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    kiri_nori

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    メル燐。フィチャ2のひめる星4ストが最高だったので、りんねがいっぱい名前を呼ぶ話を書きました

    ##メル燐

    「メ~ルメルっ!」
     隣から声をかけられたが本を読んでいるため無視を選ぶ。
    「メルメル何読んでンの? タイトルからしてミステリー?」
     小説の中では二人目の被害者が出た。一度目の事件のときに不自然な反応をしている描写が入ったため妥当な人選だろう。ただ、被害者の予想はできても犯人の予想はまだ難しい。
    「それ面白ェ? メルメルよく本読んでるけど俺っちにもオススメのやつある?」
     一度目の事件と違い、今度はほとんどの登場人物にアリバイがない。こういうパターンはアリバイがある人物の方が怪しく見えてくるが、作者の過去作の傾向からいってそこで判断するのは危険だ。
    「メルメルが今度出るドラマの原作小説、店行ったら売り切れてたンだけどメルメル持ってたりしねェ?」
     すでにそのドラマの収録は終えてあり、小説は部屋にあることが頭をよぎったが本に集中する。
     主人公の探偵が現場を探索する。どうやら犯人からの挑戦状のような証拠が散りばめられており、探偵が静かに奮起していた。何故犯人は探偵を挑発するという無意味にも思える行動を取るのだろうか。探偵がやる気を出せば自分が捕まり、犯行が途中で終わってしまう可能性だってあるというのに。
    「メルメルが読んでる本って見る度に変わってるよな? どんなペースで読んでンの?」
     ああ、段々と文字を追えなくなっていく。
    「メルメル? 俺っちの言うこと聞こえてる? メルメル?」
    「そんなにメルメル連呼しなくても聞こえています!」
     栞紐を挟んで本を閉じると声を上げた。思っていたより大きな声が出てしまったが周囲に天城以外いないから問題はないだろう。……天城が来た時点で薄々分かってはいたが、こんな状況では読めるものも読めない。
     ようやく反応が返ってきたことが嬉しいのか隣で天城が笑っている。その嬉しそうな勢いのまま肩に腕を回されそうだったのでそちらはさすがに拒否した。分かりやすく大きなため息を吐くが天城はどうせ意に介さない。
    「……一体何なんですか。今日はやけに呼んできて」
    「ん? だってメルメルがメルメルって呼んでいいって言ったからさァ。それなら俺っちも呼びたくなるだろ?」
     一瞬否定しようとして言葉を飲み込んだ。確かに先日そう言ったことは事実である。けれどそれは天城がヒメルンルンなどとふざけた名前で呼んだ結果巻き込まれてしまったゆえのものだ。しかしここで否定をするにはそこを説明する必要があり、未だに聞きつけていないような天城に自分から話すのは愚策と言える。言えば確実にからかってくる。
     からかわれる面倒とこのまま話さないことを天秤にかけて、話さない方を選んだ。天城のことだ。話したところでどうせメルメル呼びを止めたりはしないだろう。
    「……はあ、そうだとしても連呼する必要はないでしょう」
    「え~、メルメルはメルメルなのに?」
    「二人で会話している状況で不必要に呼びすぎる意味がないと言っているのです」
     天城が不満そうに口を尖らせている。だってそうだろう。複数人で話しているのならともかく、二人で話している時点で話しかける相手なんて一人しかいないのだ。必要以上に名前を呼ぶ意味はない。
    「まァ、これからメルメルを呼ぶ機会はいくらでもあるから今日はこれぐらいにしとくか」
     天城が立ち上がって身体を伸ばした。どうやら絡んでくることを止めたようだ。……何をしにきたんだ? 本当にメルメルと呼びたかっただけにしか思えない。
     どこか他の場所へ行こうとしている背中を見て少し悩み「天城」と声をかけた。呼び止められるのは想定外といった風にこちらに振り向く。
    「……原作小説、部屋にあるから後で貸しますよ」
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    85_yako_p

    DONE秀鋭。懺悔する演技の練習をする鋭心先輩と、よくわからなくなっちゃったけど鋭心先輩のことが好きになっちゃった秀くんです。書いてて私もよくわかんなくなっちゃった。明るくないです。(2023/7/26)
    モノクロレコード シアタールームに満ちる、淡々とした声を聞いている。大好きなはずの声は普段とは違ってボソボソと覇気がなく濁っていて、蓮すら咲かない泥のようだ。こんな声が目の前の男からこぼれていいはずがない。なんだか現実味のない、悪夢のような時間だった。
     鋭心先輩の口からは際限なく罪状が零れ落ちる。いま、俺は神父で鋭心先輩は裁かれることのなかった罪人だった。彼の告白する罪のひとつひとつがどんな罪に問われるのかは知らないけれど、その積み重ねの先にこんなどうしようもない人間が生まれてしまったのだということが悲しいほどにわかってしまう、そういう声だ。
     正直、こんな役を鋭心先輩に演じてほしくはなかった。鋭心先輩が次の仕事で演じるのは罪を犯したのに罰を与えられなかった人間だ。キーパーソンでもなんでもない、ただ世界の不条理を示すだけの端役で、やることは道端を歩くこと、懺悔室でたっぷり2分をかけて罪を吐露すること、そして何を守るでもなく車に轢かれることだけ。未来すら描かれることのない、亡霊のような役だ。
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