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    #デュエス版深夜の文字書き一本勝負
    お題「間違えた」

    間違えた!!?



    はい、皆さんこんにちはこんばんは監督生です。異世界でも挨拶は大事、これ持論。本日も変わらずこのNRCでは魔法によるトラブルと魔法関係ないトラブルとございます。
    さて、そんな学園生活ですが本日の、いえ本日も問題児、エーデュースことエースとデュース。この二人がどうやらまた何かやらかした様です。
    先程からギャーギャーわーわー悲鳴が聞こえますね。
    他人のフリしてこのまま去りたいですね。これ無視してオンボロ寮に帰ってもいいですかね、ダメですかそうですか。

    はて、一体何が起きたのか、こうなったら腹をくくりますよ。まずは近づいて状況確認ですね。
    何をしやがったんだ、と二人に聞きます。

    「デュースが調合間違えやがった!」
    「た、たしかにそうだが、お前はお前で量を適当に入れてただろ!」
    「お互い様に悪いな」

    話を聞くにどうやらこの馬鹿コンビ、薬の調合を間違えたらしい。そして今日の授業は植物に栄養を与えるというのがテーマ。それをなんか色々やらかしてやらかした。
    そうしてそのやらかした薬が、グリムも参戦したことにより、なんかピタゴラスイッチ的に教室を出ていき、廊下に行き、窓を割り、桜の木にかかったようです。
    え、何それ??
    つかグリムかかわってんならどっちにしろ監督生として関わらざるを得なかったですね畜生。

    そうしてやらかし薬に不幸にもぶつかりました桜の木ですが、なにやら巨大化いたしました。
    少し枯れかけの老木でありました桜は、溌剌と蘇った枝を伸ばしております。
    さらになんと、薬の影響で人語が話せる桜にもなったではありませんか。
    その桜曰く、

    『栄養がほしい、栄養がもっとほしい、栄養を、栄養を』

    いやはや、本能のままに咲き誇りたい様でございます。
    枯れ朽ちるだけだった己が、また若々しく、それを手にしたら逃したく無いと言うのは人も植物も強く願う様です。
    しかし、桜のそんな願望は些かかなり問題がございます。なぜかと言うとさらなる栄養の為に求めて来たのが人間だったのです。

    『身も心も美しい者を寄越せ』

    困りました。何故ならここは天下のNRC。見た目で見れば高レベルな人材が揃っておりますが、心となると口を閉ざして目を逸らしてしまいます。
    そんな奴がNRCにいるかよと周りからも野次が飛んでおります。

    『美しい者の血を、血を浴びたい』

    血の伯爵夫人の様な事を言って枝を元気に振り回しております。

    さて、問題のエーデュースてグリムですが、当たり前ですがクルーウェル先生に叱られています。
    聞き慣れたバッドボーイがあたりに響きます。
    そうして当たり前ですがチェイテのお城のお姫様の様な桜をどうにかするように言われております。
    互いに言い合いをしながらも桜の前に来ました。

    『…………』
    「…………ん?」
    「は?ナニ見つめあってんの?」

    おおっと、なにやら枝を振りまわし暴れていた桜がピタっと動きを止めました。
    桜に目は無いのでよくわかりませんがエース曰くデュースと見つめあっている様です。
    目と目が合う瞬間好きだと気づいた的なモノですかね。
    そう言葉に出したらエースくんが睨んで来たので冗談だと発言を撤回しました。
    嫉妬とは可愛いものですね、そう笑ってやると「ハア?」と返されました。素直じゃないですね。
    本人は「そんなんじゃないんですケド」と本人は言っておりますが視線は見つめあう二人()から逸らしません。

    「いつまで見つめあってんだよ!」

    我慢出来なくなったエースはデュースの肩に手を置いてグイッと強く自分にむかせました。
    そうしてこちら側を見たデュースの瞳に、ゾッと背筋に悪寒が走るのを感じました。虚な瞳が、こちらを見ている筈なのに、何も見ていないのです。
    思わず肩から手を離したエースから、デュースはふらりとその場を離れて歩き始めました。
    向かう方向は桜の木です。

    「おい、デュースの奴ヤバイんダゾ」

    グリムが心配そうにしています。クラスメイト達も止まれ、そっちに行くなと叫んでいます。
    クルーウェル先生はすぐに対応できるように構えております。
    そんな周りの声が聞こえていないのか、デュースは桜の木にザッザッと迷いなく近寄って行きます。

    『いた、いた!顔も心も美しい者!!』

    「え、デュースでいいのか」
    「あいつ心美しいか?」
    「美しいというか単なる馬鹿じゃね?」
    「アホの子ほど美しいみたいなあれじゃね」
    「桜、妥協してね?」

    クラスメイト達が好き勝手言っておりますが、まあ確かにデュースは市販の卵からヒヨコなど可愛らしく純粋な面はございますね。
    そこは見ようによっては美しい心の持ち主かもしれません。
    いえ、問題はそこじゃありません。
    桜の木は枝をデュースに伸ばして取り込もうとしております。このままだと、デュースはデュース・ブロッサム・スペードになってしまいます。
    マブの血で咲き誇る桜なんて見たくねぇよ、マジで。
    先生に目線を送ると頷かれました。
    そうですね、先生も生徒の血で咲き誇る桜なんて見たく無いですよね。
    なんならグリムをお貸しします。
    木には火が効果抜群ですので。

    「デュース」

    グリムを渡そうとしたところ、先程まで黙っていたエースが口を開きます。
    名前を呼んだあと、少しばかり逡巡したあと、息を吸い込み言葉を吐き出しました。

    「次の休みの前日なら好きなだけ良いよ」

    何が良いのでしょうか、まったく検討つきませんね。
    ずっとボケてなんかいませんよ。
    実はこの二人お付き合いされてるとかそんなこと今は関係ありませんよね。

    バキッッ


    軽快な音と共に桜の断末魔が上がりました。
    デュースが、己の体に巻きついた枝を折ったのです。
    枝を折るといいますが、サバナクロー寮のジャックくんの腕を10本くらい束ねた太さの枝です。

    「嘘ついたら針千本だぞエース」

    すっかり目に光が戻ったデュースはさらに枝をバキバキしながらそう言います。

    「はいはい指切った指切った!」

    そう言うエースに満足気に笑ったデュースはそれはもう桜が認める美しさでした。
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