「ジュリアス様、差し支えなければメアド教えてください!」
令梟の宇宙の光の守護聖ユエの言葉に、神鳥の光の守護聖ジュリアスは面食らった。
「めあど……?」
ジュリアスが困惑したのがユエにも伝わったのだろうか。ユエはジュリアスに向き合い、もう一度言葉を紡ぐ。
「メールアドレス、のことです。この間、神鳥の宇宙のみなさんにもタブレットが渡されたとサイラスからうかがいました」
その言葉を聞いてジュリアスは思い出す。
そういえば、令梟の宇宙に向かう前、サイラスが何やら器械を置いていったことを。
そのときはあやしげな機器としか思わなかったが、どうやら自分の知らない機能が搭載されているらしい。
いまいち理解はできていないのだが、器械を通して手紙のやり取りができるとのこと。
「メールは手紙に比べてすぐに届きますし、あと不着の可能性はほとんどなくなりますので、宇宙間のやり取りをするにあたって何かと便利かと思います!」
あと、ジュリアス様にちょっとした悩みも聞いてほしくて。
そうつけ加えてキラキラと目を輝かせながら話すユエは自分と同じ年だという。
しかし、いわゆる下界、しかも決して豊かとはいいがたい惑星で、でも家族や周りのものの溢れんばかりの愛情の中で育ったせいだろうか。
どこか少年らしさを残すその眼差しがジュリアスには眩しく映る。
彼にとって自分は敬愛すべき、尊敬すべき、守護聖とのこと。
確かに長年この神鳥の宇宙を首座の守護聖として支えてきた自負はある。
一方で、新しい守護聖に、新しい女王。
彼らを迎えるたび、自分のおごりにも気がつく。まだまだ知らないことがたくさんあると。
そして、時には経験が新しいものの吸収を妨げること感じている。
「そうだな……」
このユエの瞳の輝き。
真っ直ぐ向けられるには気恥ずかしい部分もあるが、その輝きに応えられるだけの人物であり続けたいのもまた事実。
「では、神鳥の宇宙に帰ったら、早速使ってみようと思う」
その言葉にユエの全身から嬉しいオーラが漂うのを感じる。
せめてもう少しだけこの者の憧れの存在であり続けたい。改めてそう思う。
ユエのもとにジュリアスからのメールが届くのはそれから間もなくのこと。