媚薬「ね、折角だから食べさせてあげようか」
自分が一生懸命相手を想いながら作って渡したチョコレート菓子を、受け取ったタンガロアが穏やかな微笑を浮かべて静かに喜びを噛み締めるように手にしたまま見つめているものだから、召喚主はたまらなく彼を愛しいと思った。どうかもっと彼に喜んでほしい――また自分の手作りのそれの味が彼の口に合うかどうかを知りたいと思った彼女は、良いことを思いついたとばかりに彼の顔を覗き込み、声を弾ませて提案するやいなや答えも聞かずに箱の中からチョコレートを一粒つまみ上げた。タンガロアは突然のことに驚いて目を丸くするばかりだったが、目の前の召喚主がきらきらと目を輝かせ、にんまりと満面の笑みを浮かべてこちらの反応を待っているのを見ると、吐息と共に笑みを零して彼女の方へと向き直った。もとより彼が彼女のこうしたスキンシップを拒むことはほとんど無いのだが。
1913