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    igarashi65

    ツイッターに上げる漫画の途中経過が多いと思います。
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    igarashi65

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    1825、TS🐶【tκ1z】
    酔っ払いのずるい大人と若者。

    #tklz

    リゼさんはお酒が好きだ。世間一般に言う酒乱、というものではないけれど、女の人にしては飲む方なんちゃうかな、と思う。ビールに始まって缶チューハイ、ワインまで呑んでもべろべろに酔うわけではないから、相当なんだろう。家族にそこまでの酒豪はいないから、よくわからないけれど。
     出会ってすぐの頃は、ぼくが17歳ということもあって気を遣ってくれてたみたいだけど、最近ではその様子もなくなった。嬉しいと言えば嬉しいし、困ると言えば、少し困ってしまう。だってぼくも、おとこのこやから。

    「リゼさん、」
    「ん~?」
    「リゼさん、近くない?」
    「だってとこちゃんあったかいから」
     
     リゼさんはそう言ってぼくの背中にさす、と顔をすり寄せた。人より優秀な鼻先が、アルコールの香りより先にお風呂上がりの香りを掴んで、それがまた、ぼくを困らせてしまう。

     出会った頃、付き合う前は指一本触れることすらなかなか許可してくれなかったリゼさんは、お付き合いを始めると今までのガードの固さはなんだったのか、と思えるほど距離が近くなった。手を繋いでくれるようになったし、キスだってさせてくれた。お泊りをする時はいっしょのベッドで寝させてくれるし、バイバイの時はハグもさせてくれるようになった。リゼさんの、ぼくよりちっさくて細い身体が好きで、ついいつも長く抱きしめてしまう。

     リゼさんの身体は少し冷たくて、けれどお酒を飲むと、少し熱くなる。ケルベロスで体温が高いぼくからするとそれでも少し低いくらい。その体温が、ぼくの背中にくっついている。
     これが、その、すごく、困る。

     付き合い始めて距離が近くなったとはいえ、いつもは大人としてぼくのことを色々気遣ってくれてるように思えるリゼさんだけど、お酒を飲んだ時は別だった。普段のしっかりした性格だとか、規則正しい生活スタイルがぐずぐずに溶けてしまったみたいに、ぼくにくっついてくる。無防備に、あっちこっちから。
     リゼさんがぼくにくっつくってことは、ぼくの身体にリゼさんの身体がくっついてくるってことなんよ、当たり前やけど。なぁリゼさん、ほんまに意味、わかってんのかなぁ。

     やらかくて、熱い身体。考えないようにしていても、あのことを思い出してしまう。
     リゼさんの身体はやらかい。ぼくとは全然ちがう。白い身体が、いつもより少し熱を持った色に染まってて、ぼくはそれが好きで。リゼさんの、少しかすれた声が好きで──。

    「とこちゃん」
    「なぁに」
    「……しないの?」
    「なにを」
    「キス」
    「……せぇへん」

     背中にくっつくのは飽きたみたいに、リゼさんがこちらを覗き込んで言う。これがべろべろに酔っててくれたならまだいいけど、意識がはっきりしている分タチが悪い。
     酔っ払いには手出したらあかんって、決めてんの。本当にしたいんかわからへんし、そういうのは合意の上で行うもんやし、あとで後悔させんのは、いややし。

    「そっかぁ」

     リゼさんがぼくの顔を覗き込んだまま、細い指先で前髪をわけてきた。目がちゃんと見えるようにする仕草。視界の端っこでリゼさんがほほ笑んでるのがわかる。

    「わたしは、したいんだけどなぁ」

     ずるいって、思う。あぁもう、ずるいずるい。大人って、ずるい。

    「……ぼくだって男なんよ、リゼさん」
     知っとるやろうけど。言ったらリゼさんが、ゆっくりぼくの頬にふれた。知ってるよって、言うみたいに。
     リゼさん、お酒飲んだら無防備になる、心配。拗ねるように言葉にすると、リゼさんが笑った。ぼくの下で。とこちゃんだからだよ、って。

     ほら、大人ってずるい。

    20210324
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    igarashi65

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