夏のまんなか意識を取り戻して、まず視界にあったのは真っ白な天井だった。雄英の保健室よりももっと強い消毒のにおい。目にかかった髪をよけようと手を浮かせても、点滴の管に阻まれる。電子音が一斉に鳴り、看護師さんらしき人たちがバタバタと走ってくる。
……あ、そうか。脳みその奥からだんだんと記憶が蘇ってきた。くらい森でガスに倒れた、あの夜のこと。
葉隠やヤオモモ、A組のみんなの姿が脳裏に焼き付いている。心臓のあたりがきゅうと苦しくなった。みんなは、みんなは?ウチは無事に助かったみたいだけど、みんなは大丈夫だったんだろうか。
そのとき、突如ガラリと扉が開いた。
「耳郎!!」
機械音やら足音やらで騒がしい病室に、聞き慣れた声が響いた。白衣の群れに紛れて、Tシャツ短パンの男が一人、ドアに立っている。
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