タイトル未定 久々乱今日の委員会活動は確かなかったはずだから、自室に戻ってしんベヱに取り寄せてもらった南蛮菓子を食べるのもいいし、もうすぐ実習だから武器の手入れでもしようかなぁ。と五年生長屋を目指して歩いているのは、五年い組の尾浜勘右衛門である。
もうすぐ見えるであろう自室に差し掛かった途端、何処からか言い合いをしている声が聞こえる。だんだん勘右衛門の自室が近づくと同時に言い合いの声も大きくなってきていて、言い合いをしている相手が誰なのか、勘右衛門は分かってしまった。
言い合いをしているのは、勘右衛門が五年間同室で同じ五年い組の久々知兵助と、彼がいるところに事件ありと言っても過言ではないほど騒動に巻き込まれることが多い一年は組に所属しており、不運小僧や韋駄天の異名を持つ猪名寺乱太郎だった。
学年も委員会も違う二人が何故兵助と勘右衛門の自室に居るのかというと、実はこのふたりあまり知られていないが恋仲であり、学園内でこのふたりが恋仲だということを知っているのは勘右衛門かきり丸、しんベヱぐらいだろう。
勘右衛門は兵助から、きり丸としんベヱは乱太郎から相談を受けていたのでふたりが恋仲だということを知っていて当然なのだ。ただ、他にも兵助と乱太郎が恋仲だということに勘づいているのもチラホラ見かけているが、気づいていない人間がほとんどだ。
なぜ、ここまでしてふたりが恋仲だと気づかれていないのか。それは、だいたいいつも兵助と勘右衛門の自室を逢瀬の場所にしているからだ。乱太郎は別に恋仲だということも公表してもいい派なのだが、兵助は違う。
兵助は乱太郎に好意を持つ人間が沢山いることを知っているし、それが自分のように手に収めて、ずっと隣にいて欲しいという想いを持っていることも知っている。
特に最高学年の六年生たちは異常な程に乱太郎のことを可愛がっているから、もし恋仲であることがバレてしまったら引き離される運命しかないであろうと見越して、こうして自室に引き込み、誰にも邪魔されない自室でふたりきりの逢瀬を楽しんでいるわけである。
まあ、逢瀬が全て自室という訳ではない。たまーに探りが入らない程度にふたりで街に出かけているのも見るし、恋仲らしいことはしているのだろうと勘右衛門は推測している。
そんな大変睦まじい健気な愛を育てているふたりが言い合いするとはどういうことなんだろう?と、障子の空いた隙間からちらりと自室を盗み見ると、乱太郎が仁王立ちして怒っている姿が見える。乱太郎が怒る所など
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「で、言い合いの原因は?」
「…えっと……豆腐と乱太郎どっちが好きなのか聞かれて……」
「で、なんて答えたんだ?」
「…豆腐も乱太郎も好きだから選べないって言ったら怒られた」
好きと好きを掛けたら最高なんだけどなあ〜。と考え込んでいる兵助に勘右衛門はそこは乱太郎と即答すべきだろと思った。というかもしかして…。
「兵助まさか、ふたりで居る時ずっと豆腐の話してたのか……?」
「ずっとじゃないけどまあ頻度は多かったかなあ……?」
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「乱太郎、あの、弁解させて。豆腐の話ばっかりしちゃうのはね、緊張してたからなんだ。」
本当はお前の事を抱き締めたりだってしたいし、口吸いだってしたいし、その先だって行きたい。だけど、まだ乱太郎はこどもで
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「わたし、ちゃんとくくちせんぱいのこと、せんぱいと同じ気持ちで好きなんです。」