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    エンジェライト

    愛と平和が好き。只今ブレトワ推し。二次創作の小説を書きます。

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    ブレとトワの元にソラがやってきてあることを確かめると言い出して…。

    ブレ→一人称はおれ。トワのことを、リンク、と呼ぶ。十七才。

    トワ→一人称はオレ。ブレのことを、リンク君、と呼ぶ。十六才。性格は温和。天気病という病を患っている。

    ソラ→スカイウォードソードの主人公リンク。

    舞台はトワの方のハイラルです。

    #ブレトワ
    bretwa

    ソラさんがやってきた!「と、言うわけで僕はソラ。君達って勇者の魂の強化のために女神様によって出逢わされたんだよね、僕ちょっとそのことでふたりに用があって」
    おれとリンクが住む、ある村の入り口で、突如現れたその“ソラ”さんがこう言った。
    彼曰く、彼もまたおれ達と同じ勇者の魂を持つ存在で、おれ達のご先祖に当たる人らしいのだが、おれは今更驚かなかった。リンクと出会ってから様々な奇跡を目の当たりにしてきたし、なによりそのリンクが既におれと同じ勇者の魂の持ち主なのだから、おれには若干の免疫がついていた。
    「なんでそのことを知ってるんですか。というか、そのソラさん、が一体なんの用ですか」
    おれが淡々と言うと、ソラさんは胸の前で腕を組んで、
    「まあ、僕の世界のゼルダは女神様本人みたいなものだからね。そして用とは、僕は君達の絆とやらを確かめに来た」
    と言った。絆。おれはきょとんとした。なんだって別世界からわざわざそのことを確かめにくる必要があるんだ。
    「絆…なんでまた」
    「だから、魂の強化の確認だよ。せっかく勇者をふたりも出逢わせたのに、なんの進歩もないんじゃ女神様も悲しむからね」
    「けどおれ達、その強化のためって言われて知った時は憤慨しましたけど、今更そこに重きを置いてはいませんよ?そのために愛し合ってるわけじゃない、元々彼が好きなんですおれ。」
    「…なるほど、愛し合ってる、か」
    腕組みをしていたソラさんが、なにやら考える素振りをした。おれはその間、この唐突な出会いに呆けた頭を少しでもシャキリとさせたくて思考を巡らせた。ソラさんは同じ勇者の魂を持つだけあって、やはり容姿がどことなくおれ達と似ている。ちょっとのほほんとした雰囲気も、なんとなくリンクに似ている気がする。そんなことを考えるうちにソラさんが独りごちた。
    「僕は友情止まりだと思ってたけどかなりの誤解だったんだな。そうか、愛か、そこまでいってたのか…」
    「あの、なにか」
    「いや!僕が悪かった。うん、じゃ、プラン変更しなきゃ。とりあえずえーっと、トワがいるとこまで案内してくれる?」
    トワ。おそらくリンクのことだろうがおれはこの時言い知れぬ気持ちになる。まだ会ってもいないのに愛称で来た。なんだ、なんだこの気持ちは…。
    「リンクなら家に居ますけど、彼持病があるので、帰っても元気とは限りませんよ」
    「えっ!?…そうなのかぁ。それは興味深いな、勇者は世界を救った後なら病気にもなるものなのか…」
    彼がまたブツブツと言い始めて、おれはそこで彼の人となりを僅かに把握し始めた。
    とりあえずは、はるばるこの世界にやってきた彼のために一応リンクと会わせることにした。
    村の入り口からさほど歩かないうちに、緩やかな坂を登ったところにある我が家に着く。引き連れた愛馬を小屋におさめてから、玄関扉を開け、まずは部屋を見渡す。以前帰宅後にリンクが床に倒れていた経験を経てからは、帰り着くとまずこうやって室内を見渡す習慣が出来てしまった。すると見渡したリビングの端のソファに、リンクが座ってお茶を飲んでいる姿があった。扉を開けた音に反応して、彼が振り返り、立ち上がった。
    「あ、リンク君おかえり」
    「ただいま」
    彼はこちらに歩み寄ってきながら、おれの背後にいる人物に気が付いたようだ。
    「あれ?お客さん…?」
    「うん…ええっと…、」
    おれは室内に入りソラさんを招きながら考える。なんて説明したらいいのか。
    「やあ!君がトワかいっ?」
    すると勢いよくソラさんがリンクに挨拶した。急に声をかけられてリンクがひゅっと息を吸い込んでいる。
    「…え、あの、トワってオレ…?あ、あの、…あなたは…?」
    ソラさんは目を輝かせて一歩前へ出た。ん?この反応。既視感があるぞ。おれが初めてリンクに会った時に似ていなくもない。やはり同じ勇者の魂を持つ者同士としてテンションが上がるのだろう。分かるけども、分かるけど、この、さっきから感じる違和感はなに―。
    「僕はソラって言うんだ。ブレから話は聞いてるよ、今は身体は大丈夫なのかい?」
    彼はそう言った後、事のいきさつを簡潔にリンクに説明した。リンクは若干気圧されつつも話を聞き終え、そうでしたか、と相槌を打った。
    「ところで君達愛し合ってるって本当?証拠がないから分からないよ」
    ソラさんの唐突な言葉に、リンクが、えっ、と言ってやや頰を紅く染めた。ソラさん、リンクにそういう話題振るのは注意が要るんだって。しかも会っていきなり。何故ならリンクは初だから。見兼ねておれは助け舟を出す。
    「証拠なんてなくても、おれ達ちゃんと愛し合ってますから。ご心配なく」
    おれは言いながら自分が何故か険を含んでいることに気が付く。いくらなんでも初対面の、しかも自分達のご先祖様に対して失礼な気もしたが、いかんせん胸の内側がもやもやとしてやまないのだから。
    「う〜ん…困ったな。僕も予想外だったからノープランなんだよね…。……あ、じゃあさ、愛の告白はどっちからしたの?」
    「はい?」
    「や、だから、告白―」
    「いや、聞こえてますってば。なんでそんなことを」
    「証拠がいるって言ったじゃない。ね、どっち?」
    「……」
    これは。ソラさんもしかしてちょっと面白がってないか?おれは眉唾と思いながらも、やや面倒くさそうに答えた。
    「おれです」
    「おお!なんて言った?」
    「…………それはプライバシーに関わるので言えません」
    「えー!お堅いなぁ!あのー…もしかしてその先も済んでたりする?」
    ソラさんがぐいぐいくる横で、リンクの様子を盗み見ると、彼は案の定顔を真っ赤にして黙り込んでいた。もはや気の毒になってくる。おれは何故か心がやさぐれてきた。
    「…済んでますけど」
    「わぁホント?先にキスしたのどっち?」
    これはなんだ。なんの尋問なんださっきから。おれは好奇心いっぱいのソラさんの瞳にだんだんとイライラしながら、
    「おれですけど」
    と早口に答える。ソラさんがまた、おお!と感嘆詞を口にした。
    「ブレが攻めてく感じだ。なるほどなるほど。…あ、あのさ、もしかしてもしかして、その先も済んで…?」
    ソラさんの不躾な言葉に、おれはいよいよ頭に血が上ってやや声を荒らげた。
    「ソラさん!リンクもいるんでそういう話はここでは…!」
    言うと、ソラさんは片手を頭にやってあはは、と短く笑い声をこぼした。今リンクの様子を確認するのが心苦しいくらいだ。きっと顔を真っ赤にして困惑しているだろう。するとそこでソラさんがおれ達の胸中も知らぬまま言った。
    「うーん…。これだとやっぱりまだ確信がなぁ。どうしようかな…んー〜……」
    おれは頭が痛かった。この期に及んで一体何をどうするというんだ。おれはともかく、これじゃあリンクが可哀想になってくる。おれは気遣ってリンクの背中に手を遣った。
    「あの、ソラさん…まだそういう話が続くなら、リンクにはこの場を退いてもらいますから」
    「……あっ!」
    「え…?」
    急にソラさんが声を上げた。おれはもはや怪訝な顔をしてそちらを見た。すると彼はおもむろにリンクの方へ身を近付け、
    「いいこと思いついた!…よし、トワ、手を繋ごう!」
    と言い出した。
    「「えっ?」」
    と、おれとリンクが同時に声を上げた。手を繋ぐ?ソラさんの思考が読めない。おれは眉をひそめる。リンクも同じことを思ったようで、
    「てっ…手を繋ぐって……??あの…っ」
    とうろたえている。
    「いいからいいから!はいっ」
    とソラさんはリンクの左手を取った。今まさに二人が手を繋いだ画が出来上がった。………ん。なんだこの、この……。おれは急に胃の辺りがむかむかとしてきた。視線を彼らに向けると、リンクは恥ずかしさに下を向いているのに対し、ソラさんはおれの方をじっと観察するように見ている。途端、余計にむかっ腹が立ってきた。なんだこれ、なんだこれ…。
    「…あれ〜?だめかぁ。うーん、君達の絆はこんなものなのかい?」
    「え…、絆っ…て…、さっきからなにをやってるんだアナタは…」
    とおれが呆れて言うと、今度は、
    「よしじゃあトワ、ハグだハグ!ハグしよう!」
    と言うソラさん。…は?!なんだ?!どういうことだ?これのどこがいい思いつきなのだ。おれはまるで密かに試されているかのような居心地の悪さを覚え、思いっきりしかめっ面をした。
    「えッ?!!な、なんで…!」
    リンクが当然のように驚いている。ソラさんはまた、いいからいいから、と言ってリンクの身体を腕で引き寄せた。
    「ご挨拶ってことで」
    そのままソラさんの腕の中にすっぽりとリンクが収まった。おれは呆気に取られ、今度はこちらが観察する側に成りかわった。挨拶、と言う割りには、妙に腕に力が込められている気がする。いや気の所為か?どのみち、見せられているこちらはいい気分にはなり得ない。おれが言葉が出ずにいると、ソラさんはまたこちらをちらりと見て、
    「…そうかぁ、だんまりかぁ。意外だなぁ」
    となにやらこぼした。意外…?まだ会ったばかりでおれやリンクのなにを知っているって言うんだ。おれがまた微かに内心で腹を立てていると、ソラさんはようやくリンクを腕から解放した。そして、
    「ちょっと失礼」
    と言ってリンクに顔を近付けていき…、
    ちゅっ。
    と音がした。おれは目前の光景を疑う。あろうことか、ソラさんがリンクの頰にキスをした瞬間を目撃してしまった。
    「これでどうだ!」
    「…え…っ」
    「…ぎゃあぁぁああーッッッ!!!」←ブレ。
    おれは卒倒しそうになり、思わず叫んだ。ほぼ無意識にソラさんを腕で押しのけ、リンクを彼から引っ剥がした。
    「なにやってんすかっっあんたはッッ!!!」
    鬼の形相で叫び散らすと、ソラさんはまた片手を頭にやって、いやぁ、と緩い笑顔を見せた。リンクを見るとリンゴみたいに紅い顔をして硬直している。
    「流石に動いたね。…でもちょっとびっくりしちゃった。トワのほっぺ、やぁらかいねぇ」
    「変態ですか!!よくもリンクに……!!拭いて!リンク拭いて!!」
    「やだなぁ、それを言ったらブレなんかはトワに思いっきり手を出してるわけだろう?それに僕はばい菌じゃないんだから、その言い草はないよ」
    「呑気なこと言ってる場合ですか…!!」
    硬直したリンクに代わって彼の頰を服の袖で拭いながら、傍に立つソラさんを睨みつけた。
    「こんなやり方しなくても!もう分かった、アナタはおれの気持ちを確かめたかったんでしょう?!だからってリンクにこういうことするのはやめて下さい!!」
    もはや彼に敬語を使う義理はなかったが、なけなしの理性でなんとか敬う言葉を使った。おれの言葉を受けて、ソラさんは急に静かに瞳を閉じ、また腕組みをした。
    「具体的に知る必要があったんだよ。……でもなんだろうなぁ、僕の中で、もうちょっと説得力が欲しいんだよなぁ」
    「もう!いいですから!!」
    言っておれはソラさんの背中をぐいと両手で押した。押した先は玄関扉だ。
    「出てって下さいッ!!」
    「それはないよ、僕だってちゃんと調べなきゃなんないんだし!」
    「問答無用です!!」
    ズバンッ!と扉を閉めて、ソラさんを強制的に閉め出した。その様子を、口をぽかんと開けて背後のリンクが見ていたのだった。



    「あ〜腹が立つ腹が立つ腹が立つ〜!!!」
    夜間、風呂上がりにおれは呪文のように言葉を口にした。ベッドに腰掛けて夕刻の出来事を思い返してはイライラとすることを繰り返す。自分でもなにかに取り憑かれたみたいだと思った。
    おれの後ろで既に布団に入っているリンクが気遣わしげな視線を送ってくる気配を感じた。
    「大丈夫リンク君…?あの、うまく言えないけど…、その、キスもハグも諸外国では挨拶でするって聞いたよ」
    おれは勢いよく振り返る。
    「あれはそういうやつじゃなかったよ!だいたいリンクのほっぺの感触を知ってるのはおれだけでいいんだって!!ぅーーーっっ!!思い出したらまた腹立ってきたッ!!」
    髪を掻きむしって苛立ち、行き過ぎておれはなんだか悲しいというか、虚しいというか、そんな気分になってきた。ひとしきり喚いて、はあ、とため息をつく。絆の確認って、なんなんだ。いいじゃないかおれ達は今充分絆を感じてるんだから。おれは急に覇気を失くし、脱力して、なんとなく目の保養に目前のリンクを眺めた。彼を取られるようなことに関しては相変わらず我を失う節がある自分だ。我ながら扱いづらい。
    不意にリンクと目が合った。げんなりしたおれを気遣ってか、彼が優しく目を細めてにこっと笑んだ。ああ、かわいい。胸の奥に小さな灯火が灯ったみたいにあたたかさが広がる。リンクは言った。
    「うーん…、確かに絆って…目に見えないし、確認するの大変そうだよね」
    囁くような彼の声に耳を傾ける。本当にそうだ。でも、おれはそれが輪郭を持って、目に見えるみたいに感じるほど、彼との絆を感じているつもりだ。そっと手を伸ばし、彼の頰に触れた。
    「おれはちゃんと感じてるよ、リンクとの絆」
    じっと相手の瞳を見つめる。リンクが目をぱちりとさせてから、おれのことを見つめ返してくれた。
    「オレも」
    優しく柔い声音がおれの鼓膜を震わせた。おれは笑って、愛しさを感じるままに彼の額に己の額を押し当てた。彼に触れると凪いでゆく。荒れ狂った気持ちも、嫉妬の感情も、なにもかもが。額にあたたかな温度を残しながら彼から離れ、間近で瞳を見つめ合った。

    それから少しして、リンクは布団の中で寝息を立て始める。彼は今既に眠剤を服用し、しばらくは目覚めることはないだろう。愛しい寝顔を少しの間眺めて、おれは部屋の明かりを消し寝支度を整えて布団に潜り込んだ。おやすみリンク。心の中で伝えて目を閉じる。布団を被り、そこから出た鼻先を、夜気の冷たさが掠めていく。

    「あれ、ふたりって一緒に眠るんだね」

    ………ん??今ソラさんの声がしたな。空耳にしてはいやにはっきりと聞こえた気がした。おれは布団の中で瞬く。

    「……おーい、もう寝ちゃった?」

    ガバリッと布団から起き上がった。空耳じゃない。今確かに―、

    「…っ?!!」

    おれは再び瞬いた。月明かりに照らされた薄暗い室内の、ベッドから少し離れたところに人の脚が浮き上がって見えた。よく目を凝らせば、何故かそこには屋外にいる筈のソラさんが立っていた。頭がパニクる。
    「…、なッ……えッッ…?!?!なんでどう……、アナタどうやって中に入っ…、」
    狼狽するおれをよそに、ソラさんはこちらに歩み寄ってきて、その表情が月明かりに浮かび上がった。にへら、と笑った顔をしてソラさんは、
    「それは企業秘密ですっ」
    と言った。おれは頭の中がぐらぐらした。やっとリンクとふたりになれて気持ちが落ち着いてきていたのに。おれが興奮に浅く息を吐き出しているそばで、ソラさんはベッドのすぐ脇までやってきた。
    「な、なにしに来たんだっ、こんな時間に…!」
    すると、彼はリンクが眠っている枕元に片手を突いてキシリ、とベッドを軋ませた。
    「色々考えてたんだよね。…実は夜這いに来ました。」
    「はっ?!?」
    おれが頭の中を混乱で極める中、見るとソラさんはリンクが被っている布団をゆっくり剥いで、徐々にリンクに顔を近付けていく。なにをする気だ、と思考した刹那、ソラさんがリンクの首筋に顔を埋めた。おれの息が止まった。頭の中でサイレンが鳴り、身体が強張って呼吸が乱れるのに、おれは身動きが取れなかった。そうするうちに、ソラさんの両手がリンクの上着の下に滑り込んだ。なにを見せられているんだと思うよりも早く、おれは雷に撃たれたみたいに身も心も焼け焦げた衝撃を受け、気が付くと身体が勝手に動いた。ソラさんを渾身の力で押し退け、ベッドの側面側の床に尻もちをついた彼の上に素早く馬乗りになり、その首を手のひらで押さえつけた。一閃のようなうちの出来事だった。
    おれに押さえつけられたソラさんが仰向けにおれを見た。おれは興奮でふうふうと呼気を吐き出しながら目を血走らせ、そして告げた。

    「それ以上やったらアナタの命を取る…!!!」

    鬼気迫るおれの声が薄暗い室内に反響した。その手は強くソラさんの首を圧迫した。彼が苦しげに息を漏らし、片手でおれの手首を握って制止しようとしていた。
    ところがソラさんはその状態から口角を上げて薄っすらと微笑した。おれは一瞬怯む。すると彼は、

    「…それだよ。僕が見たかったのはそういう命ギリギリの感じだよ」

    と言った。え、とおれは目を見開き、彼を押さえつける手の力を緩めた。その拍子に彼は緩慢に起き上がりおれの手を払いのける。
    「これで合格点だね。君がどれだけトワを大切にしているか、よく伝わったよ。…良かった、けれど危うく君に命を奪われるところだった、はは」
    彼の言葉に、完全に力が抜け、彼の上から身を退かし、そのまま床に座り込んだ。立ち上がったソラさんを見上げ、おれは呟く。
    「そんな…こんなやり方…。アナタって人は一体…」
    こちらの様子をよそに、それにしてもすごかった、流石は手練れだね、と彼は言った。そして、剥いだ布団をそっとリンクに被せ、慈しむような視線を送っていた。
    その後彼はおれに向き合い、こう告げた。
    「ブレ、今日みたいにトワが誰かに奪われそうになっても、君はそういう輩からきちんとトワのことを守るんだよ、分かったね」
    おれは急に背筋を正す思いをした。のほほんとしたソラさんの雰囲気とは違った、おれ達のご先祖だという威厳みたいなものを彼から感じたからだ。
    「僕ら勇者のためにも、ふたりのその繋がりを切ってはダメだ」
    更に彼は告げ、眠るリンクから離れていく。おれはよく分からずふらりとその場で立ち上がって彼のゆく先を見た。ソラさんは笑う。
    「ほら、僕に取られそうになったんだから…、キスしてあげなよ。君の大事なトワだろ?」
    急にそう言われ、なんだかむず痒く感じながらリンクを振り返った。薬が効いて今の今まで全く目を覚ましていない彼の、すぐ傍に立って頰を撫でた。ソラさんが見ている前で、とも思ったけれど、ソラさんとておれの目の前で恐ろしいことをしようとしたのだから、とおれは癒やされたくもあって眠ったリンクの唇のすぐ横にキスを送った。背後でソラさんが頷く声がした。そっと唇をリンクから離し、おれはソラさんの方を見た。
    「勇者だからじゃない」
    おれは言う。
    「ただ彼を、ひとりの人間として愛しているだけだ」
    今しがたキスを送ったリンクへの強く熱い想いを胸に秘め、ソラさんに告げる。それを聞いた彼は咀嚼に一拍時間をとり、それからどこまでも優しい笑みをにこりと浮かべた。
    「よく言ったね。僕らは君達を誇りに思うよ。いいものを見せてくれてありがとう」
    ソラさんの言葉を聞きながら、自分の鼓動が耳に響くのを感じた。彼がきっと、おれ達と同じ魂の持ち主だから、その言葉がひしひしと響いてくるものがあるのだと思った。
    「じゃ、ふたりの邪魔しちゃ悪いから僕は帰るよ。お幸せに!」
    現れた時と同様に薄闇に姿を消してゆく彼の足音を、おれはただ佇んで聞いているのだった。

    なんだか呆然として、おれはベッドに眠るリンクの傍らにしゃがんで、彼の寝顔を見つめた。
    彼を、誰にも奪わせはしない。
    たとえこの身に替えても。
    自分が、彼の危機の切迫を経て、誰かの命を奪おうとまでするとは思いも寄らなかった。けれど、ソラさんの言うのはそういうことなのだろう。命を賭けるほどの絆。勇者のおれ達に必要なもの。突如現れたソラさんの存在によって、知らしめられた気がした。
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    PASTトワが嫉妬に似た気持ちに戸惑うお話。

    ブレ→一人称はおれ。トワのことを、リンク、と呼ぶ。十七才。

    トワ→一人称はオレ。ブレのことを、リンク君、と呼ぶ。十六才。性格は温和。天気病という病を患っている。


    天気病→湿度や気圧によって身体に影響を受ける病気。身体と同じほど、精神にも揺らぎをきたす病。

    舞台はトワの方のハイラルです。
    白い花眠っていた。夢を見ていた。
    大切で大好きな人が、見知らぬ誰かと連れ立っていく姿を見る。なんてことのない風景とばかり思っていたのに、夢の中でオレは、息が苦しくなるほど胸が痛かった。嫉妬したことはなかったのに、一体。この感情は―。


    目覚めて、目尻に涙が溜まっていることに気付く。オレは悲しかったのか。よく分からない心境のまま隣を見ると、いつも隣に眠る彼はもう任務に出掛けてそこにはいなかった。それが、夢の中の光景に重なって、無性に悲しさを煽った。

    嫉妬。いや、なんだか微妙に異なる気もする。オレはいつも、例え怒り等を感じたとして、それが通り越して悲しみに直結しやすい質だ。だから多分、あの光景を見てなにかを感じて、またそうして通り越して悲しくなって涙が出たに違いない。
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    天気病→湿度や気圧によって身体に影響を受ける病気。身体と同じほど、精神にも揺らぎをきたす病。


    舞台はトワの方のハイラルです。
    花かんむり麗らかな日和。小さな花が咲く樹の下で野原に群生する白い花々が風に揺れる姿を眺めた。
    おれ達が暮らす村の外にあるちょっとした野原に、ピクニックと称してリンクとふたり、やって来ていた。今は平和なこのハイラルでこうしてふたりで過ごすのはおれの夢でもあった。
    籠に入れて持ってきたサンドイッチとリンゴジュースをのんびり飲食しながらのどかな景色を心ゆくまで楽しむ。小鳥がどこかでさえすり、風が草木を撫でる音が耳を癒してゆく。
    陽光はあたたかいが風は少し肌寒く、体調が万全でないリンクは肩にショールをかけて景色を眺めていた。
    「あの花」
    静かにリンクが言った。
    「故郷の森にも咲いてた。なんだか懐かしい」
    おれは口に入れていたサンドイッチの欠片を飲み込んで、手についた屑をパンパンとはたくと、しばしその群生した白い花々を見つめた。
    1807

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    大切で大好きな人が、見知らぬ誰かと連れ立っていく姿を見る。なんてことのない風景とばかり思っていたのに、夢の中でオレは、息が苦しくなるほど胸が痛かった。嫉妬したことはなかったのに、一体。この感情は―。


    目覚めて、目尻に涙が溜まっていることに気付く。オレは悲しかったのか。よく分からない心境のまま隣を見ると、いつも隣に眠る彼はもう任務に出掛けてそこにはいなかった。それが、夢の中の光景に重なって、無性に悲しさを煽った。

    嫉妬。いや、なんだか微妙に異なる気もする。オレはいつも、例え怒り等を感じたとして、それが通り越して悲しみに直結しやすい質だ。だから多分、あの光景を見てなにかを感じて、またそうして通り越して悲しくなって涙が出たに違いない。
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