第1話 依頼 「では、セン…。私たちの愛しき星の子よ。後のことは頼みましたよ。」
静かな声で優しく囁く澄んだ声。
此処は書庫の最上階、書庫の大精霊が居る場所で、書庫の大精霊直々に依頼が出された。
「はい、わかりました書庫様。ご期待に添えるよう尽力致します。」
そう言ってお辞儀をし、書庫からホームへ帰還し、空を眺める。今日も澄んだ空の色。
星の子の名はセン。便利屋をしており、星の子から精霊、大精霊から依頼を受けて仕事をするいわば「みんなのお手伝い」のような仕事をしている。
「はぁ……。」
決して楽な仕事ではない。ある日は孤島ある日は雨林、またある日は捨て地……。と言った具合に色んな所へ飛び回る仕事ではあるし、知りたくもないような世界の裏側の事情だって知らなければならないことが山ほどあったりする。当然人には言えないようなことだって……。
そんな中書庫の大精霊から依頼が入り、センは頭を抱えていた。
「『行方知れずになった星の子、見つかったとしても記憶が消えていたり、性格が全く違っていたりする、不可解な事件の調査をして欲しい』って言ったってどういう風に情報を集めようかねぇ…。」
最近空の王国では不可解な事件が多発しているようで、その事件とは「星の子が急に姿を消し、そして見つかった時には、記憶も性格も何もかもが変わり全くの別人になってしまっている」というものだった。センにも思い当たる節はある、それは、親友のバベナが行方不明になってしまったということ、バベナが居なくなってから約5ヶ月、センは色々な所を隅々まで探したにも関わらず、何処にもバベナの影一つ見つけることは出来なかった。
「バベナ…。お前は一体どこに行っちまったんだ……まさか…。バベナも事件に巻き込まれたのか…」
静かに呟いた言葉は背中を通り抜けて行く風に乗り、空へと舞い上がって、ホームに吹く風は暖かったのに今日は何故か冷たくひんやりしていた。いつも笑顔で隣に居たあの子は居ない。もう二度と何も失いたくなかったのに、また守ることが出来なかった悔恨にセンは手を硬く握りしめ、何も知らないかのように輝き続ける星々にバベナの無事を祈ることしか出来なかった。
その様子を気配を消して後ろから見ている影が3つあることを知らずに。