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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    はるよんナイトに参加したときの作品です。

    謎時空の風早×千尋。

    結婚式前日、千尋は風早が作ったシチューを口にする。それはどんな料理よりも彼女が一番好きなもの。
    すると、千尋が「この間、夢を見たの」と言い出すのだが……

    ##はるよんナイト
    ##風早ナイト
    ##風千

    「いただきます」

    シチューを目の前にして千尋はその言葉を口にする。
    ここは橿原の葦原家。
    それなりの築年数があるこの家ではかつて那岐を含めた三人で暮らしていたが、大学進学を機に那岐はこの家から出ていってしまい、今住んでいるのは千尋と風早のふたりのみ。
    千尋に対し、風早は驚いているとも感心しているとも取れるような表情を見せる。

    「あらためて聞きますがせっかくの結婚式前日なのに、シチューでいいのですか? 例えば外食とかいくらでもあるのに」

    今日の夕食のメニューであるシチューは風早が作ったもの。
    そんな風早に対し、千尋は首を横に振りながら答える。小さな笑みを添えて。

    「むしろ風早の作ったシチューだから、今日食べたいの」

    ずっとこの味が大好きだったから。
    そうつけ加えながら千尋は呟く。そして、スプーンでそっとシチューをすくって口にする。
    明日、千尋は風早との結婚式を挙げる。
    記憶に残っている限り、自分の傍で常に守り続けてくれた大切な従兄。
    それがいつしか恋愛感情へ変化していた。
    そして風早も同じ気持ちだとわかり恋人となり、そして千尋が就職して仕事に慣れてきたのを見計らい結婚することとなった。
    もっともふたりは引き続き住み慣れた家で暮らすことになり、また名字も同じため、変わるのは戸籍上の関係のみといっても差し支えないのだが。
    それでも大切で、そして大好きな人と夫婦になれるのは嬉しい。そんなくすぐったい気持ちが心の奥底にある。

    「この間、不思議な夢を見たの」

    シチューを口にした千尋が何やら思い出し、そう口にする。

    「夢、ですか?」
    「うん。こことは全然違う世界で私は『姫』と呼ばれていたり、弓を持って戦ったり、はたまた『王』としてみんなにかしずかれていたりしたの。風早も着物みたいな格好をして、剣を持って戦っていたな」

    戦いは恐かったけど、風早がカッコよくて頼りになったな。そんなことをつけ加える。
    夢の内容を思い出しているのだろうか。
    千尋は心ここにあらずといった様子だった。

    「でも、妙にリアリティのある夢だったな……」

    戦いの中に身を置き命の危険を何度も感じたこと、目の前で多くの者が亡くなりそのことを陰でこっそりと嘆いていたこと、そして風早と想いが通じたかと思えば目の前から立ち去られ心が引き裂かれるような気持ちを味わったこと。
    それらすべてが実際に体験したかのように心に刻まれている。

    「ええ、でも所詮夢ですから」

    風早は優しい声で話しかけてくる。

    「そうだよね。夢だよね」

    その声に安心して千尋も自分に言い聞かせる。あれは夢だと。あんな殺戮も風早に対する激情も、この穏やかな世界では起こるわけがない。起こるはずがないのだと。
    千尋の表情が和らいだのを感じたのだろうか。風早が笑みを見せる。

    「千尋の表情を曇らせるものすべてから守りますから」
    「風早ったら大げさだよ」

    口ではそう言うが、昔から何かと自分を守ってくれたこの人が改めてそう言ってくれると大きな安心感に包まれている感じがする。
    その後、会話をすることもなく夕食は滞りなく進む。会話はなくてもふたりでいるだけで十分だった。
    皿が空になり、ごちそうさまと口にする。本当はシチューをもっと食べたかったけど、明日のことを考えて自重する。

    「洗い物は俺がしますから、千尋は早めに寝てください。せっかくの花嫁が目の下にクマを作れば大変でしょう?」
    「うん、ありがとう」

    風早に半分強引にうながされたこともあり千尋は寝室に行くことにする。
    ベッドに横たわり明日のことを頭の中で整理する。
    親を亡くしたこともあり、結婚式に参列する親戚は那岐を除いていない。互いの限られた交流関係の中で気心しれたほんのわずかの友人が出席するのみとなっている。
    だけど、ふと気になるのだ。自分たちの結婚を誰よりも報告したく、そして祝福してほしい大切な『仲間』がいたような気がすると。
    窓から見える夕陽は最後の光を残して消えていく。燃えているような赤がなぜだか印象的だった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    recommended works

    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「恋心は雨にかき消されて」

    2019年有馬誕生日創作。
    私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
    この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
    おそらくタイトル詐欺の話。
    先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。

    「雨が降りそうね」

    横にいる千代がそう呟く。
    そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。

    「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」

    その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
    ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
    有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。

    「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
    「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
    「こんな雨の中ですか!?」

    彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
    普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。

    「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」

    悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
    そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
    自らの任 1947