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    koshikundaisuki

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    12/8 影菅アドベントカレンダー

    存在証明「影山はサンタクロースっていると思う?」

    直前まで、スマホのCMに出ているアイドルたちの話をしていたから、唐突感はあったと思う。
    にもかかわらず影山は爪を整えながら「いないと思ってます」とすぐに答えてくれた。
    「そっか。絶対にいるって答えられたらびっくりだけど、それはそれで拍子抜けする回答だな。意外性がない」
    「そもそも、サンタってあれなんなんすか?妖怪の類?」
    「サンタはサンタですけど?」
    そう言いながらも、実は俺もわかっていない。そこを深堀りされると弱いので「いついないって思った?」と聞く。
    「いつからっていうか……はじめからそんなに。姉が9歳上だったんで物心ついたころには”いないもんだ”って何となくは」
    「あーなるほど……」
    「うちの家がそもそもサンタ文化を熱心に取り入れる家じゃなかったです。クリスマスだからクリスマスプレゼントもらえる、みたいな」
    「それはご両親がってこと?」
    「そう。父親が一ヶ月くらいまえからストレートに欲しいもの聞いて、当日は親が直にくれます。」
    「影山家!って感じ~」
    影山はふっと自分の爪に息を吹きかけ、ティッシュで吹いたあとに俺の手を取る。
    「菅原家のサンタ事情はどうなんですか」
    「俺はさ、両親がもうサプライズとかすげえ好きなもんだからさ。前の夜にはサンタに手紙書いて、クッキーとミルク用意して、靴下用意して、9時には寝るわけ」
    「いい子ですね」影山がふっと笑いながら言う。
    「でも俺は子どものころから野心家だから、サンタの正体を見抜いてやろうと」
    「菅原さんっぽい」
    「当日は昼寝をたくさんして、ベッドの中で待ち続けたんだよ。ちょっと寝ちゃったけど。深夜に子ども部屋の扉があいて、俺は寝息を立てながらこっそり布団の隙間から覗き込んだ。部屋の明かりでシルエットが浮かび上がるだろ?」
    「はい」
    「でもさ、どう見ても親父なの。うちの父親体そんなデカくないし、髭もないし」
    ショックだったなぁと呟く。影山は黙ったまま続きを促した。
    「でもさ、プレゼントを俺たちの枕元に置くその顔がさ、普段見たことない表情で……起こさないように緊張してるっていうのもあるけど、今思うとすごい幸せそうな顔してた」
    「うん」
    「朝プレゼント抱えて起きたらさ、テーブルにあったクッキーもミルクも食べた後があって、新聞読みながら父親が何食わぬ顔で”お、プレゼントもらったのか、よかったな”なんて言うわけ」
    「ふふふ」
    「その年から俺はもうサンタ一味よ。弟が学校で”サンタはいないって言われた”って泣いて帰ってきた日には、へぇ?でも兄ちゃんは見たことあるけどね?そいつは別にサンタがいない証拠つかんだわけでもないんだろ?とか言って」
    結局そんな地道な努力が実を結んだのか別にそんなことはなかったのか、弟は「何がクリスマスだ!サンタなんかいねぇんだよ!」とグレることもなく、中学卒業まで枕もとのプレゼントを抱えて「いい子だったから、今年も貰えたわ」と言って起きてきた。
    高校を卒業すると不思議とサンタは来なくなってしまったが、おかげでクリスマスには楽しい記憶しかない。





    この季節になると職業柄、そういった問題にも突き当たるのだ。

    教室に入ると何やら騒がしく、後ろの方に子ども達が輪になっている。
    何か良くない感じだな、そう思いながら近づくと案の定、輪の中心にいるのは泣きじゃくっている女の子と、頬にひっかき傷をこさえた涙目の男の子だった。
    「おーどうしたどうした。ほら、みんなは席ついて」
    ポケットからティッシュを取り出すと二人に渡す。深呼吸をさせて落ち着かせてからこうなった訳を聞いた。
    サンタはいると信じている子に対し、「そんなものいない、子ども騙しだ」とけしかけた子がいた。結果どちらも譲らず、手が出てしまったというわけだ。幸い、ひっかき傷は赤く跡がついた程度で済んだ。養護教諭の先生も「何にも問題はないですね」と言い切った。

    一向に泣き止まない女の子は先生に任せ、俺は男の子と横並びに座って話をした。
    「なんでサンタはいないって言ったの?」
    「だって……いねぇもん……」
    「誰かにそう言われた?」
    男の子は首を振る。
    「じゃあ、サンタはいないって思っちゃうような出来事があった?」
    「……ほしいって手紙書いた……Switchが、家の、食器棚の上にあって……レシートもあった……ビックカメラって書いてるの見た……」
    あちゃー、と思ったが当然声には出せない。
    「なるほど……それがサンタがいない理由?どうしてそう思う?」
    「だって、それってお父さんとお母さんが買ってたってことじゃん……サンタじゃなくて…二人がさ、オレのことだましてたってことだから……」
    うつむいて唇を尖らせる男の子の目から、ぽたぽたと涙が落ちる。サンタがいないという事実よりも、”両親に騙されていた”という感情でいっぱいになっているようだった。
    「トモキはサンタクロースって何か知ってる?」
    「えっ……だから、クリスマスにプレゼントを届けてくれる人でしょ。ウソだけど……」
    「じゃあなんでこんなにみんな信じてるんだろう?ウソなんだとして、なんのためにサンタクロースっているのかな?」
    「え、わかんない……でも先生だってウソだって知ってるでしょ」
    「うーん、先生はさ、実はまだわかってないんだよね。本当にいないのかな?先生も確かに見たことはない。でもそれっていないことの証明になるかな?」
    「え……うーん……でも一晩で世界中のこどもにプレゼントを届けるのは無理だと思うから……」
    「そこ!どれくらいサンタさんがいるのかわからないけど、一晩で配りきるのは無理がある。でもそしたらさ、委託っていう手があると思わないか?」
    「いたく……?」
    「トモキの家にアマゾンってくる?」
    「うん、来る」
    「便利だよな、アマゾン。昔は宅配便ってなかったから、サンタがプレゼント配ってたとするべ?でも今は物流がかなり豊かになってる。だったらサンタが寒い中、トナカイに鞭打って配るより、そういうところに任せた方が合理的だと思わないか?トナカイも楽だし」
    横に腰掛ける男の子は、すっかり泣き止んでいた。そして唖然とした顔で俺を見ている。何言ってるんだこいつ、そんな顔をしていた。
    「それから、子ども達のそばには大体大人がいる。だったらサンタの代わりにプレゼントを用意してもらった方が、より多くの子どもたちがプレゼントもらえると思わない?トモキの家にもいるだろ?お父さんとお母さんだよ」
    しかめっ面で聞いていた男の子は、お父さんとお母さんという言葉にハッとした顔を見せたが、一瞬で不信感を取り戻した。
    「先生はお父さんとお母さんが、サンタの代わりにSwitchを買ったってことにしたいの?」
    「んーん。言ったろ?先生にもわからないんだよ。今のは先生が考えた可能性の話。まずは仮説をたてないと、謎は解けないだろ」
    「うん……」
    「トモキも気になってることあるんじゃない?」
    「オレ……トナカイは空飛ばないと思う」
    「俺もそう思う!」
    「あと、日本には煙突ある家少ないから……もしかしたらサンタは来られないのかも……」
    「たしかに!」
    その後も男の子はひとつひとつ、疑問に思っていること、矛盾などを丁寧に指摘していった。
    俺はそれらに対しての答えを持ち合わせていない。その代わりに言った。
    「サンタクロースについて、知らないこといっぱいあったな。これで”いない”って断言しちゃうのも、なんか勿体ないと思わない?」
    「うん……」
    「まずは調べてみたらいいと思う。知らないことだらけなのに”いない”って言い切るのは、慢心だと思うな」
    慢心ってわからないかな、と思ったが、男の子はコクリと頷いて見せた。
    「もしかしたら、お父さんとお母さん、サンタクロース協会の会員とかだったのかも……でも二人ともツメが甘いから」とまで呟き出したので俺は「いいぞ!」と思った。

    教室に二人で戻る途中に、俺は余談として話した。
    「先生も昨日調べたんだけど、サンタのお家ってフィンランドにあるらしいよ」
    「え!本当に……?」
    「ちなみにオーストラリアではサーフィンに乗って来るんだって」
    「えー変なの!」と笑う男の子の満面の笑みには、何の曇りもなくなっていた。

    終わり


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    koshikundaisuki

    DOODLE菅受けワンドロより「あざやか」をお借りした影菅の小話
    雑談「んでな、俺は言ってやったわけ。『いや、それは唐揚げへの解像度低すぎるだろ!』って」

     通常ならここでひと笑い起こるはずだったが、凪。まさに凪。俺はゆっくりと斜め後ろを振り返る。神妙な顔をした影山と目があった。話を聞いていなかったわけではないらしいな、と頷く。
     影山との会話は度々こうなる。例えば昼食を食べたあと「あーもう腹パンパンだわ、パンだけに」と言おうものなら、笑うでもなく、冷たい目を向けてくるでもなく、まじめな顔で「今の、どういう意味ですか?」とか言ってくる。俺が駄洒落を言うときなんて8割何も考えずに口にしてるだけだから、本当はくだらない、と一笑に付してくれるくらいがありがたいのだが、真面目に尋ねられてしまっては俺も誠意をもって「今ランチでパン食ってたじゃん?だからお腹いっぱいなことを『お腹パンパン』って言葉に言い換えてパンと掛けてんだよね」と説明することになる。ギャグは鮮度が命であり、説明なんてしようものなら笑いの神様は死ぬ。解説を聞き、影山は「なるほど」と納得した様子で頷く。その目は「やっぱ菅原さんはすげえ」とでも言いたげに輝いている。影山は感動はしてるが別に笑いはしない。なぜなら笑いの神様はもう死んだからだ。
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    koshikundaisuki

    DOODLEラッキーすけべでお題をいただきました、影菅ノssです
    ラッキースケベ(仮)聞いて欲しい。これは俺の懺悔と、とある追憶の記録だ。

    俺、菅原孝支は宮城県内某所で小学校教諭をしているごく普通の成人男性だ。俺には年下の彼氏がいるのだが、それはそれは可愛く、そして時には大変格好良い男で、バレーボール男子日本代表にも選ばれたトップアスリートである。名前は影山飛雄という。詳しくはWikipediaでも見てほしい。

    愛し愛されかれこれ8年ほど恋人としての関係が続いている。遠距離の時期が長く続いたこともあり、取り立てて大きな事件などは起きなかった俺たちだが、半同棲をはじめて1年半がたつ今、影山を怒らせてしまった。理由はさほど重要ではないので割愛するが、俺自身の不甲斐なさが原因だ。俺は自らの過ちを認めて非礼を詫び、彼の中にあった誤解を解くためそれまでの成り行きを丁寧に説明し、最後に影山を本当に愛していることを伝えて仲直りとなった。焦った。影山が小さな不満を貯め込み、それが表面に漏れてしまうことは珍しくないが、面と向かって不満を爆発させたのはほぼ初めてだったので、俺たちの関係もこれまでかと思った。抱きしめられた影山は落ち着くためにゆっくりと深呼吸をしたあと、シュンとした表情のまま「俺も、すみませんでした」と呟いたのでたまらない気持ちになる。でもそうだよな。長い付き合いだからこそ、きちんとお互いのことを話しいくべきだよな。
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