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    大遅刻バレンタイン 押し倒されてこのあとめちゃくちゃ以下略

    #ガロ主2
    #放サモ

    媚薬「ね、折角だから食べさせてあげようか」
    自分が一生懸命相手を想いながら作って渡したチョコレート菓子を、受け取ったタンガロアが穏やかな微笑を浮かべて静かに喜びを噛み締めるように手にしたまま見つめているものだから、召喚主はたまらなく彼を愛しいと思った。どうかもっと彼に喜んでほしい――また自分の手作りのそれの味が彼の口に合うかどうかを知りたいと思った彼女は、良いことを思いついたとばかりに彼の顔を覗き込み、声を弾ませて提案するやいなや答えも聞かずに箱の中からチョコレートを一粒つまみ上げた。タンガロアは突然のことに驚いて目を丸くするばかりだったが、目の前の召喚主がきらきらと目を輝かせ、にんまりと満面の笑みを浮かべてこちらの反応を待っているのを見ると、吐息と共に笑みを零して彼女の方へと向き直った。もとより彼が彼女のこうしたスキンシップを拒むことはほとんど無いのだが。
    「ああ――お前の望むままに」
    「ふふ。それじゃあ、はい。あーん」
    「ん……」
    チョコレートを摘まんだ指が口元に近づけられる。親が幼い子にするのに似たその行為を、己の伴侶たるを求めた相手とはいえ若い召喚主から受けることに多少の恥じらいを感じないわけではない。タンガロアは彼女の指先に身長に顔を近づけて、ハート型に形作られた、丸く艶やかな表面の焦茶色の一粒を唇で受け取った。目を閉じ、舌の上で滑らかに溶けていくそれを味わう。広がっていく濃厚な甘さに、――召喚主が自分のために作ってくれた、という喜びも多分にあっただろうが――深い吐息がこぼれた。丁寧に、徐々に溶けて小さく柔らかくなる粒を舌で転がして、呑み込む。ごくりと音が喉から聞こえた。
    口の中のチョコレートを食べ終えると、タンガロアはゆっくりと目を開けて召喚主を見た。その顔には胸の内から沸き起こる相手への愛しさから自然と笑みが浮かんでいる。
    「……うむ、美味い。こうした甘味作りもお前は長けているのだな、召喚主」
    「……」
    「……、召喚主?」
    こちらを見つめたまま反応のない召喚主を怪訝に思い、タンガロアがもう一度名を呼ぶと、彼女はそれでようやく我に返ったようだった。けれど視線は左右に揺れて、頬はほのかに赤く色づいていく。
    「そ、そっか。口に合ったのなら、良かった」
    「ああ。召喚主、その……、今一度、俺にお前手ずからそれを与えてはくれぬか」
    「う、うん。……いい、よ」
    この行為に召喚主もまた不意に照れを感じてしまったのだろうと思うとタンガロアは一層彼女が愛らしかった。こちらから請うことは許されるだろうかと内心少しの不安を抱きながら問えば、彼女は顔を一層赤らめ俯きがちになりつつも頷いた。ふ、とタンガロアは微かに吐息を零して微笑する。召喚主の華奢な指先が小箱から又一粒、鮮やかな赤色の一粒を摘まみ上げた。口元へと運ばれたそれを、タンガロアはもう一度唇で受け取ろうと顔を近づけた。

    どうしよう、と召喚主は内心焦りながらタンガロアがチョコレートを摘まんだ手に顔を近づけて、唇でチョコレートを受け取るのを見ていた。手作りのチョコレートを食べるタンガロアの様子が、彼女の目には刺激が強すぎるもののように思えてきてしまっていたからだった。
    チョコレートを口で受け取るときのタンガロアの伏せられた目、紅潮した目元、頬。ぴくりと小さく上下に動いたとがった耳。それに目を閉じて、口の中のチョコレートをじっくり味わう様。それらすべてが召喚主の目にはいつのまにか艶めかしいものに見えて仕方が無かった。――それでも、目の前の光景から目を逸らせない。
    心臓は今、とくとくと早く強く脈打っていた。耳も頬も血が集まって、熱く火照っているのを召喚主は感じていた。どうしよう、とまた思う。もう意識してしまったら取り返しが付かない。チョコレートを受け取る一瞬にふれた唇のやわらかい感触が指先に残っていた。緩く拳を握りしめたとてそれは変わらない。
    タンガロアの喉が動くのを、召喚主はやはり見つめ続けていた。それ以外何も出来ない。味わうために下ろされていた瞼がゆっくりと持ち上げられて、金色の瞳が姿を現して、――召喚主を、捉えた。召喚主は動けない。
    「召喚主」
    艶のある低い彼の声が、召喚主の名を呼んだ。
    自分への愛しさがたっぷりと籠もった、うっとりとした微笑をタンガロアは浮かべていた。大きく無骨な手が、召喚主の細い手首を優しく掴み自分の方へと引き寄せてくる。
    赤色のハート型のチョコレートは確か、ラズベリーピューレを混ぜ込んでるんだっけ。口の中に広がっていく甘酸っぱさと与えられる熱に蕩けそうになりながら、彼女はそんなことを思った。
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