手合わせ「…暇、だから斬らせて」
そんな突拍子もない発言で決まった手合わせ。
一体一で主神にかなうわけがなく、アルマと晋二は普段組まないペアを組むこととなった。
主神の暇つぶしを、願いを、二人は拒否するという選択肢を持ち合わせていない。
「1分だけ、私からは仕掛けないわ」
圧倒的な力の差を理解している主神は楽しそうに、弾む声で伝える。
一分、与えられた時間。
二人は顔を合わせ直ぐに戦闘態勢をとる。
アルマは手を地にかざし、晋二は煙管を取り出し煙をふかす。
「茨よ!生い茂れ!」
「煙龍、喰い裂け」
言葉が届くと同時に、主神の辺りに茨が生い茂り、動きを封じ、煙の龍が主神を襲う。
その茨を主神は身体にまとわりつく前に切り刻み、煙龍の牙を身を捩って避ける。
心底、楽しそうな笑みを浮かべて。
「もーー!捕まれよォ!!」
アルマは地団駄を踏みながらさらに茨の蔓を主神に向ける。
踊るように避けるその姿を、晋二は冷や汗をかきながら苦笑いを浮かべて見る。
一撃必殺、あれを避けられてしまえばこちらは負けも同然。
「目眩しには、なんだろォ!」
煙を辺りに充満させ、お互いの姿を視認できないの度濃く、濃く煙が踊る。
けほ、けほと主神の咳き込む音と、アルマの目がァ!!という叫び声。
ふぅっと煙管を咥え吸い込む。もう十分、こちらは足掻いた。
煙の中で暴れる蔓と、主神の紅い紅い刀の火花。
煙の中で輝くそれはまるで花火のようで、最後に見るにはいい景色なんじゃねェか?と晋二は微笑んだ。
「もう、時間切れ」
主神の一声、と同時に辺り一帯に貼り詰められた紅い紅い糸。
主神の刀は1本の親刀と99本の小刀からなる。
99本の小刀は1本は打刀のような形をしており、それ以外の98本は糸のように細い。
ただでさえかなう相手ではない、その珍妙な刀を使われては、攻略法は無いに等しい。
二人の全身に浅く切傷が刻まれ、苦痛に顔を歪める。その一瞬、まずは貴女とアルマの間合いに入りすらりと手にした刀で首を跳ねる。
その首を血に落とさないように片手で抱えて、次、と顔色を変えずに地を跳ねて晋二の前に立つ。
「今日は頑張ったほうね」
主神から御褒めの言葉を頂いて、そうかと目を閉じ、首と身体が離れる。
刀を親刀に返し、跳ねた二人の首を抱えて主神は笑顔を見せる。
「つまらなくはなかったけど、もっとがんばってよ。」
「暇つぶしにならないわ、こんな短時間じゃ」
「もっと、もっと遊べるように強くなってね」
2人の額にそれぞれ口付けを落とし、離れた身体に首を戻す。
「ひっついてよ」
主神が願えば、その形に。
「ッぁ……わ、私も褒めてよぉ」
「ぃ…………ってぇな…斬られるより、繋がる時がよォ」
ごめんね、と主神は眉を下げる。
「切傷も治してよ!美少女に傷ついてたらなんか、なんかエロいだろ」
「お前に色気なんてあるわけねぇだろ」
「え、えろ…?分からないけど、傷まみれの血塗れのアルマは可愛いわ」
そんなつまらない話をして、お茶にでもしますか!と、三人は穏やかな日常へ。