藤代旋√本編(捏造)【もし配信されていたら:藤代旋 本編ストーリー】
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プロローグ
音楽が厳しく統制され、心を奏でる自由すら奪われた時代。
それでも、人は旋律を手放すことができなかった。
君――若きピアノ講師は、晃揮が管理する「シェアハウス桜城」で、静かに、しかし情熱を燃やして暮らしていた。
そこは、規則を破ることなく、ギリギリの境界線で音楽を守ろうとする者たちの、小さな砦。
そんな日々の中、君は出会う。
音楽統制局「竜胆」の長官、藤代旋。
冷酷な眼差しと、凛とした立ち姿。
だが、その奥に揺れる影を、君は見逃さなかった。
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第一章「正義という名の剣」
旋が「竜胆」に入った理由。
それは、無秩序な音楽が再び人を傷つけることを防ぐため。
過去、「例の事件」で失った友を思い、誓った。
――秩序で音楽を守る。
――そして、それこそが自分に課せられた贖罪。
旋は、音楽を憎んでなどいなかった。
むしろ誰よりも音楽を愛していた。
だからこそ、音楽を護るために剣を取った。
自らの道を「正義」と信じて、疑わなかった。
しかし――
シェアハウス桜城で生きる君たちとの出会いが、
少しずつ、旋の揺るがないはずの信念を侵食し始める。
笑い、奏で、誰も傷つけずに音を楽しむ者たち。
音楽が、人を救うために鳴り続ける世界。
そして何より――
まっすぐな目で旋を見上げる、君の存在が。
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第二章「夜に響くもの」
晃揮が主催する秘密のライブ「Own The Night」。
それは、音楽規制法の盲点を巧みに突き、合法の範囲内で開催されるギリギリのイベントだった。
規則を破るのではなく、規則に挑む。
その精神に、君は心を打たれる。
一方で、旋は複雑な想いを抱えていた。
音楽は守られるべきもの。
だが、守り方を間違えれば、また誰かを傷つける。
迷う旋に、君は告げる。
「旋さん。
音楽を護る手段は、ひとつだけじゃないはずです」
その言葉は、旋の胸に静かに突き刺さった。
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第三章「贖いの旋律」
やがて、君が規制違反の疑いをかけられる。
統制局内部でも、君を標的にする動きが強まっていた。
旋は苦悩する。
正義を貫くか、君を守るか。
だが、答えはひとつだった。
「君を失うなら、俺の正義なんて、何の意味もない」
そうして旋は、自らの立場を危うくしてまで君を守った。
晃揮はそんな旋に、手を差し伸べる。
「じゃあ、歌え。
過去じゃなく、今を生きるために」
旋は、迷いの果てに、Own The Nightのステージに立つことを決意する。
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クライマックス「夜を抱いて」
「Own The Night」ライブ当日。
ギリギリの合法ラインに乗せた、しかし心だけは自由なステージ。
そこに、藤代旋が立った。
ギターを手に、マイクに向かう旋。
ステージの上の彼は、静かに目を閉じた後、力強く息を吸う。
そして――
美しく、鋭く、どこまでも真っ直ぐな歌声が、ホールに響き渡った。
旋は、歌が下手ではない。
寧ろ、その歌声には、真っ直ぐな熱と確かな技術が宿っていた。
失った友へ。
赦せなかった自分へ。
そして、今ここにいる「君」へ。
旋の歌は、罪ではなく、祈りだった。
守るために。
未来を、音を、君を――守るために。
歌い終えた旋は、静かに君を見つめた。
君は、涙に滲みながら、誰よりも強く拍手を送った。
旋もまた、微笑み返した。
すべての重荷を、ようやく下ろしたかのように。
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エピローグ「まだ見ぬ朝へ」
ライブの後、静かな夜明け。
ふたりきりの帰り道で、旋は言う。
「……君がいたから、俺は、音を信じ直すことができた」
贖罪でも、義務でもない。
ただ、君と共に未来を歩きたくて。
旋は、そうして初めて「生きたい」と願った。
曙光の中、旋と君は、新しい世界を目指して歩き始める。
まだ、誰も知らない旋律を胸に――。
――End.