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    kiri_nori

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    メル燐前提のりんね+かなめの話。色々解決してかなめが元気にアイドルやってる幸せ時空の未来捏造。カプ要素より兄弟にりんねが巻き込まれてる要素の方が強めかも

    ##メル燐

    「……あまぎ、もしかしてぼくはお兄ちゃんから距離を置かれているのかもしれません」
    「……えーっと、要ちゃんそれ本気で言ってる?」
    「ぼくはあまぎと違って嘘はつかないのです」
    「いや、うん、そうだな。俺っちが悪かった」
     つい素直に謝ってしまうくらいには燐音には要の言ったことが理解できなかった。HiMERUが要に距離を置いているなんて、燐音からしたら想像もできないことである。HiMERUのことだから何か事情があって要と距離を置くという事態は想像できる。しかし、そんな素振りは今まで一切見えなかったのだ。今朝だっていつもと何ら変わりはなかった。HiMERUはかわいくて愛している弟と距離を置かなければならないのに恋人の髪にキスを落としてくるような男ではない。つまり要の勘違いである可能性が高かった。
     燐音はそう結論づけると、状況把握と要が何を持ってそう思ったのか聞き出すことにした。
    「要ちゃんはなんでメルメルに距離を置かれていると思ったわけ?」
    「……お兄ちゃんが星奏館を出て行って」
    「うん」
     星奏館にも随分とアイドルが増え、設立当時から住んでいたアイドルはそのままに住み続けるか、外で部屋を借りるなり何なりしてどこに住むか選べることになったのだ。それで燐音とHiMERUは話し合った結果、部屋を借りて二人で住むことにしたのである。
     場所に関してはセキュリティの観点からは茨の許可も下りている。茨にとってスキャンダルさえ起こさなければ星奏館の中でも外でもどちらでもいいのだろう。意味のないスキャンダルは起こさないとその程度の信用は得ている自覚は燐音にもあった。……意味のある行為で茨の頭を悩ませたことは何度かあるけれど。
     こはくとニキは未だ星奏館に留まっている。こはくは一人暮らしに興味があるらしく悩んでいたが、誰かとご飯を食べることが好きなニキは今のところ出ていく予定はないらしい。とはいえ、ユニットメンバーが揃って食事をするときはニキがよく二人の部屋を訪れて料理をするのでどちらで過ごしている時間が長いか分からなくなる週もあったりする。
     要も星奏館で暮らしていた。本人が寮での暮らしを楽しんでおりHiMERUもここならば自分が近くにいなくとも要が伸び伸びとアイドル活動を頑張ることが出来るだろうと寮を出ることを決めたのだ。そうでなければHiMERUがかわいい弟を残して寮を出るものか。要が巽に色々教えてもらっている場面に出くわして複雑な表情を一瞬浮かべたことを燐音は気付いていたがそこには触れていない。HiMERUなりに感情を上手くコントロールしている最中だろうと思ったからだ。
     燐音の与り知らぬところで屈託を緩和させる何かがあったのだろうと推測している。興味はあったが、仕事が絡まない内容で巽の話を振ると普段のHiMERUはどこへやらと一気に機嫌が悪くなるのだ。ただ、そこまで分かりやすく変わるのは自分の前だけだと思うと燐音にとってはどこか嬉しい話でもある。頻繁に話題に出すと本気で臍を曲げられるため我慢しているのだが。
     実際、巽が現時点で寮を出る予定がないからこそHiMERUに出る決意ができたのだろうと燐音は勝手に思っていた。
     燐音としては一彩と離れることになる寂しさ半分、何年経とうと変わらず人前で愛していると言われる頻度が減った安堵が半分といったところだろうか。外では会えるのだ。都会で再会してからの一彩の成長を見ていればそこまで心配することはない。
     ……しかし、燐音とHiMERUが寮を出て行ったのは半年前だ。寮を出ることが距離を置かれると捉えるのならば少し遅すぎではないだろうか。それとも、半年もの間我慢していたのかもしれない。燐音が要の言葉の続きを待っていると意を決したように口を開いた。
    「お兄ちゃんが新しい家に遊びに行かせてくれないのです!」
    「…………へ?」
    「もう! あまぎはちゃんと聞いてください!」
    「き、聞いてる聞いてる」
     ごまかすように要の頭を撫でながら燐音は状況を全て把握してしまった。隣で要が髪が乱れると言っているのを聞きながらどうするかと考え、一つ賭けのようなことを思いついた。要が髪を直してこちらを向いていない隙に賭けの準備を済ませておく。
    「最初は引っ越したばかりでお兄ちゃんも忙しいと思ったのです。ドラマの撮影もあったからクランクアップしたタイミングなら大丈夫だと思ってお願いしたんですけど……」
    「断られちまったと」
     要がこくりと頷いた。HiMERUが連ドラの助演を務めることになったのは燐音の記憶にも新しい。確かクランクアップは先月だったはずだ。
     まず、要は兄が燐音と暮らしているなんて思ってもいない。二人ともほぼ同時に寮を出たくらいは思っただろうが、一緒に住んでいることは知らないのだろう。二人が一緒に住んでいることを察しているのは何人かいると思うが実際に伝えたのはニキとこはく、それに茨と一彩だけだ。一彩に伝えたのは燐音の独断のためHiMERUは知らない可能性もある。
     そもそも要に対しては言わないようHiMERUから口止めされていた。正確には要を勝手に家に入れてほしくないからそれを防ぐために一緒に住んでいることを口止めされたにすぎない。
     理由を訊けばセックスをしている場所に要を入れたくないとの答えが返ってきて、燐音は笑ってしまった。確かに盛り上がっていればリビングやら風呂場でしたことはある。しかしそれでもメインは寝室なのだ。そこにさえ入れなければセーフなのではないかと燐音は思ったがHiMERUは違ったらしい。
     要より年下なこはくが来るのは大丈夫なのになと思わなくもないけれど、そちらの理由も燐音は何となく察していた。今さらニキだけでなくこはくにだって何をバレても開き直れてしまう。それぐらいの時間は過ごしてきたのだ。さすがにプレイ内容とかは隠したいがそれは向こうも知りたくないだろうから大丈夫のはずである。
     それに対して要はHiMERUにとって大事な大事な弟だ。話を聞けば燐音と一彩のように生まれたときから一緒ではなく、しばらくの間弟がいたことすら知らなかったらしい。燐音だって一彩への接し方に不安になることもある。それより短い期間のHiMERUなら距離感を間違えてしまうこともあるだろう。何が言いたいかというと「要に対する説明はHiMERUがちゃんとしておきます」と言った自分の恋人を思い出して燐音は頭を悩ませているのだ。
     仮にここでHiMERUと住んでいることを明かしたとしても要が信じてくれるかは微妙である。今までのことから信じてくれない可能性の方が高いと燐音は踏んでいた。そもそも口止めされているのだ。
     悩みながらもそろそろ賭けに勝っていると信じて燐音は話の続きを口にした。
    「要ちゃんさァ、せっかくレスティングルームに来てるんだから何か飲まねェの?」
    「……あまぎがちゃんと相談に乗ってくれたら飲みます」
    「分かった分かった」
     要にじろりと見られて燐音は両手を上げた。普段の態度が違いすぎるから分かりにくいがこういうところは似ているのだ。二人は兄弟なのだから。
    「って言ってもメルメルが家に遊びに行かせてくれないだなんて単純に部屋が汚いんじゃねェの? 要ちゃんに見られたら幻滅されちまう~とかさァ」
    「お兄ちゃんがそんなことするわけないのです」
     即答されたがHiMERUがそんなわけないのは燐音が誰よりもよく知っていた。とはいえ、正直に話すわけにもいかないのだ。話すかどうか決めるのは燐音ではなくHiMERUだろう。
    「……俺っちにはメルメルの理由なんて分かんねェけど、メルメルが要ちゃんに距離を置くなんて有り得ねェよ」
    「……あまぎは本当にそう思ってるんですか?」
    「お兄ちゃんっていうのはそういうものだからな。だから要ちゃんだって他の誰かじゃなくて兄でもある俺っちに相談に来たんだろォ?」
     要が言葉を詰まらせる。どうやら図星だったらしい。
     すると、急いでこちらに向かってくる足音が燐音の耳に届いた。どうやら賭けに勝ったらしい。要の目を盗んでHiMERUへとかけた電話は無事通話中になっているようだ。わざわざ場所も相談内容も伝わるような会話にしたのだ。HiMERUならば状況も理解しているだろう。
     燐音がいくら要が納得するような内容を並べ立てたところで本当の意味で要が納得することはない。要には悪いけれど相談内容を最初に口止めはされてないのだ。これは兄弟で話した方がいい。状況を把握したHiMERUならば双方が納得いく形に持っていくと信じていた。
    「要!」
     突然のことに目を丸くした要がきょろきょろと周囲を見渡しているのを確認すると燐音は立ち上がって足音の方に顔を向けた。少しばかり髪が乱れている状況でこちらに向かってくるHiMERUは中々見れないなと燐音は心の中だけで笑った。
    「天城、この件については後で話しますが礼は言っておきます」
    「ん、それじゃ燐音くんは邪魔になりそうなので後は兄弟でごゆっくり~」
     お兄ちゃん?と小さな声を漏らしてHiMERUと燐音を交互に見て混乱している要には後日話を聞くついでに飯でもおごってやろうと思いながら燐音はすぐにその場を後にした。
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