観月がいつまで経っても帰っていこうとしないので、赤澤はいよいよ覚悟を決めた。
今夜の赤澤が直感で選んだ店は席の間隔が広い代わりにソファが小さくて、夜じゅう膝頭がしきりに触れあった。
観月から「だから店の下調べが大事だと」「なんで二十歳にもなって自分の図体を把握できないんですか」など文句が出るだろうと思ったけれど、予想に反して、ボタニカルジンをロックで美味そうにかぱかぱ空けて、なんでもなさそうに笑っていた。
聴講しにいった他学部の講義が意義深かったので来期も受けるつもりだとか、夏の短期留学の準備は順調に進んでいるが同室の面々に向学心が欠けているとか、柳沢と木更津がストリートテニスに誘ってきたが自分はこの蒸し暑さで打つ気にならないから見学にする、赤澤と野村で打ってくれとか、観月らしい話の数々を聴きながら赤澤は前回のデートを思い出していた。
2013