お帰り」
「こ、ココさん……この子って……?」
ココさんはいたずらっぽく笑いながら、幼い自分を見やった。
「ちょっと驚かそうと思って、作ったんだ」
「作った……?」
「毒人形。僕自身の毒で形を作ったものだよ」
そう説明する彼の横で、幼いココさん……毒人形のココさんが、静かに私を見つめていた。
「……お名前は?」
「……ココです」
「かっ……」
かわいすぎる。
こんな形で子供の頃のココさんが見られるなんて思いもしなかった。
毒人形のココさんは私の反応に少し瞬きをしたが、特に動じる様子もなく落ち着いていた。
「あの……何歳ですか?」
「年齢は不明です。強いていうなら今産まれたばかりなので、0歳でしょうか」
「……好きな食べ物は?」
「食べ物は食べません……ふりならできますけど」
淡々とした口調で答える毒人形のココさん。
でも、それがまた可愛らしい。
「あっ……ココさん、この子……すっっごくかわいいですね……」
興奮をなんとか抑えようとするがおそらく漏れている私の横で、ココさんは少しだけ口元を引きつらせていた。
「……そんなに夢中にならなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「ただ驚かそうと思っただけなんだけど……なんか複雑な気分だよ」
……もしかして嫉妬しているんだろうか。
「ご、ごめんなさい。つい……かわいくて……」
「……」
はあ、と小さくため息をつかれた。
その様子がちょっと可愛くて、私はくすっと笑った。
「……大人のココさんも、可愛いですよ?」
「……」
真顔でこちらをじっと見つめてくる。
突然視界が暗くなった。
「んっ……?」
突然のキスに、私は思わず動揺した。
「……ほら、君の可愛い『大人の僕』だよ」
さらりとそんなことを言われ、私の頬は一気に熱くなった。
「だ、だめですよ子供の前で!教育に悪いです!」
「いやそれはただの人形で……」
「……僕、お邪魔でしたか?」
「そんなことないよ! ごめんね……」
よしよしと毒人形のココさんを撫でる。
「……まあ、あと数時間したら消えるんだけどね」
「…………え?」
その一言で私は固まってしまった。
「どういうことですか?」
「言葉の通りだよ。毒人形はずっと存在できない。僕の毒で作ったものだから、時間が経てば自然と消える」
「そんな……」
ショックで、思わず毒人形のココさんを振り返った。
「……」
毒人形のココさんは、静かに私を見つめていた。
まるで子供の頃のココさんに出会えたかのように嬉しくて、興奮して、夢中になって話していたのに。
それが、たった数時間で消えてしまうなんて。
「……じゃあ、せめてその間だけでも」