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    takayoshi2222

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    takayoshi2222

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    昨日書いた創作BL(後半)
    読み直してません

    #創作BL
    creationOfBl

    「終わり?」
    「…はい、終わりです。ありがとうございました」
    細く長いため息をついて、キャップを被せる。梁はケラケラと「くすぐったかったあ」と笑い、背中を摩る。最後の数行のインクが掠れたが、別に動揺はしなかった。
    書き終わって、ただ安心していた。
    彼の仮説は当たっていたようだ。
    また一つ、恩が増えてしまった。
    「どうなってる?撮って撮って」
    「え、えっと」
    「撮り方分かんない?ここ押すだけ。こう!はい!」
    「あ、はい。はい、チーズ…」
    「いえーい」
    はしゃぐ梁に携帯を手渡され、写真を撮る。随分ご機嫌だ。そんなに喜ぶことだろうか。むしろ迷惑に感じるものでは…。
    「あ、アハハ。すげ〜何これ!ぎっちり!読めね〜」
    「今日は、書くことが多くて…」
    「そっかあ。まあそうだよね。あはは」
    彼はしばらく写真を眺めていたが、満足したのか携帯をしまい、服を着た。
    そして大日の左手を掴む。
    「じゃ、終わったことだし行こっかあ」
    「えっ」
    「一緒に行くって言ったじゃん。忘れたの?」
    「あ、いや」
    咄嗟に否定するが、丸っきり頭から抜け落ちていた。先程の行為の衝撃が大きすぎて。
    というか、自分達は一体何をやっていたのだろう。こんな往来のど真ん中で。人通りがそこまでないとはいえ、全くないわけではない。何人かには見られただろう。不審者と思われたかもしれない。いや、ただの酔っ払いと思われたろうな。
    ……。
    ため息が出そうになった。
    「立って」
    「は、はい」
    「これから行くとこね、怖いところじゃないからね。大丈夫」
    「…はあ…」
    病院の待合室で怯える子供を気遣うような、優しげな声で言われる。そんなに不安げに見えるだろうか。
    先ほども言ったが、大日は三十路も近い大の男で、梁とは八つも年嵩なのだ。だと言うのに歳を聞く前と扱いが変わらないので、大日は座りが悪い。年上を敬えとは言わないが、子供のような扱いは反応に困る。
    「定助サンはね、よく知ってるところだよ」
    「えっ。私が?」
    「うん。…あれ?わたし?」
    「?」
    「さっき僕ってゆってたのに」
    握られた手に変な力が篭もる。そんなことを言っていたか。また顔が熱くなる気がした。
    「…それでは子供っぽいですから、私と言っています」
    「えー、僕の方がかわいかったのに」
    「かわ、…」
    こんな男に言うことじゃないだろう。
    そう言い返そうとしたが、突然彼が振り返ったので口を閉じてしまった。どうも彼の行動は唐突である。
    「定助サンってお金持ちなの?」
    「えっ」
    サッと血の気が引く。やはり、金銭を求められるのだろうか。
    「サッちゃんが、いいとこの人でしょって言ってた。着物着てると、そうなの?」
    「サッちゃん」
    「さっきのおばちゃん」
    「ああ…、ゴホン。まゆかくん。女性と言った方がいいですよ」
    「?さっきのじょせい」
    「うん」
    意外と素直だ。
    「えっと…そうですね、着物を着ているからと言ってお金があるとは限らないし、私もそんな大層な金持ちじゃありません」
    「そうなの」
    「そうです。スーツを着ているお金持ちもおりますでしょ。トランプ大統領とか」
    「トランプ?ポーカーのやつ?」
    「?えっと…ポーカーが分かりませんが、違います。ううん、あと誰かな…」
    「あっ。俺知ってるかも」
    「どなた?」
    「えと…ポール・スミス?だっけ。高い服屋の社長」
    「ああ、お洋服とか財布とか売ってるところですね。そう、そんな感じ」
    「あーホントだ〜。あの人スーツ着てるや」
    「うふふ。そうでしょ」
    大日は梁と顔を見合わせてウフウフ笑って、またハッとした。したが、直ぐに諦めた。ここでどうのこうの言っても、きっとはぐらかされて連れて行かれる気がするのだ。自分はおっとりしているから、余計そんな気がする。どうせ抗っても無駄なら、こうやってなるべく穏やかに事を運ぶことに専念した方がいい。
    「?どしたの」
    「…いいえ、なにでもありませんよ」
    「ふうん」
    梁はキョトンとして前を向いた。その表情は丸っこくて、こちらを害そうとしているようには見えない。今のところは、きっと大丈夫。
    「私も質問してもいいですか?」
    「!うん。なあに?」
    梁の顔がパッと華やぐ。猫撫で声に近いトーンに擽ったくなりながら言葉を続ける。
    「まゆかくんは、学生さんですか?」
    「んーん。働いてるー」
    「そうなんですね。さっきのお店で?」
    「違う。今日はね、3軒先のタトゥーの店。サッちゃんとこは先週」
    「?先週、辞めちゃったんですか?」
    「え?辞めてないよ」
    「??えっと……」
    「今日はケンジのとこで機材運びしてー、サッちゃんとこではボーイ兼用心棒!みたいな。他でも荷物運びとか用心棒とか、そういうことしてる」
    「ええっとつまり、いろんなお店と契約してるんですか?」
    「うん!多分そう!」
    梁はとりあえずと言った感じで笑った。
    つまり、何だろう。町の便利屋さんのようなものだろうか。
    「万屋のようなものかしら…」
    「かしら?うふふ」
    「?ふふ…」
    「えへへ」
    会話は噛み合わないが、彼は機嫌よくニコニコしている。ので、何となくつられて大日も笑顔になる。この青年の笑顔は、何だかそういう作用があった。
    「定助サンはっ?」
    「私ですか?」
    「学生さんですかっ?」
    はっ↑と歌うようにはね上げて梁が言うので、大日は笑いながら答えてやる。
    「私は、しがない文字書きです」
    「文字書き?」
    「自分で言うのも恥ずかしいですが…小説家です。作家というやつです」
    「小説家。本書くひと?」
    「そう」
    「わあ。すげえ、頭いいんだあ」
    「そんなこと」
    「ペンネームは?」
    「駆け出しですから知らないと思いますよ」
    「知ってるかも」
    「……萩原…」
    「はぎわら」
    「はるのり…おてんとさまの日に、乗る、と書いて…。知らないでしょ、こんな名前」
    袖で口許を多いながら誤魔化し笑う。
    梁はピタッと足を止め、ぐるりと眼球を回し……「知ってるかも」と再度呟いた。
    「え。えっ?嘘でしょう」
    「萩原日乗、でしょ。えっと…日記の連載…してたでしょ?」
    「えっ」
    「ん〜…そう!2年?まえ?くらいに…あの、雑誌で、後ろあたりのページで。でしょ?」
    「な、なんで知ってるんですか」
    「だって読んでたもん」
    もん。もんと来た。
    「読んでたのですか」
    「俺、ちょうどその時期本読むのハマってたんだあ。うわあ、なんか、こういうの、なんて言うの?先生」
    「あ…え?何でしょうかね。せ、青天の霹靂?」
    言ってから後悔する。何が青天の霹靂だ。なんて詰まらない、ありきたりな言い回し。
    だけど彼は開けっ放しの窓のように笑った。
    「聞いたことある!いいなあそれ。今度つかお」
    「…ちゃんと意味も調べておくと、良いですよ…」
    苦し紛れに小説家らしきことを言っておく。
    「じゃ、意味は?教えてよ」
    「……思いがけない出来事が、突然起こることを言います。中国の故事成語…昔話から来た言葉です。霹靂とは雷のこと、青空から突然雷が降り出すことから、そう言います」
    「へー…学校の先生みたい」
    彼はまた笑う。教師は、自分には向かない仕事の一つだ。人前に立つことも、人を束ねることも自分にはできない。子供の手本になるような人間でも、ない。
    「本は、どんなものを読みました?」
    「んー、まず有名なの読もうと思って。友達に聞いたら、『はらぺこあおむし』でも読めばって言われて」
    「あ、ふふ。あれですか。いいですねえ」
    どう見ても対象年齢から大きく外れているが、梁は神妙な顔で頷いた。
    「うん、面白かった。ページがさ、伸びたり穴が空いたりしてて」
    「ええ、工夫されてますよね」
    「うん。次はね、えと……『河童』」
    「『河童』。芥川龍之介の?」
    突然ジャンルが飛んだ。難易度も格段に上がっている。
    「そーそー。社長にオススメされたの。でも漢字も言葉も難しかったからさあ、近所の人に聞いたり辞書引いたりしながら読んでたら1ヶ月かかっちゃった」
    「あらまあ」
    大日は驚いた。あの短い話にかけた期間もさることながら、そこまでの手間を惜しまずちゃんと読み切った、その根気に感心したのだ。
    昨今は小説離れも叫ばれ、書籍の発行部数も年々減る一方だと言うのに。
    この若者の何たる健気なことか。
    一端の作家として、何だかもう、この話だけでこの青年に絆されてしまいそうだった。奇妙な男だと思っていたが、意外と良い子なのかもしれない。人間、第一印象だけでは分からない側面もあるもの。自分はただ、目につきやすい変わった面を見てそう感じただけやもしれぬ。
    大日はニコニコそう考えて、(頭に手が届かないので)青年の背中をゆるゆる撫でた。撫でられた梁は、よく分かっていない顔のままニコニコする。ほら、こういう所だって年下らしくて可愛らしいじゃないか。
    「定助サンってさあ」
    「はい?」
    「ちょろくてかわいいねっ」
    「…?ちょろ……」
    「くく。だって、嘘かもしんないじゃん、今の話」
    「は…、え?嘘?」
    「あはは」
    梁は背中を丸めて笑った。
    頭が真っ白になる。先ほどの、和やかな気持ちが霧散する。
    嘘?今の話が?
    「定助サンが自分のこと小説家って言ったんでしょ。なら、それに合わせてこういう話すれば気を許すでしょ。そう思わなかった?」
    「あ…」
    た、たしかに。
    大日はポカンと口を開けた。
    確かに、話が出来すぎている。日記の連載までは、連載期間も言い当てられたし本当だろう。きっと雑誌を立ち読みでもした時に見つけたのだろう。
    でも、その後は?挙げられた絵本なんて、日本の子供の半分以上は読んだことがあるはずだ。『河童』だって教科書なんかに載っているかもしれないし、そもそも彼はその内容に触れていない。
    やられた。
    思わず鋭い目つきで彼を見上げると、彼は慌てる様子もなく「違うよお」と言う。
    「話はホント!けど定助サン、あんまり簡単に信じるからさあ。あー、おもしろ…」
    「面白いですって?面白いでしょうよ、年嵩の男が浮き足立つのを眺めるのは…」
    「あ。あーほら、やっぱり定助サンめんどっちい。かわいー」
    ガッと頭をボールのように掴まれ、グラグラ揺すられる。驚いて手首を掴むが、力の差がありすぎて身体ごと揺れ始める。酔いそうになって「やめ、やめてください」と叫べば呆気なく手は離れた。
    「あっフラフラしてる。三半規管よわいね」
    「頭を揺らされれば、誰だってこうなります、よ…」
    「ふふふ」
    流れるようにふらつく体を背後から支えられ、思わず肩が跳ねる。見上げると、意外と近くに顔があった。細められた両眼に息を呑む。
    「こんなに弱っちいのに」
    手を回された肩がギシッと軋んだ。痛みに顔を歪めれば、彼は笑みを深めた。
    「はは。なんで俺の隣にいられるの?」
    「、」
    「なんで俺とヘラヘラおしゃべりしてんの」
    「ま、」
    「いつのまにか名前呼びだし?」
    「…」
    「…あ。怒ってないよ。怒ってない。俺は嬉しいよ?ただ、あんた度胸あるねって話。褒めてるの!」
    「……褒めて……」
    「そう。無謀だね。無神経だね。無邪気なくらい無防備。でも、定助サンはそれでいいんだよ」
    「……」
    「はあ…。あはは。かわいいなあ。かわいい。付き合ってほしーくらい、すき。すっごいすき。ふふふ」
    痛いくらい、痛いほど抱き締められる。こめかみに男の頬が押しつけられた。体温が、高い。
    これは本当なのだろうか。やっぱり嘘?信じた様子を見せれば、先ほどのように笑われるだろうか。
    離す気がないような掌を見て、思う。
    笑われるなら、その方がマシだ。
    この男、やはりおかしい。
    「ねー、付き合わない?いや?やっぱ出会ってすぐは無理?」
    「……そう、ですね…」
    「んー?」
    男は首を傾げてこちらを覗き込んでくる。
    「申し訳ありませんが、私は男なので」
    「?うん」
    「どちらかと言うと、女性の方が好きです。交際関係が必ずしもそういうことを含むとは言いませんが、私は君とそういうことはできません。歳の差もありますし、ジェネレーションギャップもありましょう。世間話をしても話が噛み合わないこともあるでしょう。まして趣味のない男ですから、私の話を聞いてもつまらないと思うことは多いかと」
    「うん……えっ?何今の」
    「?ですから、その…交際を断るに当たって、理由を」
    「説明したの?」
    「は、はい。ご理解いただけるかと思って…」
    「……ブフッ」
    梁は真顔で噴き出した後、ゆっくりと手を外し、蹲った。
    そして爆発的に笑い出した。
    「な、なんで説明したのお!?」
    「いや、それは、ですから。理解していただきたいと思って…」
    「こ、こんな風に振られたの、俺、初めてえ。ひい、ひーくるしい」
    「ご、ごめんなさい」
    「あはははは。ちょ、ちょっと、いま喋んないで、呼吸困難なる……ゲホッ。ハア、あははは」
    「えっと……私、帰ってもいいでしょうか」
    「だ、ダメッ。やだ、行かないでよ。げほ、い、今、息整えっから…。……はー、…よし。ふふっ」
    「余韻が残ってますよ」
    「やめて!これ以上はヤバい、腹筋つる。あのね、分かった。言うね」
    梁は左手を突き出し、右手で口を覆い数秒俯いた。
    「はあ」
    「ふう。あのね、さっき連れてくって行ったの、嘘」
    「あ、あれもですかッ?」
    「うん。あのね、まあ嘘っていうか、嘘とも言えないんだけど。今向かってるの、定助サンのおうち」
    「おうち……?」
    「保険証、ね」
    彼の短い言葉で思い出す。確かに、万が一のための保険証にはちゃんと住所も記載されている。財布を抜き取られた時、中身も見られていたのだ。
    「な、なんだ……家…」
    ホッとして知らぬ間に入っていた肩の力を抜くが、すぐに思い直す。
    違う。これは、つまり住所を押えられたということだ。全く状況は変わっていない。むしろ悪化したと言ってもいい。
    強ばった大日に、梁はうんうんと頷く。
    「定助サンにそれくらいの判断能力があって良かった」
    「私のことをなんだと思っているのですか」
    「小学生」
    「……」
    「ふふふ。でも今日は何もしないよ。ホントに家に送るだけ。ただの親切心」
    「………」
    今日は。
    ということは明日以降は何がするのだろう。
    家を開け渡せ、とか言われたりするのだろうか。お礼として不動産を、みたいな…。こういうアンダーグラウンドな世界は、日常でも仕事でも関わらないから全く分からない。昼間にテレビをつけるとやっている推理ドラマで得た知識しか……せめてもっと真面目に見ておけばよかった……。
    「もーお金とか言わないから!そんな深刻そうな顔しないでよ…」
    梁が面倒そうに言う。そんなことを言われても、嘘だの本当だのと散々振り回してくる人間を信用できない。大日の顔が晴れないのを見て、梁は「もー」と呟き、再びその手を引っ張って歩き始めた。歩幅は狭い。
    「あのね、俺、付き合えないなら定助サンとお友達になりたいなあ。どう?ダメ?」
    「お友達……」
    それは、金を搾り取ったりするような、一方的な…。
    「普通の!友達!えっと…なに?ダチだよダチ。お金とかなし!あ、奢ったり奢られたりはあり」
    「はい、はい。分かりました。普通のね…」
    「ちょっとお、そういう言い方ヤダ!」
    「ふふ。そうですか」
    「そうですー。…あ、ここらへんまで来たら分かるでしょ」
    梁に言われ、街灯にぼんやり照らされた道の向こうを見る。確かに、もう家の近くまで来ていた。この辺りからなら歩いて五分ほどで着くことが出来る。
    ぼうっと風景を眺めていると、繋いでいた左手がゆるく後ろに引かれる。右手の主は、ゆらっと首を傾げた。
    「またおしゃべりしてね」
    「……」
    はい勿論と口が滑りそうになった。
    それほどに彼は無邪気だ。
    自分は…誠に遺憾ながら、近寄ってはいけない人種に詳しい、と自負している。だから経験的に、直感的に分かる。
    この男は、そういう人種だ。
    本来出会うべきではなかったし、助けられるべきではなかったし、言葉を交わすべきではなかった。
    しかし。…
    前髪の隙間から彼を見上げる。
    残念なことに、僕も。
    頭のおかしい人種だ。
    「…赤の他人から、始めさせてください」
    「あはは」
    男はカラッと笑ってみせた。
    「友達は皆そんなもんだよ」
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    takayoshi2222

    DONE昨日書いた創作BL(後半)
    読み直してません
    「終わり?」
    「…はい、終わりです。ありがとうございました」
    細く長いため息をついて、キャップを被せる。梁はケラケラと「くすぐったかったあ」と笑い、背中を摩る。最後の数行のインクが掠れたが、別に動揺はしなかった。
    書き終わって、ただ安心していた。
    彼の仮説は当たっていたようだ。
    また一つ、恩が増えてしまった。
    「どうなってる?撮って撮って」
    「え、えっと」
    「撮り方分かんない?ここ押すだけ。こう!はい!」
    「あ、はい。はい、チーズ…」
    「いえーい」
    はしゃぐ梁に携帯を手渡され、写真を撮る。随分ご機嫌だ。そんなに喜ぶことだろうか。むしろ迷惑に感じるものでは…。
    「あ、アハハ。すげ〜何これ!ぎっちり!読めね〜」
    「今日は、書くことが多くて…」
    「そっかあ。まあそうだよね。あはは」
    彼はしばらく写真を眺めていたが、満足したのか携帯をしまい、服を着た。
    そして大日の左手を掴む。
    「じゃ、終わったことだし行こっかあ」
    「えっ」
    「一緒に行くって言ったじゃん。忘れたの?」
    「あ、いや」
    咄嗟に否定するが、丸っきり頭から抜け落ちていた。先程の行為の衝撃が大きすぎて。
    というか、自分達は一体何をやって 6635

    takayoshi2222

    DONE昨日書いた創作BL(前半)
    ちょっとおかしい男×日記を書かなきゃいけない強迫症の作家
    酸素が、薄い気がする。
    ここはどこだ。近所を歩いていたはずなのに。
    口が無為に開閉した。肺は苦しいままだ。
    昼に家を出て、日課の散歩をしていたのに、いつのまにこんな時間に、こんな所まで来てしまったのだろう。少ない体力は既に尽きて、焦りだけが重い足を動かす。日は既に落ちて暗く、色とりどりのよく分からない光が霞んだ視界に主張してくる。
    人が多い。騒がしい場所は苦手なのに。
    本当に嫌だ。何故自分がこんな目に遭わなければいけないのか。ああ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。…
    目眩がして咄嗟に何かに掴まる。頭上から何か聞こえた気がする。分からない。
    視界がチカチカして、方向感覚も危うかった。その何かは布を纏っていて、その布を力の入らない手で握り締める。先ほどから冷や汗が止まらない。濡らしてしまったらどうしようか、と頭の片隅でそんなことを考える。
    腕に何かが触れる。
    「え。えー。何?誰?」
    「…ひゅ、ひっ」
    頬を叩かれて、顔を持ち上げる。奇抜な格好をした男が見下ろしていた。大日はその男にハッと目を奪われた。白く傷んだ髪をサングラスでかきあげ、無邪気にこちらを見る、その両眼。暗い煤竹色と透き通ったみ空色の、ヘテロ 5787

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