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    hukurou_love

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    朝頃に呟いていたネタで書いてみました。
    シャルぐだ♂です。

    ##シャルぐだ♂

    疲れたこいびとの労り方 そろそろ帰ってくる頃だろうか。
    藤丸立香は、どこかソワソワとした様子で電子時計をちらりと見遣った。最近よく軋む回転椅子にちょこんと座り、少しばかり頬を赤らめ、時々視線をふらふらとさ迷わせながら、ある人の帰りを待っている。立香と待ち人はあくまで恋人同士だが、まるで、旦那の帰りを健気に待つ新妻のような有様であった。
    さて、立香の待ち人...このカルデアに召喚されたシャルルマーニュは、強くなることにおいて貪欲だ。現時点で可能な限り霊基の強化を受けているが、それだけでは飽き足らず、日夜サーヴァント達と共に鍛錬に励んでいる。その結果、彼は、魔力放出による飛行、豊潤な魔力を活かした攻防一体の立ち回りなどの独自の戦闘技術を体得するに至った。だが、その鍛錬は、時に生身の人間であれば疲労で1日ぶっ倒れる程の過酷なものになるようで、サーヴァントの身であっても無事では済まないことがあった。
    具体的に言えば、シャルルは疲れた顔でマイルームに帰ってくるのである。かっこよくあることを信条としているシャルルが、マイルームにて立香と2人っきりになった途端、疲労を隠せなくなるのだ。立香は、そんな彼を出迎えて、彼の疲れを少しでも取ってやろうと奮闘するのが日課のひとつとなっていた。
    いつも、シャルルに守られて、大事に愛されている。けれど、自分だってシャルルを大事にしたいし、愛している。だから、自分に出来ることがあるのなら、力になりたい。
    常日頃は、人類最後のマスターとして、契約しているサーヴァント達には平等に接することを心がけているが、愛し合う仲にある人となると中々そうはいかないのが人間の性というもの。立香は一人の男として、己の中にある愛をシャルルに贈りたいのである。
    (まだかな...)
    そわそわ、立香は待ち続ける。いつもよりも落ち着きがない。なにせ、今日は少しばかり変わった策を用意しているのだ。早く帰ってきてほしいような、あともう少し時間がほしいような、なんとも言えない葛藤を胸に抱えていた...が。トントンとドアがノックされると、彼は弾かれたように立ち上がった。主のいなくなった回転椅子がクルクルと回る。
    「マスター、入ってもいいかい?」
    ドアの向こうから聞こえたのは、立香の待ち人の声。
    「いいよ!」
    待ってましたと言わんばかりに、立香が溌剌とした声で返事をすると、
    「それじゃ、失礼するぜ」
    パシュ、とドアを開け、愛しい人が姿を現した。
    男らしくハリのある声には微かに疲れの色が滲み、元々癖のある黒と白の髪は、心做しか普段よりも乱れている。シャルルは(己の信条もあって)情けない姿を晒すまいと努力する男だが、それでも疲労は隠しきれていない様子であった。
    「シャル、おかえり」
    そんな彼のもとに立香が駆け寄ると、シャルルは目を細めてふわりと微笑む。開いたドアは静かに閉まり、ここは完全にプライベートの空間となった。
    「あぁ、ただいま。立香」
    ふぅ、とため息を1つ。
    「お疲れ様」
    「...ん」
    こくりと頷いたが、反応が鈍い。シャルルの手を取るが、あまり力が入っておらず、握り返してこない。これは相当しごかれたと見ていいだろう。目に見えて弱っている。
    (...よし)
    勇気を出せ、藤丸立香。自分を奮い立たせる。
    「シャル」
    すう、と息を吸う。
    「疲れてるなら!お、俺の胸、揉む?」
    「な、っ」
    言い終えた途端、立香の頭の中に羞恥が駆け巡る。シャルルはというと、突然投げかけられたセリフを前に固まっていて、返事がない。
    そう、策とはまさにこのことだった。シャルを癒してやるにはどうしたらいいか、という立香の相談に対する「男のご機嫌取りなんざ、おっぱいを差し出せば充分ってもんよ!ほら、『大丈夫?おっぱい揉む?』ってやつですぞ!」という黒ひげの言葉を真剣に受け取った結果の行動である(同じ男として理解出来る部分があったからだ)。だが、シャルルの反応からして、この突飛な策は失敗したと言わざるを得ない。
    「...あ、あはは、な、なんちゃって...」
    気まずい沈黙に耐えられなくなった立香は、顔を真っ赤にして、先程の言葉をジョークにしようとしたのだが、帳消しにするにはインパクトが強すぎた。すう、とシャルルの表情が真剣なそれに変化していく。
    「...立香」
    がし、とシャルルが愛する人の肩を掴んだ。名を呼ぶ声は普段よりもトーンが低く、王としての姿のそれを彷彿とさせた。
    「は、はい...」
    その眼差しに、あぁ怒られる、と立香は身を縮こませた。
    「それは誰から教わったんだ?」
    「えぇと...」
    「...」
    「黒ひげから」
    「...そうか」
    ごめん、黒ひげ。立香は心の中で謝罪した。
    「あのな、立香」
    「...うん」
    「自分の体を安売りするんじゃない。もっと自分を大切にしてくれ」
    存外、その言葉と声色は柔らかく優しいものだった。間違いを犯したこいびとを躾けるのではなく、そっと言い聞かせるような。
    (自分を大切に、か)
    その言葉に、どれくらい応えられるのだろう。
    七つの世界を終わらせて、守るべき人理に拒絶されて。白紙化地球上をフラフラと彷徨いながら、いつか来る試練に備える日々。もう少年ではなくなっていたし、かつて仲良くしていた友人達や両親の声をもう思い出せなくなってしまった。体のあちこちに残る傷跡、微かに見える活性アンプルの注射痕は消えることはないし、きっとこれから先の戦いで増えていくのだろう。
    それでも、と立香は頷く。シャルルの青い瞳を見つめて、言葉を返す。
    「...わかった」
    「よし」
    立香の言葉にシャルルは頷くと、肩から両手を離した。神妙な顔つきの恋人の頭を撫でて宥めてやりながら、くすりと苦笑い。
    「俺のためにやったんだろう?」
    「...うん。君を癒したくて」
    「それなら、な」
    シャルルがふと体の力を抜き、立香に寄りかかる。立香が咄嗟にシャルルの背中に手を回すと、シャルルは彼の耳元で、
    「こうやって、抱きしめてくれ。俺はそれでいい」
    「!...もちろん!」
    ぎゅう、と抱きしめると、シャルルは心地よさそうに笑うのであった。

    その後、いい笑顔でティーチに話しかけるシャルルの姿が見られたとかなんとか。
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