幸せのおすそ分け 学園内のあちこちに花が咲き誇り、柔らかな青い空と心地よい風が吹く季節になった。いわゆる【春】というやつだろう。こちらの世界にも季節はきちんとあるようで寒さに震えていた時期を思い出すととてつもなく幸せに感じた。
「あったかい……このままお昼寝したい」
草むらに寝転んで指先に青々とした葉を絡めていると近くでグリムがため息をつくのが聞こえる。
「そんなことしている場合じゃないんだゾ。食料を見つけなきゃオレ達腹ペコで死んじまう」
「いざとなったら土下座してリドル先輩に頼んだらご飯やお菓子を恵んでくれるよ」
「何回も同じ手は使えないんだゾ」
学園裏の森にきて三十分。食べられる野草は一通り手に入れたしたんぽぽまで乱獲した。これで今日は凌げるが学園長から次の生活費が振り込まれるまで後二日、これではまだまだ足りない。もう寮には少しの米と調味料ぐらいしかないのだ。
6933