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    blumeV0511

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    #オフェ納真ん中バースデー

    テーマ:ピクニック!!
    ふたりに幸あれ!




    (文中飲酒法律は昔住んでた州を参考にしているため、法律を違反する行為を助長する目的はありません。ご理解ください)

    きっとこの日は忘れない風が優しく吹き抜ける。新しい葉は緑を色濃くし心地よい風音を立てて揺れている。

    「ピクニック日和ですね」

    まだ小鳥が朝を告げたばかりのさわやかな朝。ウォークアウトからかえってきて、シャワーを浴び、キッチンで一息ついていたら静かな声が背中に投げかけられた。
    ウィリアムは声の主を見てにっこりと笑う。そう、そうなのだ。今日は最高のピクニック日和だ。

    「イソップ!起きてたのか」
    「えぇ、冷えたベッドで寝れなくなりまして」
    「ははっ、悪かったって。ダーリン?」
    「あなた特製のモーニングティーを入れてくれるのなら許します」

    クスクスと笑う恋人のなんて可愛いことか。ここまで心を許してくれるまでには相当な時間を要したが、その過ぎ去った時間さえウィリアムにとっては宝物のようなものだった。
    細い腰を抱き寄せて、自分とは違う雪肌に唇を落とす。

    「じゃぁ、オレはイソップの作るポーチドエッグが食べたいな」
    「よろこんで、ハニー」

    あぁ、甘い。彼がこんなノリに付き合ってくれるなんて。あの惨憺たる過去を過ごした奴等が知ったなら驚愕で顎が外れるかもしれない。

    「次いでにランチの用意も一緒にしてしまいましょうか?」
    「そうだな。ウォークアウトの帰りにローズベーカリーでバケットを買ってきたんだ」
    「焼きたてのいい香りがしていました」
    「昨日の残りのローストビーフでサンドイッチを作ろう」

    ウィリアムの提案にイソップはいいですねと笑いながら小鍋でウィリアムのためのポーチドエッグを作る。ウィリアムはそれを見ながら自分も彼のための紅茶の用意をした。
    曲がりなりにも英国紳士。丁寧なイソップほどの腕はなくても彼好みの紅茶を入れるために繊細なティーポットを扱うくらいは、この武骨で大きな手でもできるからなとウィリアムはイソップがここ最近気に入ってブレンドしたモーニングティーの茶葉を取り出す。

    「ワイン?それともエール?」
    「熱くなりそうだし、エールを冷やしていこう」
    「いいですね」

    ウィリアムとイソップは二人で時折額を寄せ合い、頬を寄せ合い、キスをしながら今日が最高の日になるようにと準備をした。

    大きめのピクニックバスケットの内側には赤いギンガムチェックの布張りになっていて、蓋の部分には揃いのカトラリー。
    朝食の最中に下準備をしたランチを、朝食後、食器洗濯機にウィリアムがお皿を片付けている間にイソップが丁寧に締まっていく。

    焼きたてのバケットで作ったローストビーフサンド。ローストビーフがたっぷり入っている方が、ウィリアムで控えめがイソップのだ。
    それからよく磨かれたリンゴに、お互いが好きなチップスのランチパックを二袋。
    ウィリアムはサワークリームオニオンがお気に入りで、イソップはソルト&ヴィネガーが好みだった。

    「イソップ、行く途中にパティスリーによって焼き菓子も買おう」
    「では保温タンブラーももってコーヒーも淹れてもらいましょう」
    「あのパティスリーのハンドドリップのコーヒーはうまいよな」
    「えぇ、紅茶派ではありますがあそこのコーヒーは別格です」

    ランチの用意は完了。
    あとは柔らかな芝生に敷くためのマットにブランケット。
    それから……ウィリアムはチラリとまだキッチンでクーラーボックスの用意をしているイソップを盗み見る。彼に気が付かれないように……この日のために用意していたプレゼントを、ランチマットを積むとイソップに宣言し、こっそりと車の中に隠した。

    今日は家の近くの公園から少しだけ離れたところに行く。
    徒歩でも行ける公園とは違い、車を使って移動するのは少しだけ特別な気分になる。
    車社会に慣れきってはいるが、それだって特別だ。
    車の窓ガラスに、幼い子供みたいに浮かれた顔をしている自分が映っていてウィリアムは少しだけ気恥ずかしくなった。
    キッチンからイソップが呼ぶ声がする。ウィリアムは慌ててキッチンに戻り、彼がエールをつめたクーラーボックスと、ランチバスケットを持つ。

    「あ、僕も運べるのに」
    「いいから、イソップは車へ乗って」

    今から出かけたらちょうどよい時間につきそうだ。ウィリアムの言葉にイソップは素直に助手席のドアを開け、腰を下ろす。バックミラーに上機嫌な顔をしてトランクに荷物をしまうウィリアムが映っていて、イソップは自分もつられて笑顔になっていることに気が付いて頬を擦った。

    「ん?どした?イソップ」

    いつの間にか運転席に座ったウィリアムがイソップに声をかける。彼の暖かな声はいつだってイソップを心地よくさせた。


    車は軽快に走り出す。
    少し窓を開けると、心地よい風が車の中を吹き抜けていく。適当なラジオを流し、ホップソングが二人の会話を邪魔しない程度に盛り上げる。
    知っている歌をウィリアムが時折口ずさみ、イソップはその歌声にクスクスと笑う。
    途中で朝の計画通り、二人のお気に入りのパティスリーでタンブラーにコーヒーを入れてもらい、
    ウィリアムはチョコチップにバタークリームの乗ったマフィンを、イソップはラズベリーとクリームチーズのマフィンを買った。

    いつも車で出かける道のりとは違う道を進むドライブはあっという間に過ぎていく。
    十分に楽しいその時間だが、メインイベントはこれからなのだ。

    「結構いっぱい駐車されているね」
    「だなぁー。奥のパーキングなら空いてるかな」

    今日は本当に良い天気だからか、公園の周りの路上パーキングはすでにいっぱいで、
    公園内のパーキングも便利な位置かすでに埋まっている。
    それでも膨大な敷地だから、少し公園の入り口から遠くに行けばすぐに駐車スペースは見つかった。
    イソップがランチバスケットを、ウィリアムがマット類とクーラーボックスをもって歩いた。

    「スプリングフェスタやってたんだな」
    「天気以上の人並の理由がわかりましたね」

    この公園はバラが美しいことでも有名で、初夏に向かうこの時期は色とりどり様々なバラが香しく咲き誇っている。いくつもある薔薇園ではガーデンウエディングの撮影や式も行われることがあるが、今日は小さなマーケットと簡易ステージでいくつものバンドや寸劇のサークルが公演をし、春の楽しみをさらに彩っていた。
    広大な芝の広場は人が多くとも十分にパーソナルスペースが確保できそうだった。
    ウィリアムとイソップはあたりを見渡し、大きな木の近くに持ってきたマットを敷いた。
    クッション素材の入ったシートは柔らかく、座り心地が良い。
    ウィリアムが空気式のアウトドアクッションも入れていたおかげで快適に滞在できそうだとイソップはランチバスケットを広げながら感動した。

    「イソップ!エール開けよう」
    「飲みすぎは注意だよ?」

    国によってさまざまな飲酒の法律はあるが、ウィリアムとイソップの住む場所ではエール1、2杯の飲酒後のドライブは許されていたが、念のため二人は2缶ずつと決め、残りはノンアルコールのスパークリングジュースと水を用意していた。ランチタイムはまずエールでと二人は缶からランチカトラリーのグラスに移し替え、カチリと乾杯の音を立てた。

    焼きたてのバケットは程よい歯ごたえで、新鮮な野菜とジューシーなローストビーフとよく合っていた。
    朝食をとってから4時間ほど経っていた体は、大きなサンドイッチでもするりと入っていく。ウィリアムにしてみれば少し物足りなさもありそうで、あとでマーケットを見てみようと二人で話し合った。
    チップスやチーズ、少しずつつまんではのんびりと時間の流れを楽しむ。
    イソップは気に入りの本を取り出し、ウィリアムはそんなイソップの横顔を眺めた。

    そんななんともない時間の流れが、堪らなく幸せだった。
    イソップの本をめくる音、広場ではしゃぐ子どもの声、遠くの結婚式の祝福の歓声、ロマンティックなジャズ。
    ほどほどに体にめぐるエールのアルコールにじんわりといつもより血色の良いイソップは、ちょっとだけベッドの中の彼を思い出す。
    幸せだという気持ちがウィリアムの中でどうしようもなく募り、今しかないと荷物に隠し込んでいたものを取り出してイソップに差し出した。

    「イソップ!お誕生日おめでとう」
    「!」

    ウィリアムの声に驚いたように本から視線をあげ、イソップがウィリアムをみる。
    小さな箱と、ウィリアムらしい白いデイジーとラベンダーの素朴な花束にイソップは数度瞬いてから、エールのアルコールのせいではない熱量を肌に感じた。
    手にしていた本を置き、ウィリアムの手の中からそれを受け取る。イソップはそれを開けていいかとウィリアムに尋ね、彼はもちろんっと小さな子のように微笑んだ。

    箱の中には、シンプルな指輪。イソップは驚いてウィリアムを見る。混ざり合った彼のまなざしは、いつものやさしさの奥に緊張と決意が見えた。

    「……昔はさ、イソップはあんまり誕生日を祝われるのって好きじゃなかったと思うんだけど」

    彼はぽつり、ぽつりと言葉を告げる。彼の言う通り、イソップは誕生日を祝われることが好きではなかった。それでも祝ってもらったときはそれなりに心が温まる思いもしたから、回数を重ねるごとに幼いころほど嫌だとも思わなかうなったけれど、それでもやはり特別好きなイベントではなかった。
    だけど、今は違う。その記憶は遠い過去のもので、自分であり自分ではない。そんな昔のことなのだ。
    でもウィリアムはそこをとても気にかけてくれていた。言葉の端々にそれを感じ取ることができた。

    「お前と再会して、二人きりで過ごす日々が本当に幸せだった。だけど誕生日に関してはまだちょっとだけ不安で、当日に祝ってやれなかった。それで、そのだったらオレの誕生日と中間地点ならいいかなって」
    「ウィル」
    「それで、その、どうせならそれは特別がよくて、この先も続けたくて」

    彼が珍しくひどく緊張しているのか、言葉がうまく探せないようだ。あーとかうーとか頭を掻きながら考えていたらしい言葉を音にしようと必死だった。
    もう、それだけでイソップは幸せ者だなと思った。そうして頑張ってくれている彼に、自分もきちんと思いを伝えようと、自分のカバンから彼と同じ小箱をそっと取り出した。

    「ウィリアム・エリス。お誕生日おめでとう。どうか僕と結婚して、これから先も君の誕生日を一番に祝わせて」
    「!!!!」

    箱の中にはウィリアムがプレゼントしてくれたシンプルな指輪と同じデザインの
    一回り大きなサイズだった。
    ウィリアムが驚愕した顔でイソップを見る。イソップはそんなウィリアムの様子にクスクスと自然に笑えてきた。

    「僕も、あなたと同じことを考えていたんです」
    「っ、まじ、か。てか、プロポーズ先に言われたぁぁ」

    うあぁぁと顔を抑えて唸る彼に、イソップは少しだけ意地悪い声で「それで受け取ってくれないの?」と問いかけてやれば、大慌てでウィリアムの大きな手がイソップの手ごと箱を包んだ。

    「もらう!!!というか、よろこんで結婚する!してほしい!!」
    「はは、もちろん。僕の返事もよろこんで、ですよ」

    ウィリアムがうぉぉっと雄たけびを上げてイソップを抱きしめる。
    周りをかけていた親子連れが驚いた顔をしたので、婚約したんだとイソップは正直に笑った。
    昔の自分だったら、きっとこんなことは恥ずかしいと宣言なんてできなかっただろうけど
    今は違う。自分の思ったことを素直にやりたい、してあげたいという気持ちが強い。
    それも全部、ウィリアムの影響だった。

    周りからおめでとうの賛辞をもらいウィリアムはイソップの手を引いてステージへと駆け出す。
    一番高い位置にあった太陽がすこしずつ傾いる。
    それでもキラキラと輝く太陽が、スプリンクラーで濡れた芝をキラキラと照らした。
    僕たちはステージの前で、婚約祝いに何か一曲!というウィリアムのバンドへのリクエストによりかかったダンスミュージックを合わせ、体を寄せ合い、チークダンスを踊った。


    日暮れのロマンティックタイムまでまだまだ時間がある。
    音楽に体を揺らしながら、ウィリアムとイソップは今日ほど最高のピクニックはないだろうと、そっとキスをした。エールの香りのする、最高のキスだった。
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