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    aomdr_mkdkm

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    恋人同士になったはいいけどカクチョに素直になれないィザナがもだもだするお話です カクイザです

    #カクイザ
    cukiza

    愛はここから、 昔は王と下僕で、今は恋人同士。それが今の黒川イザナと鶴蝶の2人の関係である。
    二人が恋人同士と相成るまでそれはもうとんでもない紆余曲折があったのだが、こうして何とかお互い無事に恋人という、特別であり対等な関係を結ぶことが出来た。
    イザナはそれ自体に不満等がある訳では無い。何せ自分で彼にオレにはオマエしかいないからと言った手前、その感情をもう隠そうなどと思わなかったし、どうせこれからもずっと二人で一緒に居るのだと考えていたので、紆余曲折の果ての鶴蝶からの愛の告白を即答で受け入れた。
    そこまではいいのだ、そこまでは。問題点は別にある。
    それは、鶴蝶が常日頃自分に向ける愛情表現、それにどうやって対応していいのかが分からないという点だった。
    恋人同士になってから、鶴蝶は自分に対してどんどんと距離を詰めて来た。「好きだ、可愛い、綺麗だ。」等と毎日のように自分への好意を言葉にして伝えてくるのは日常と化し、さらに手を握ったり、髪を撫でるといった物理的なスキンシップも増えてきた。 このままだとキスをするのも時間の問題なのだろうなとイザナは考えている。
    下僕のくせに生意気な、などと考えてなどはいない、だってもう恋人なのだから。想い人に愛を伝えるなんてきっと当たり前の事だし、そうしてちゃんと言葉に、行動に移してくれる彼が可愛くて堪らない。
    だが、しかし。
    自分はその愛にちゃんと相応の応酬を重ねられているのだろうか。最近になってふとそんな疑問を抱いた。
    「好きだ」「今日も綺麗だ。」という愛の言葉に対していつも「知ってる。」「お陰様でな。」等と味気ない返事ばかりだし、物理的なスキンシップに対しては最近「人目がある場所ではやめろ!」と頬を殴るといった無礼を働いた。(実際、灰谷兄弟の前で頭を撫でられついカッとなってやってしまった。)
    こんな素っ気ない塩対応でいいのだろうか、このまま恋人らしからぬ対応を続けていたら、愛想を尽かされてしまうのではないか、とそんな懸念を抱いたのだった。
    今までずっと傍に居てくれた彼に愛想を尽かされる。そんなこと考えるだけでゾッとするのに、ついつい考えてしまう自分がいる。何とかしないといけない。非道な暴君の座からはもう降りたのだから、ちゃんと彼と、対等に愛し合わなくてはいけない。
    でも、どうやって?それが分からず、ずっとやきもきしているのがイザナの現状である。 今日もなんとか打開策が無いか、横浜の繁華街を1人で散策していた。出発時に鶴蝶が同行すると言ってきたが、「留守番してろ。」と突っぱねた。そういうところだろうがと脳内で自分を叱責しながら、とぼとぼと街並みを歩いていくと、とあるものが目に付いた。
    (……あ、)
    それは、アクセサリーショップの棚に並んでいた。赤と黒のツートンカラーの細長いチャームが特徴的な一対のピアス。形がいつも彼が着けているものそっくりで、思わず立ち止まって眺めていた。
    (アイツに似合うだろうな……)
    そんなことをぼんやりと考えながらじっと吟味する。でもアイツはピアス片耳しか空けてないから片方余るな、じゃあもう片方はオレが貰えばいいのでは?お揃いのピアスなんて恋人らしさ満点だし、これを機にさらなる関係の発展を目指せるかも、なんて浮かれた事を考えながら、店員にこれ買いますと声を掛け、会計に移った。途中、店員に「こちらプレゼント用の包装が可能ですが如何致しましょう?」と聞かれ、ふと我に返った。記念日でも何でもない日に急にプレゼントなんて渡したら露骨に機嫌稼ぎに来てると思われるかも、そもそも急にお揃いとかだと束縛しに来てると疑われないか?そんな懸念にふわふわと浮かれていた感情が一気に萎えた。「…いえ、普通で大丈夫です。」そう店員に伝えると、ピアスは普通の紙袋に梱包され、こちらの手に渡された。

    (結局何がしてぇんだオレは……)
    自分で自分に呆れながら、とぼとぼ帰路を辿る。いつもより足が重く感じるのはきっと街を長くぶらついただけでは無いのだろう。
    「…ただいま。」
    「おかえり。」
    がちゃり、と扉を閉めて挨拶をすると返事が返ってくる。言いつけ通りちゃんと留守番していたのだろうか、どこまでも健気な奴だ。
    「どこに行ってたんだ?買物に?」
    「…まぁ、そんなとこ……。」
    思わず紙袋を後ろ手に隠してしまう。お前のために贈り物を買ってきた、なんて言えるはずもなく、また素っ気ない返事ではぐらかした。
    「最近日が暮れるのが早くなってきたからな、不審者とか事故とか、くれぐれも気を付けてくれ。」
    「…んだよ、心配なんていらねぇ。」
    「心配くらいさせてくれ、オマエが大切なんだから。」
    そんな歯痒くなるような台詞を真顔で言い放ち、鶴蝶はイザナの髪ををするりと撫でた。さら、と指が髪をくすぐる感覚に思わずびくり、と身動ぎをしてしまったイザナは後ろで隠していた紙袋を落としてしまう。
    「……?これ、なんだ?」
    「……ッ、触んな!」
    紙袋に手を伸ばす彼の手を叩き、奪い返す。どうしてこう素直になれないのだ。自分の今の今までの行動の惨めさに耐えきれず、唇を噛み締めるとじわり、と涙が溢れてきた。
    そんな自分の姿を見て、鶴蝶は慌てふためき此方の様子を伺ってくる。
    「そんなに触られたくない物だったのか…?すまない、気が利かなくて…。」
    「ッ、違ぇよ……っ、ゔぅ。」
    どうして、こんなにも彼は優しいんだろうか、こんなに素直にならない天邪鬼な自分に、どうしてこんなに愛してくれるのか、どうして、どうしてと考えていく度にぽろぽろと涙が止まらなくなる。
    「っ、なんで、そんなオマエ、オレに優しくしてくれんの…?」
    「?なんでって、急にどうした…?」
    「だって、オレ、オマエに何にもしてやれてないのに……恋人、らしいこと、何も出来てねぇじゃん……。」
    なのに、どうして?どうして彼は、こうも自分に愛を与えてくれるのか。
    「ずっと、考えてた……っ!このまま、素直になれなくて、オマエに嫌われたらって、そんなのやだ……っ、でも、どうすればいいか、わかんなくて……っ!!」
    嫌だ、いやだ、と心が今にもぐずぐずに潰れてしまいそうで苦しくなる。ああ、本当にどうしようもない、本当に、嫌になる。
    涙でぐしゃぐしゃになった顔を彼に見られたくなくて、顔を手で隠す。手の甲がとめどなく溢れる涙で濡れていく。 きっと酷い顔をしている、こんな顔を見たら彼はきっと失望してしまうかもしれないと考え、また胸が苦しくなった。
    「イザナ、大丈夫だ。」
    彼の手が、そっと肩に触れる。まるで壊れ物を扱うかのように優しい手つきで。
    「オレはイザナを嫌いになんてならない…なれるはずがない。ずっとオマエのためだけに生きてきたんだから。」
    そして抱き寄せられる。彼の温もりと鼓動が伝わってきて、胸の蟠りを緩めていく。
    「…うん、オマエのためだけに生きてきた、だからイザナ、オマエがここにいてくれるだけで俺はもう十二分に嬉しくてたまらないんだ。」
    だからそんなに自分を責めないでくれ。と、彼は自分の顔を覆う手を退けて、涙を指で拭う。ああ、本当にどうしようも無いやつだ、こんな自分の昔の言葉にどこまでも忠実になって下僕になって、そこから恋人になってもどこまでも真っ直ぐに自分を見て、愛してくれる。
    「……なんだよ、それぇ…。」
    ここにいてくれるだけで十二分、なんてキザったらしくて白々しく聞こえる台詞が、きゅん、と胸に刺さる。きっとこんな奴を下僕にして、恋人にしてしまったから、こんなにも心を掻き乱されてしまう。
    でも、どうしようもなく好きなのだ。こんな男が、鶴蝶の事が。
    「……鶴蝶。」
    「うん?どうした、イザナ。」
    いつの間にか涙は止まって、心の中で燻っていた靄も掻き消えた。
    ─今だけでも、少しだけでも、素直になろう。
    「す……好き、オマエ、のこと…オレ、も…」
    かぁ、と顔が熱くなる。きっと茹で蛸の様に真っ赤になっているのだろう。恥ずかしさのあまりに彼と目を合わせられない。それでも、伝えなければ。この言葉で、少しでも彼の愛に報いたいから。
    「王、とか…下僕とか、そういうの抜きにして、ちゃんと…恋人として…ちゃんと、好き、だから…いつも、突っぱねて、ばっかだけど…オレも、ちゃんと……、」
    しどろもどろで、拙い言葉だ。それでも、ちゃんと彼は聞いてくれている。
    「…だ、大好き…だから…。」
    ああ、言った、言ってしまった!ずっと素直になれずに伝えられなかった言葉を、今、ようやく彼に伝えられた。
    まだ、目を合わせられない、今、彼はどんな顔をしているのだろうか。ちら、一瞬だけ彼の方に目を向ける。
    (……あ、)
    そこには、ぱちくりと目を見開き、自分と同じように顔を赤らめわなわなと震える彼がいた。
    「っ、イザナ!!!」
    そして彼は自分の名を呼びもう辛抱たまらないと言わんばかりに力いっぱい抱き締められる。
    「オレも……っ!オレもイザナが好きだ!愛してる!」
    そう言ってにこり、と彼は無邪気な笑顔を見せる。そんな無垢で純心な言葉と笑顔にまたきゅう、と胸がときめいた。
    「……っ、バカ、声デケェし、苦しいんだけど。」
    「す、すまん!」
    ばっ、と抱擁が解かれる。別に抱き締めるのをやめろと言った訳ではなかったのだが、まぁ、いいだろう。
    ずっと後ろに隠していた紙袋を彼に押し付ける。
    「…、これ、さっきのやつ…。」
    「御託はいいから開けろ。」
    あぶねぇもんは入れてねぇよ、と開封を促すと、彼はいそいそと袋を開けて、中を覗いた。
    「ピアス…、これ、オレに?」
    「……オマエに、似合うと思ったから。」
    「そっか、ありがとな。」
    「…ん。」
    「でもこのままだと片方余るぞ…?」
    「そんなもん失くした時用に取っとけよ。」
    「それでもいいが…。」
    ほら、とピアスの片方を手渡される。
    「これで俺達でお揃いにしないか?」
    恋人らしいこと、してくれるんだろ?
    そう言って彼は少しニヒルに笑った。その笑顔もまた様になっていて、ああ、やっぱり好きだな。と思う自分がいる。
    「仕方ねぇな…後から文句言うなよ?」
    「言わねぇって!」
    「本当か〜?」
    そんな軽口を叩き合いながらくすくすと2人笑い合う。
    「…なぁイザナ、そのピアス一緒に着けて、今度は2人でどこか出掛けないか?」
    「…なんだそれ、デートの誘いか?」
    「まぁ、そうなるかな…。」
    「…いいぜ、付き合ってやるよ。」
    「いいのか!?」
    「代わりに、どこ行くかとかのデートプランは全部テメェで考えろよ。」
    そう告げると、彼はうぐ、と狼狽するような表情を見せた。いつもの自分の横柄な態度に振り回されてる時の顔。それを見てまた少し安心した気持ちになり、とすん、と彼の胸に体を預け、顔を埋める。
    「…ありがとな、鶴蝶。」
    こっそりと小声でそう呟く。愛し方も愛され方も分からない自分をこんなにも愛してくれている、それがとてもこそばゆいけど、たまらなく嬉しくて、心地よくて。これがきっと好きという感情なのだと知れたのは、きっとオマエのおかげだから。
    「…?イザナ、何か言ったか?」
    「なんでもねぇよ、腹減ったから飯にしようぜ。」
    「それもそうだな…。」
    そうして、ひと時を共に過ごしていく。これからも、ずっと。

    後日、お揃いのツートンカラーのピアスを着け、横浜中華街を歩く2人を見たと天竺の構成員の間で話題になったのであった。
    「なんか話題になってるけどいいの、大将?揉み消しとかしなくて。」
    「あ?好きに言わせとけそんなの。」
    「ふーん…(隠さないことにしたんだ…。)」
    「…ンだよ。」
    「別に何も〜?」
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