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    newbohyo

    @newbohyo
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    newbohyo

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    インドで再開するデイペペの進捗

    デイペペ 当たる夜風の肌寒さには覚えがある。この屈辱の空気を味わわされてきた回数は、幾度という言葉では収まらないだろう。
     世界の終焉が近くなる前の、このぐっと冷えこむ空気をペペロンチーノは好まない。しかも辺りはとても静かだ。
     静かなまま、荒れない夜であることは、ペペロンチーノにとっては致命的である。
     なぜならペペロンチーノの視線の先には、後ろ姿のカルデアのマスターとそれに詰問する女がいる。四神の一人、ウィリアム・テルの猛攻を前に矢面に立ち満身創痍になった、汎人類史に置いてはこの国の王妃だった女、ラクシュミー・バーイー。
     彼女がこの世界の仕組みについて黙秘している事実を説明させる約束をカルデアに取り付けたのは記憶に新しく、二人が夜半動き出したのを見て、これなら二人はそういう話を始めるのだろうと後をつけた。
     しかしいかんせん、悲しいくらいに二人の会話は荒れる気配が無い。だからペペロンチーノは人の目が無いことを良いことに、メイクが崩れるのも気に留めず唇を噛んでしまう。
     ほんの少しの意見の相違があれば良い。そうしたらペペロンチーノは、アルジュナを滅ぼせれば自分だけはこの異聞帯をどうにかできるチャンスがある、大令呪があるのだとラクシュミーに打ち明けられる。もし彼女がカルデア側との話し合いで異聞帯の処遇に不満を持ったなら手駒になる。そう踏んだから、尾行したというのに。それだけなのに。
     はあ、とペペロンチーノは壁に凭れて空を仰いだ。
     またしても詰みなのか、という思いを孕んだ嘆息は白い色をしている。考えていた策が全て上手く回らなければ、アルジュナを倒したあとの策は無い。
     空に浮かぶ星々を見て、キリシュタリア・ヴォーダイムの姿を思う。仮に生き残って捕虜として生き永らえたとしても彼を裏切る気は毛頭無い。
     彼を思い浮かべれば自然と連想してオフェリアの顔が浮かぶ。……かといって、彼女のように潔く死ぬ覚悟は自分にはできないのだけれど。
     監視していた二人は終始絶望的に静かなままだったが、彼らが歩き出した音でペペロンチーノは意識を向け直す。角度的にペペロンチーノからは二人の表情が窺えない。なのでペペロンチーノは視力を強化し、更に遠くに位置する場所で二人を見つめていたマシュへと視線を向けた。
     マシュの周りに浮かぶのは哀れみと安堵。
     つまり、話し合いは恙無く終わってしまった、ということ。
     
    (……残念。詰みね!)

     運が悪いのは生まれつきゆえ、こういうふうに一瞬で思い切りよく頭を切り替えないと生きていけなかった。
     即座に頭を切り替えたペペロンチーノは考える。
     さて、このまますぐに帰ればカルデアのマスターにもラクシュミーにもマシュにも訝しまれてしまうだろう。彼らが公会堂に入った頃を見計らってから帰らなければいけないだろうか。
     一旦彼らとは方向を変えと暫くどこかで待機しようと踵を返したペペロンチーノであったが、

    (――!?)

      ザワリ、肌が粟立つ。
     
     その手の魔術に長けた魔術師に視認された時のような感覚。
     原始の魔術に魅入られたのであれば最大限に警戒すべきはずだ。なのにペペロンチーノはすべてを見透かされるこの感覚が妙に体に馴染んで、その視線に対して抵抗する気は少しも湧かない。
     これは……まるで。
     そこまで考えて、いやいやまさか、と否定する。いや、だって、それはありえないとも思う。
     でも……とペペロンチーノは逡巡した。
     なにしろ彼は一度、そのありえないを飛び越えてしまった男なものだから。
     道端でカタンという物音がしたので、ペペロンチーノはその方向へ勢い良く振り向いた。
      
    「妙漣寺」
     
     ――居る筈のない人間がいる。

    「ウ…………」

     カリ・ユガを控え、屋台の連なる路地の一角、荒れた景観の幌の下に彼は居た。
     瑞々しさの欠片もなさそうな葡萄の房から実をもいでいるその人は、お一ついかがと言わんばかりに、ペペロンチーノへその実を一粒差し出してくる。
     
    「…………ッソぉぉぉぉ!? なんでココにいるのよ、デイビット!?」
     
     思わずペペロンチーノは、まだ記憶に新しい〝 ありえない〟ことが起きたときと同じ言葉を叫んでいた。
     デイビットは果実を差し出していた手を下ろし、代わりに素手でペペロンチーノに向かってぐんと腕を伸ばした。構える間もなく腕を捕まれ強引に幌の下へと引き込まれる。
      彼は至近距離で、シー、と人差し指を立てた。
     
    「静かに……。今オレがここにいるのがバレて、揉め事を起こすのは拙いんだ」

     言われたペペロンチーノは手で口を覆い努めて声量を潜めたが、それでも動転して声色が上ずることまでは抑えられない。
     
    「いや、だって、だって……ええ? アナタ、割と急いで自分の異聞地帯に戻っていったじゃないの……?」

     ペペロンチーノの窮地を察して地球の反対側から助力してきた男が、必要なことだけを言い残し、自らの異聞帯へ戻るために颯爽と消えたのはかなり前の事のはず。
     時間だからと言って別れた男だ。未だにインドに滞在しているというのは理屈に合わない。
     デイビットは遠くを見つめて、「車の精度を見誤った」と答えた。
     その言葉でペペロンチーノの頭に浮かぶのは、デイビットと共に現れた、サリーを着込みつつ狐耳や狐の尾を隠す様子すら無さそうな、運搬役の……対外的には異星の使者を名乗る悪女。
     
    「徳が足りないから運べないので少し待っていろ、などと土壇場で宣って、ここに途中下車をさせられた。あの女が徳とやらを積んで戻るまではここに居るしかない。座標はこの場所を指定されたものでな」

     さしものデイビットも肩をすくめる仕草をするが、絶対にそんなジェスチャーで片づけられるほど軽い問題では無い。
     ペペロンチーノは当事者ではないにも関わらず、動じない彼のぶんも動揺して青褪めた。
     
    「それって大問題じゃない! 異星の神にココにいることがバレたらどうする気!?」
    「お前と別れて五分後からずっとここに立っていたのに、気配に敏いお前がオレの存在に今の今まで気づかなかったんだぞ。問題無い」
    「私に気配遮断効いたって所詮私は人間じゃないの! 神に効くかなんて分かんないでしょ!? 言ったじゃないの、ここにおいてはここの神様は最強だってッ、……ていうか、ていうかよ。異星の神だってあんまり不在なら分かるかもしれないし、キリシュタリアに秘密にできなくない!? バレるかもしれなくない!? そんな冷静な顔してて良いワケぇ!?」
    「声が大きい。あの女の性質上、契約は必ず果たすから普通に帰れるさ。こうなったからには待つより他は無いだろう。それよりもだ、妙漣寺」
     
     ペペロンチーノは眉を八の字に歪めながら半泣きで彼の肩を揺らして急かすが、デイビットはそんな危機的状況にも関わらず、余裕の微笑みを浮かべた。

    「……これで再会を祝う余裕ができたな?」
    「……!」

     その一言は、デイビットに――
     〝 運命の王子様〟に恋しているペペロンチーノにとって、あまりにも甘美な誘惑だった。

     ◆

     ペペロンチーノにとっての運命の王子様は、王子様らしからず躊躇いなく屋台の商品を無銭飲食している。
     彼が王子なら姫でありたいペペロンチーノは、今ばかりは王子に対して盗人を見る胡乱な目つきをした。

    「ねえ」
     
     その一言で男は無銭飲食を咎める意図の先読みをしたらしい。

    「去る際には同価値のものを残していくから問題ない」
     
     嘯く男は、屋台の台に置かれたガラス瓶を持ち上げた。

    「…………」

     ペペロンチーノの胡乱な目つきはますます深まる。
     ペペロンチーノの故郷で馴染みのある、小銭で買える、プルタブを開けてすぐ飲める180mlの酒。その絵面に目が眩む。デイビットの顔面とのそぐわなさと来たら。

    「葡萄とこれが同価値ねえ……」
    「金額で言えば同等だぞ」

     有無を言わさず瓶を差し出されたペペロンチーノは、嫌嫌ながら、という気持ちを隠さずそれを受け取る。

    「再会を祝うんだ。祝いの席なら、乾杯くらいすべきだろう。義理だとしてもな」
    「……んもう」
     
     ペペロンチーノはプルタブを開け、デイビットがやる通りに同じ高さに酒を掲げる。

    「乾杯」
    「乾杯」
     
     カン、と硝子同士が打ち合った。
     
     ちびりと舐めてから、味に驚く。
      
    (なんだか癪ねぇ……) 
     
     自身の価値観に照らし合わせれば、祝い酒にしては安酒である。
     しかし、このインドはお茶と花しか取り立てた名産品が無いように発展した世界なので、強い酒というだけで強烈な娯楽になりえた。文明の発達具合を象徴した無難に美味い味がする。
     なんでこんなの持ってるの、とペペロンチーノが尋ねる間に、デイビットははやくも酒を飲み干していた。
     
    「コヤンスカヤからだ。待たせる詫びとして寄越された」
    「あのコも人の足元見てセッコい商売するわねぇ」

     デイビットは空になったガラス瓶を露店に置いた。
     自然由来の物の中に光る、絵付けが施されたガラスの図。その比較を目にした途端、ペペロンチーノの心にくすんだ思いが灯る。
     コヤンスカヤらしい悪辣な手だ。

    「この世界ではそんな高純度なガラスなんてまずもって無いから、そんなものがあると無駄な火種になっちゃうわねぇ。まったくもう、私の異聞帯に汎人類史の汚い文化広めようとするなんて」
    「私の異聞帯、な」

     笑みを型取りながら棘のある言葉を放ったペペロンチーノに対し、デイビットは意味深に言葉を切り、カップ酒をコートのポケットにしまおうとする。

    「ダメダメ! そんな場所に入れたら服が型崩れしちゃうわよ」
    「かといって他に入れる場所もない。おまえはこれをここに置いていくのが嫌なんだろう?」
    「アラ、アナタにしては察しが悪い。寄越して」

     ペペロンチーノはデイビットからガラス瓶を受け取ると、すぐさま高い場所から落として、魔術で強化したヒールで更に数回踏みつけた。
     瞬く間に粉々になったそれに対して仕上げに砂をかければ、ガラスの破片もただの石と変わらない。次いで深酒をする気もないからその上から自分の残った酒を注いでそのガラスを割り、同じことをしてパブリック・エネミーらしく平然と自分を培った文化の一部を踏みにじった。
     そうなる過程を具に見ていたデイビットは、破片とペペロンチーノの顔とを見比べながら顎に手を当てた。

    「多少心境に変化があったか? カルデアに所属していた時のお前なら、この状況において所有する異聞帯の未来の心配はしなかったはずだ。この酒を見たところでもう世界を諦めきっていたはずだし、汎人類史の文化を嬲る意欲も消えていたはずだ」
    「えー?」

     気のない返事をしつつ、ペペロンチーノは自分の状況を思い返してみる。
     アルジュナを倒したらカルデアが待ち受けている。
     サーヴァントもいない自分は単身だ。
     それまでに味方を増やせる確率は著しく低く、先程まではそれに焦っていたからこそこの場にいる。
     確かにこんな詰んでる状況なら、いつもなら彼の言うとおりはなから諦めていた。そもそも今頃は死んでいた可能性の方が高いだろう。

    「そうねえ……」
     
     けれど、ペペロンチーノは生きている。
     
    「強いて言うなら、あの時アナタが来てくれたからかしら。ついてない私が思いも寄らないラッキーで命拾いが出来ちゃったせいで、アラ? 案外私、まだまだワンチャンあるんじゃないかって思っちゃったのかもね?」

     らしくないけれど、そういうことだろう。
     或いは調子に乗っているとも言い変えられるかもしれない。

    「でもまたこうしてアナタと話しが出来るなんて、私にしては出来すぎよね。運をこれで使い果たしてなきゃいいけど」
    「調子に乗っているという言葉はここでは適さないな」

     へらりと自嘲していたはずが、彼は口に出していないほうの自嘲にかかったアドバイスを返す。

    「環境に適合した、と言うべきだ。それにおまえが生き延びるための執着心を得るのは、オレ個人にとっては好ましい……」

     ペペロンチーノに対しての好意を隠さない目に光が灯った王子様の微笑みに、ペペロンチーノは「うひゃあ」と黄色い声で唸った。
     これを見るたび思ってしまう。カルデアに居た時代、誰が言ったか無口、無表情、無感情の三無人間などと呼ばれていたデイビットだが、きっとそう噂した人間は彼の懐に入り込まずに彼を語ったに違いないと。
     ――そういう、表面でしか人を見ない文化も気持ち悪くて嫌いだ。

    「心を読むのは辞めてちょうだい。乙女のエチケットよ。その……私だってだいたいの感情は読める人だけど、読めても普段は口に出さないんだからぁ……」
    「ならおまえもオレの心を読めばいい。構わないぞオレは」
    「読んだって無駄じゃないのぉ、ううう」
     
     ぐるぐると混乱しながら文句を吐いてなお優しい笑みを浮かべ続ける彼を直視できず、ペペロンチーノの言葉はだんだんともごもごと不明瞭になっていき、目線も気まずさから自然と下に泳がせてしまう。

    「あら」
     
     その流れで、デイビットの右手が目についた。
     話の流れを変える契機になるだろうと踏んだペペロンチーノは、一点明るい口調で改めてデイビットに話しかける。

    「デイビット、アナタの令呪ってすごい形してるわね」
    「……? 見せたことが無かったか?」
    「そりゃそうよ。私達に令呪が発現したの、異星の神に各地に飛ばされたあとサーヴァントと契約してからじゃない。第一みんな手袋してるし」
    「オレはこの通りだがな」
    「だとしても、私達の通信画面は肘より下が映らないんだもの」

     よってペペロンチーノが彼の令呪を見たのはこれが初めてだった。
     デイビットもまたペペロンチーノの右手を見つめる。令呪の形など気にすることの程でもないと考えていたが、と前置きを挟みつつ、視線が長くそこにあるのでペペロンチーノは察してしまう。

    「もしかして、私のものも見たいのね?」

     彼は興味が無い情報に対しては視線を露ほども向けないが、ひとたび関心を得ると視線をちっとも逸らさないという癖があり、熱視線と呼んでも過言ではないそれに、手といえど少し照れくさい気持ちになる。
     ペペロンチーノの両手は黒い手袋に包まれているため、左手で右手の手袋を脱がせてから、デイビットに見えるように手の甲を向けた。
     
    「おまえの令呪は対称性があるな。三画目など、まるで絵のようだ」

     デイビットはしげしげと眺め続けたが、まだ飽きないらしい。

    「もっと近くで見たい」
     
     咄嗟のことに構えることが無かったペペロンチーノの剥き出しの右手を包み、自らの顔の近くまで引き寄せる。
     そしてペペロンチーノの令呪で一番規格外な部分、唇の形をした角を念入りに指でなぞりながら、

    「特徴的な形だ」

     お前らしい。
     今度は手では無く、ペペロンチーノ自身と目を合わせながら言った。
     その仕草にカッと顔が熱くなる。ペペロンチーノは咄嗟に恋していると丸わかりだろう表情を左手で覆って、酔いが回ったと赤面の言い訳をしながら彼から離れようとして――

    「……でしょ?」
      
     踏み留まった。
     らしくない。
     らしくないが、ペペロンチーノは意を決する。むしろ自分から更に一歩、デイビットの元に足を踏み込んだのだ。
     彼の手の中に納まった自らの手をひっくり返して、彼の手を握り返し、彼の目も見つめ返す。

    「デイビット。せっかくだし、再会のお祝いをおねだりしたいわ。構わない?」
       
     今までどおり諦めきって想いを隠したところで、どうせ会うのはこれが最後だ。これが生身のデイビットと会える最後の機会なのだ。
     そう思ったら、諦めたままで止まるなんて馬鹿らしい。
     
    「キス、してほしいの」

     そのワガママを言われたデイビットは、彼にしては珍しく、きょと、と面食らった顔をしていた。

    「令呪がどういう基準でこんな形になるかは分からないけど、唇の形をしているのを見て、わりと願望が現れるんじゃないかって思ったのよね」
    「意外だ」
     
     キスして欲しいと強請った事にだろうか。それともキスをしたいという願望をペペロンチーノが抱えていたと暴露した事にだろうか。いつものペペロンチーノなら初めて見るその顔に指を指して冗談よと身を翻すところだが、今はそんな余裕は無い。
     断られたらどうしようという危惧に緊張したペペロンチーノは、握った手に更に力を込めてしまう。

    「嘘言わないでよ。私がアナタのことが好きなのもキスをしたかったのも知らなかった筈が無いわ。アナタなんだもの」
    「オレの所感では、お前はその言葉を一生言わないと思っていた」

     知っていたと言ったも同然の言葉に、やっぱりね、と肩を竦めた。
     
    「ま、私も普通に死ぬってだけなら、アナタの負担になりたくないし言うつもりは無かったわ。ただこの異聞帯ったら酷いし、いやらしくって」

     ペペロンチーノはこの世界の神についてとうとうと説明する。
     完璧な神であるアルジュナは、ユガが輪廻するたび、世界から不要とされるものを剪定する。
     自分は何回も何回も何回も、そうして振り分けられる恐怖に耐えてきた。
     ユガのたびに自分という存在が不要とされ、世界から消えて無くなるかもしれないという恐怖は常にある。しかしたとえ消え去ることになろうとも、本来のペペロンチーノであれば生き抜くところまで生き抜いた、と消失を諦めながら受け入れてしまえていただろう。
     ただこの神の厄介なところは。

    「生命だけを消すわけじゃないの。あの神はね、生きている人間の中にある、正しい世界に不要な思い出も消し去る力を持ってるの」

     本当にらしくない。
     声を裏返して喚きながら、涙が出そうになるなんて。

    「だからユガが巡るたび、デイビットが好きって気持ちが無くならないか震えていたわ。もし消えていたとしても、私自身は気づけないのですって。私は誰にもこの気持ちを教えてない。だから私が〝 忘れた〟としても、忘れたということすら気づかないまま、誰にも残らず恋が終わるってことじゃない。私の最後の人生が、そんなつまらない私で終わるのよ?」
    「妙漣寺」
    「あの時アナタが助けてくれなくても、アナタが好きなまま死ねるならいい終わり方かもしれない、とか思ってたの。なのにアナタが、諦めてたのに、助けてくれちゃうものだから…」

     詰るような言葉を言いかけて、唇を噛んで頭を振った。
       
    「……嬉しかったから。アナタは悪くないわ。だけど、そのせいで私は今後も消える恐怖に怯えなくちゃいけなくなったのも事実なの」
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