汗(理左) ぽたり、と頬に一粒の水滴が当たり、左馬刻は徐に顔を上げる。
どうやら覆い被さっている理鶯の前髪から汗が滴り落ちたらしい。
理鶯はそれに気付くと、「すまない」と言って右手で自身の濡れた前髪を後ろへすい、と掻き上げた。
その仕草がどうにも色っぽくて、左馬刻は思わずそれをじっと凝視する。
「……いや、別に構わねえよ」
エアコンをつけているといえども、こうして激しく裸で交わり合っていれば汗だってかく。
それは左馬刻も例外ではなく、理鶯と触れ合っているところは何処もじんわりと自らの汗で湿り気を帯びていた。
汗で濡れた部分はじっとりとしていて少し不快ではあるが、それはそれとして、そんな汗まみれの状態で理鶯と抱き合い、ぐちゃぐちゃにされるというのはなかなか悪くはない。
肌が擦れる度にキュッキュッと下品で厭らしい音を立て、押し付ければその水分の多い皮膚の表面はぺったりと吸盤のように吸いつき合う。
そんな生々しさが左馬刻の興奮を更に煽り、もっともっとと理鶯を強く求めてしまうのだ。
「しかし、気付けば貴殿も汗みずくではないか。もう少しエアコンの温度を下げたほうがいいだろう」
そう言って理鶯がエアコンのリモコンに手を伸ばそうとしたので、左馬刻も負けじと手を伸ばして指先を理鶯の手に思わせぶりに絡ませる。
「……左馬刻?」
「……んー、俺様は別にこのままで良いけど」
左馬刻はそう言うとそのまま理鶯の身体に抱きつき、首筋にチュ、と口付けを落とした。
何度か口付けて最後に舌でぺろりと舐め上げると、理鶯はびくりと小さく肩を揺らし、わざとらしく身体を絡みつける左馬刻の頭を控えめに下から上へと撫で上げる。
「左馬刻」
「ん……、やっぱしょっぺえな」
ちゅ、ちゅ、とまた見せつけるように唇を理鶯の首筋に吸い付ければ、理鶯は「汚いぞ」とあやすように左馬刻の頬を撫でた。
「別に汚くねえだろ。つーか、お前がこーやって汗まみれになっちまってんのとか、エロくてかなり好きだしな」
「エロ……? そうなのか……?」
「そーなの」
だからこのままでいーだろ? と左馬刻が小首を傾げれば、理鶯は納得がいかなそうな表情ながらもしぶしぶ「了解だ」と頷く。
その返事に満足して左馬刻がフ、と笑うと、理鶯もそれにつられて微笑み、そのまま先ほど左馬刻がしたように、左馬刻の頬や首筋へと口付けてきた。
それがくすぐったくてまた声を出してクスクスと笑うと、何処でスイッチが入ったのか理鶯は再び左馬刻のことをベッドへと組み敷いた。
「……理鶯?」
「……確かに、汗に興奮するという理屈は何となく理解出来た気がする」
「だろ?」
「汗みずくの貴殿は、酷く扇情的で、魅力的だ」
理鶯はそう言うと、左馬刻の額を伝う汗を指先で軽く拭う。
「……それを言うならお前もな」
左馬刻もそう返して、誘うように両腕を理鶯の首へと巻き付けた。
互いの唇を合わせれば、先ほどより更に体温が上がってしまっているような気がする。
————ここまで来たら行くとこまで行こうぜ。
左馬刻はそう言ってまた笑うと、理鶯の身体にわざとらしく腰をぐん、と押し付けた。
end