そういうところが猫ちゃん すり、と手元に擦り寄ってくる毛並み。司は限界だった。
「類……」
司の視線の先、膝の上には類の頭があった。
唐突に猫耳と尻尾が生え、声も猫のようになってしまった類。途中までは実験と称し、音の聞こえる距離だとか猫じゃらしの効果だとかを調べていたのに、急にくたりと司に寄りかかってきたのだ。
「猫の本能に負けおって」
猫じゃらしに夢中になっていた時の類は可愛らしく、本人も楽しそうだから良いか、と思っていた。しかし今、類の意思ではないのに、この擦り寄る猫を可愛がって良いものか。
髪を司の手に擦り付けてゴロゴロと喉を鳴らす様子は完全に猫だが、身体は人間なのだ。喉を撫でて喜ぶか分からないし、本当の猫のように人から触れるのは嫌がるかもしれない。
と、司が逡巡していると、類がごろんと身体を仰向けにして目を合わせた。そして一鳴き、にゃあ、と。
「類?」
手を握って、指を一本ずつ揉んで。鋭い瞳孔の目を細め、まだ分からないのか、とでも言うように。
「お、お前ーっ!」
どこからが猫でどこからが類なのか。司にはよく分からなかったが、抑えることもなかろうと頭のタガを外した。