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    kiri_nori

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    お題はメル燐ワンウィークドロライさんよりお借りしました。帰りの車内での話。

    ##メル燐

    ロケバス ES方面へ向かっている帰りのロケバスの車内は静かだった。今日は朝早くから仕事だったし疲れているのだろう。燐音が十分ほど前に後ろを確かめたときはニキもこはくも眠っていた。ロケバスに乗った直後はコンビニで購入した弁当を食べていたようだったが、食べ終わって疲れから眠くなったに違いない。
     HiMERUは……眠ってはいないようだが随分と静かだ。ちらりと隣を窺えばパソコンもスマホも触らず窓の外を眺めている。伊達男は横顔も様になるなと思いながら口を開くことはしなかった。
     別に後ろの二人を起こしたいわけじゃなければ、このタイミングで話さなければいけないこともない。HiMERUと会話のキャッチボールという名の変化球を投げ合うのは楽しく、どんな球を投げたって最終的にはこっちに投げ返してくれるのがたまらなく楽しかった。HiMERUもたまに仕掛けてくると内心ワクワクが止まらないのだ。でも、今は違う。
     そんな空気じゃないことは分かっていて、今の燐音にその空気を壊す気はない。空気をぶち壊す発言は得意だけれど、何も企んでおらず壊したところで何も楽しくはない。何より明日も朝から仕事なのだから今のうちに休んでおいた方がいい。どうせ寮に帰ったらすぐ解散して部屋に戻ることになるのだから。
     飲みかけのペットボトルを手に取って水を飲んだ。それを入れてあった場所に戻して燐音は軽く身体を伸ばす。その後に力を抜くと先程より深く座席に身体を預けることにした。特に眠くはなくとも休んでおこうという考えからである。
     だから両手も意味もなく腕を組んでいた状態から、だらんと身体の横に置いた。この行動だって特に意味は無い。また体勢を変えたくなったら変えればいいくらいのものである。だから明確な意図を持った手が自分の手の甲に重ねられた瞬間、燐音はつい反射的に手を引っ込めようとして、それが出来る相手を思い出してピクと指が動いただけで留めることが出来た。
     ゆるりと首を動かしてHiMERUの方を見ればつい数分前に見たときと変わらずに外を見ていた。とはいえ外がもう暗い影響で燐音の動きは窓に映っているのだからHiMERUだって燐音からの視線に気付いてはいるのだろう。気付いているうえで手を重ねたことを何も言わないのだ。
     停車するまで車内を歩く相手なんていない。HiMERUのことだからそこも分かっているに違いない。隣の伊達男がずっと何を思って外を見ていたのか、一体いつからこれを予定していたのか。それを想像すると燐音は嬉しいやらどこか照れくさいやらの気持ちに襲われてしまう。妙にニヤけそうになる顔を抑えることで必死だ。この事態を起こした張本人は涼しげな顔をしているというのに。
     少しだけ悩んで、燐音はHiMERUと重なっている方の手の上下を逆にした。そうすればほとんど間を置かずにHiMERUが手を握ってきて笑いを噛み殺すのが大変だった。
     HiMERUに答えるように燐音も手を握り返すとロケバスが目的地に到着するまでの時間を静かに楽しむことにした。
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