光が差していた 人と人の間には壁がある。それを知って何年か。
一人が好きだ、と口にして、その言葉が溶け込んで。気づけば僕は壁を塗りこめて、厚くすることが止められなくなっていた。
「推薦するメンバーを……」
僕が彼女を壁の上まで持ち上げると、彼女はそのまま跨いで行く。
壁に背を向けて、遠くを眺める。背後から聞こえる歓迎の声は明るいが、向こうに行った彼女がどうなるのか僕には知る由もない。
そう思っていたのだけれど。
「類!」
真っ直ぐな声に振り向くと壁にヒビが入っていた。割れた隙間からは色とりどりの光が差している。あとは僕が壁を押し割ればいいだけだった。
そうして僕はここにいる。
君がいたから、この境界線を踏み出せた。
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