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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か4・風千
    「雲居の空」第2章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    ついにアシュヴィンとの顔合わせ。
    少なくとも彼は千尋には好意的ではあるが……!?

    ※不定期更新です

    #遙かなる時空の中で4
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    「雲居の空」第2章 常世の国の皇子・アシュヴィン2.常世の国の皇子・アシュヴィン

    「オレが常世の国の皇子・アシュヴィンだ」

    風早に案内され千尋が向かった先は常世の国であった。
    千尋の目の前に現れたのは赤毛の髪に、肌に密着した服とはいえ着ていても一目で筋肉質だとわかる体躯を持つ皇子アシュヴィンだった。
    隣にいる風早とは色合いも雰囲気も真逆なため、千尋は戸惑いを隠しきれない。
    しかし、そんな千尋の様子を気にする様子もなく、アシュヴィンは口を開く。

    「常世の国と豊葦原の和平。悪くないな」

    そう言いながらアシュヴィンは千尋の頭のてっぺんから爪先まで観察するかのように視線を動かし、そして千尋の後ろにいる風早も一瞥する。

    「ふーん、なるほどな……」

    千尋と風早の間を流れている空気感、それに気づいたのだろうか。しかし、アシュヴィンは不快さではなく面白がる様子を見せた。
    それは彼の本心なのか策略なのか千尋には判断つきかね恐怖に近い何かを感じてしまう。
    しかし、そんな千尋とは対照的にアシュヴィンはひとつの提案をしてくる。

    「ちょっとふたりっきりで話したいが、いいか」

    提案というより命令に近い口調。
    『ふたりきり』という言葉に抵抗を感じ、千尋は風早の様子をうかがう。案の定、風早も警戒の色を強めており、目で「行くな」と伝えてきている。
    躊躇する千尋だが、言葉にはならない。すると風早が彼女の代わりとして口を開く。

    「この方は我が中つ国の大切な二ノ姫。やがて婚姻関係になる予定がある方とはいえ、初対面で他国の皇子とふたりっきりにすることはできません」

    風早の言葉は想定内だったのだろうか。
    アシュヴィンは嫌悪の様子を見せずに風早を真っ直ぐに見据えている。

    「では、目の届くところで話すことにしよう。いいな」

    威圧的な態度を崩さないことから察するとすると、どのみち、千尋とふたりっきりで話したいらしい。
    不安な気持ちが心の中で大きくなるが、ここで妥協しなければ『和平』のために婚姻関係になりたいという言葉が偽りであると疑われるであろう。同じことを考えていたのであろう。風早が頷く。ただしそれはすんなりと了承したものではなく、しぶしぶ応じたというのが表情からも明らかなのだが。


    「アシュヴィン、私とふたりっきりで話したいことって何?」

    先に口を開いたのは千尋の方だった。
    そんな千尋に対し、アシュヴィンは不遜な眼差しで千尋を見つめる

    「ひとつ聞こう。今回の結婚、おまえ自身はどう思っている?」

    どう、と言われても、答えはひとつしかない。「王族として生まれたものの責務」、それだけだ。
    決して愛情を求めるわけでなければ、暖かい家庭を築き上げる必要もない。ただ、両国の魂を引き継ぐものを産む。それが自分に課せられた使命。
    そう思い込むしかない。
    そうでなければ風早への想いを抱えた状態でアシュヴィンとの婚姻を受け入れることはできない。さもなければ、自分はおそらく裏切り者として国から処罰を受けるであろう。
    そんな千尋に対し、アシュヴィンは予想外のことを言い放つ。

    「俺自身は歓迎さ。常世の国でも中つ国の二ノ姫の器量の良さは評判だった。そんな女と結婚できるのだからな」

    不敵にすら見える表情は千尋とは対照的だった。そして、彼自身、先ほどの千尋と風早の雰囲気から、ふたりの関係を察したであろう。それにも関わらずこの態度をとるということは、相当自信があるに違いない。

    「そんな! 私は戦利品でもなければ褒美の品でもないのよ」

    思わずそう反論してしまう。
    しかし、アシュヴィンはそれにひるまない。

    「ああ、それはわかっている。しかし、俺もお前も互いに好きには結婚できない。なら、少しでも望みに近い相手と結ばれたいと思わないか。その瞳、悪くはない」

    アシュヴィンはこの結婚を受け入れようとしている。
    それどころか千尋が相手で問題がないらしい。ひとりの男性が心に占めていると認識しているにも関わらず。

    「そんな…… 私の気持ちはどうなるの?」

    それは目の前のアシュヴィンに向けたものではなく、ひとり言のような呟きだった。

    「おまえの気持ちか。そうだな…… 今はおまえの気持ちまで縛るつもりはない」

    つまり、心の中で誰を想っていても気にしない。
    そう言いたいのだろうか。
    余裕すら感じるアシュヴィンの物言いが千尋にはどこかこわく感じる。

    「あくまでもおままごとのような恋だろ? ここに嫁いで三日もすれば、俺のことが欲しくて欲しくてたまらなくなるぜ」

    千尋を見つめるアシュヴィンの瞳はまるで獣を射ようとしているように、冷静でありながらどこかたぎっているのが見えた。
    その瞳にドキリとし、そしてそんな自分がいることにも驚く。

    私は風早のことが好きなのに。
    そして、彼以外の男性を好きになりたくないのに!
    だけど、ここに来るとアシュヴィンの色に染まってしまうのだろうか。
    そして、風早への想いは消し去られてしまうのだろうか。

    常世の国の乾ききった風が千尋の頬を掠めていった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    「雲居の空」第2章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    ついにアシュヴィンとの顔合わせ。
    少なくとも彼は千尋には好意的ではあるが……!?

    ※不定期更新です
    「雲居の空」第2章 常世の国の皇子・アシュヴィン2.常世の国の皇子・アシュヴィン

    「オレが常世の国の皇子・アシュヴィンだ」

    風早に案内され千尋が向かった先は常世の国であった。
    千尋の目の前に現れたのは赤毛の髪に、肌に密着した服とはいえ着ていても一目で筋肉質だとわかる体躯を持つ皇子アシュヴィンだった。
    隣にいる風早とは色合いも雰囲気も真逆なため、千尋は戸惑いを隠しきれない。
    しかし、そんな千尋の様子を気にする様子もなく、アシュヴィンは口を開く。

    「常世の国と豊葦原の和平。悪くないな」

    そう言いながらアシュヴィンは千尋の頭のてっぺんから爪先まで観察するかのように視線を動かし、そして千尋の後ろにいる風早も一瞥する。

    「ふーん、なるほどな……」

    千尋と風早の間を流れている空気感、それに気づいたのだろうか。しかし、アシュヴィンは不快さではなく面白がる様子を見せた。
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