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    ジュナイン

    聖杯を求め大会へ挑む息子に、ハラハラするンド様の小話。※カプ要素薄めでギャグ寄りです

    アマランサスお題 花言葉から「粘り強い精神、不老不死、不滅」


    「『大会に優勝して、君も不老不死になろう?』うーん、トンチキの匂いがするなぁ」
    「なんとも胡散臭い触れ込みですね」

    特異点に訪れたカルデア一行だったが、聖杯に繋がる情報が出てこず、実に平和そのものな様子に苦戦していた。
    そこでアルジュナが手に入れてきたのが大食い大会のチラシ。なんでも、優勝賞品である伝説のカレーは食べたことで不老不死になった者も居るとのふれこみだ。
    アルジュナの言う通り眉唾物に思えるが、他にめぼしい情報もないと、一行はその大会へ向かうことにした。

    (まさかその伝説のカレーとやらの器が聖杯とはな)

    観戦席にて酒を呑みながら、インドラは物々しい警備をされた優勝賞品を見る。美しい金の杯。その中には並々と茶色の液体が注ぎ込まれており、芳醇な香りも辺りへ漂っている。
    食欲を唆る香りではあるが、心中は複雑で思わず半眼になってしまう。
    マスターやマシュ、アルジュナまでもが『まれに良くあることです』とすぐに受け入れてしまったので言えなかったが、神秘の結晶であると謳われる願望器がこのような扱いで良いのかと、インドラは未だ釈然としない。

    (ああ、マンドリカルドが落ちたな。残るはアルジュナのみか)

    周りの歓声で現実から背けていた意識が戻る。見れば参戦していたカルデア一行はマスターも含めほぼリタイアしていた。とはいえ、今回大食いのお題として提供されているカレーの辛さは尋常ではないようで、カルデアから以外の参加者もほとんど残ってはいない。
    あちらから流れてくるカレーの香りは美味そうというよりは熱そうという印象が強く、実に不快だ。
    会場で売られていたキンキンに冷えた麦酒を流しこまないとやっていられない。

    (我が息子ながらよくあのような物を食べられるな。舌が壊死しなければ良いが)

    息子が辛味の強いカレーを好むと知り、インドラもこっそりビーマに頼んで食べたことがある。しかし、どうやら自分は耐性がないらしく、痛いばかりで美味いとは思えなかった。
    それでも息子といつか並んで食べられればと練習してはいるが、食堂の赤い弓兵が中辛と呼んで出してくれる辛さまでが精々である。
    大会のカレーはその何倍も辛いと聞き、息子に無様は晒せないと『神々の王はそのような労働をしない』と理由をつけ、初めから観戦に回って良かったとインドラは内心安堵していた。
    ステージやその袖でのたうち回り、口を抑えて呻いている屍のような人間たち。あのような苦行、見るのも嫌だ。
    それを今息子が行っていると思うと辛く、インドラはつい思考が明後日の方に飛びがちになってしまう。

    『おっとぉ!アルジュナ選手、手が止まってしまった。リタイアかーー!?』
    「っ!」

    全身汗だくになりながら苦悶の表情を浮かべている息子に、思わず立ち上がってしまう。
    アルジュナはスプーンを掴む手が震え、遠目だが、インドラには涙が滲んでいるのが見えた。

    (もう良い、そのようなことをせずとも、父がなんとかしてやる)

    見ていられず棄権させようとステージへ向けて足を踏み出す。マスターはできることなら穏便に解決させたいと言っていたが、子をこれ以上苦しめるくらいならば、自分が不興を買っても構わない。矜持や国をかけた戦闘でならばまだしも、インドラから見れば児戯のようなことで今にも退去しそうな顔をさせたくはなかった。
    バチバチと雷を腕に纏い、狙いを定める。
    だが、息子は父が思うよりもずっと粘り強かった。

    『おおっと!アルジュナ選手目を見開いて猛烈な勢いでかきこみ始めた!!!これはすごい、悪魔も裸足で逃げ出すような気迫です!!』

    元々大きめな目を更に開き、一心不乱にカレーを食べる様は実に鬼気迫るものがあり、インドラは圧倒される。雷が鎮まり、頬を一滴の汗が伝う。
    そして、運命の時が訪れた。

    『優勝は、アルジュナ選手!飛び入りにも関わらず見事な食べっぷりを見せてくれました!!皆様、偉大な勇士に盛大な拍手を!!!!』

    ステージ上で司会に片手を上げさせられている息子。その照れ臭そうな顔を見て、インドラは誇らしい気持ちを抱き満面の笑みを浮かべた。
    これは呑まずにいられないと、取っておきの神酒を取り出し一気にあおる。喉ごしも爽やかで、普段の何倍も美味い。
    両隣ではヴァジュラたちが、インドラの代わりに割れんばかりの歓声と拍手を送っている。

    (流石は我が息子だ)

    まだまだ自分には遠く及ばないものの、不滅の精神で見事難関を乗り越えて見せたアルジュナ。
    その素晴らしさを目の当たりにして目頭が熱くなる。

    (この神自ら、健闘を讃える詩を贈ってやるのも悪くないだろう。それだけの価値がある)

    一人頷き、インドラは息子へ伝える数多の賛美を脳裏で吟味し始めた。


    ―――結局『よくやった』としか言えず、居た堪れなくて先に一人カルデアへ帰ってしまうのは、また別のお話。
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