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    kawauso_gtgt

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    セ探占進捗。後日の自分がなんとかしました。
    もうちょい推敲するけどとりあえず

    「ほんに調子悪いんやねぇ、磁石の坊」
    「……」
    「まぁうちはそれで助かったんやけど」
    あとであの子に謝っときや。怒られても知らんで?
    しゃらん。椅子前で優雅に微笑んでみせる芸者の言葉に
    不調、その一言に尽きた。
    隠密しようとすれば踏みつけた小枝の音であっさりと居場所がばれ、解読しようとすれば調整に失敗してハンターに見つかって。挙句、狙われている味方の補助をすべく磁石を投げれば磁極の切り替えミスによってハンターに味方を差し出す始末だった。目も当てられないとはこのことである。
    あまりの不調にその被害を食らった調香師の彼女にすら気の毒がられてしまったのだから溜まったもんじゃない。
    「本来なら文句の一つや二つほど言いたいところだけど……勘弁してあげるわ。そんな顔してる人間を糾弾するほど心を捨てたつもりはないもの」
    ノートンが素直に謝ったとて、普段ならば皮肉の一つや二つを突き返してくるくせに、こういう時に限ってまともな人間ぶるのだから冗談じゃない。透けたヴェールから突き刺さる憐憫の視線はなんとも居心地が悪かった。
    この不調の理由の原因はとうに明らかだった。あの日からだ。余計なことなどしなければよかったのに。当然あれ以来ノートンはイライと「そういうこと」はしていない。
    皮肉にも深い眠りから目を覚ました翌朝。隣で人の気も知らずにぐっすり眠りこける占い師の腕の中から抜け出し早々に自室へと退散したのは苦い記憶だ。とはいえノートンとて思春期の少年時代などずっと遠くに置き去りにしてきたのだ。何もなかった振りをすることなど造作もなかった。時折何か言いたげな視線を受けることはあれど、それら全てに気づかない振りをして。全てを忘れるかの如く試合への参加を要請するノートンの姿は少しだけ焦燥しているように見えた。
    「ねぇちょっと、聞こえている? 貴方の話よ。正直貴方達のいざこざなんて微塵も興味はないけれど。一回面と向かって話したほうがいいんじゃないのかしら」
    「は、今更なにを話すことが?」
    「それは私よりも自分の方が分かってるんじゃなくて?」
    調香師の鋭い指摘にノートンはぐっと押し黙ることしかできなかった。それをつまらなそうに一瞥すると、ウィラはさっさと自室へと引っ込んでしまう。
    誰もいなくなった食堂のチェアに腰を下ろし、天井を見上げる。それからノートンは自身の目元を掌で覆うとぽつりと呟いた。
    「分かってる……分かってる」
    割りを食うのが嫌だから離れたというのに結局こうして不調に見舞われているのだから冗談じゃあない。
    試合中に負った傷口はとうに塞がっていて跡形もなくなっているものの、蓄積された疲労というのは消えてはくれない。もっと言うならばここ数日間に積み重なったそれは普段の比ではなかった。
    長いため息を一つ吐く。自分以外の誰もいない空間に、ばさりと羽音が割り込んでくる。見れば隣の席の背もたれに一羽の梟が止まっていた。
    「なに、お前も言いたいことがあるわけ?」
    苛立ちを孕んだ声はそこらの腕っ節の強い男も裸足で逃げ出すほどの迫力だと言うのに当の言葉を向けられた本人、否、梟は我関せずと言わんばかりにホウ、と呑気に鳴くばかりで。自分ばかりが気にしているみたいで、酷く腹立たしい。ノートンは天井を見上げて、もう一度小さく舌を打った。
    ***
    そんな日が続いたある日。とうとうと言うべきか。
    「試合に、出るなと?」
    平静を取り繕うことすらできずに引きつった笑みで問い掛ければ目の前の女医者はその通りだとばかりに首を縦に振る。華奢な身体つきをしているというのにその瞳が揺らぐことはない。
    「ええ、その通りよ。これ以上今の貴方を試合に出すことはできないわ」
    これは医師としての言葉よ。ノーとは言わせないわ。
    「それは、いつまで」
    「期限は断定できないわ。貴方もわかっているでしょう? 自分の最近の試合数が尋常じゃないことくらい」
    それから、本調子じゃないことも。
    悔しいことに彼女の言葉はどこまでも事実であり、自分でも痛いほどに理解している部分だった。今の自分が試合に出たところで貢献などもってのほかだ。味方を危険に晒す可能性だって大いにある。
    「……分かりました」
    素直に頷いたノートンの反応が予想外だったのだろう。エミリーは小さく目を見開いて、それから彼女もまたぐっと頷いてみせる。二、三日ゆっくりして、気分転換でもしてみたらどうかしら。その言葉に背を押されるまま自室へと戻ってきたノートンはぼすりとベッドへと身体を埋める。休みをもらったといえどもとより大した趣味など持ち合わせていないノートンのやる事など磁石の手入れか、日記を書くことくらいだ。一体どうやってこの長期休みを潰したものか。天井の染みでも数えてみようかとぼんやりと視線を泳がせていると、不意にとんとんと控えめなノックの音が響く。とんとん、とんとん。返事をするのも億劫だと黙っていれば扉の向こうから声が掛かった。
    「ノートン、起きてるかい?」
    聞こえてきたのはノートンが今最も会いたくない男の声。扉越しにその姿を見据えて、ノートンは硬い声で一言だけ返す。
    「……なに、悪いけど今は疲れてるから。放っておいて」
    それ以上は言わずとも分かるだろう。
    機嫌が悪い時の自分はなにをするかはわからない。それは此処で過ごすサバイバーであれば誰もが周知の事実であったし、勿論イライがそれを知らないわけがなかった。記憶を飛ばした後に傭兵の彼やオフェンスの彼が試合外での傷を負っているのをノートンは知っている。そしてそれが他でもない自身の手によるものだと。
    だというのにいつかの夜のように、この男はまたしてもこうして人の心の扉をこじ開けようとするのをやめない。それどころか触れて欲しくない奥底に隠した感情でさえ、当たり前のように触れようとするのだから溜まったものじゃなかった。
    「けど、ノートン」
    「いい、大丈夫だから」
    「違う、わたしは君に」
    「黙って」
    ぴしゃりと短く吐き捨てれば返事はなくなる。
    そのまま部屋に戻ってくれないものだろうかと扉の向こうを睨みつけてみるものの、扉の前の気配が動く様子は見えない。一つため息をついて、ノートンが扉を開ける。適当にあしらって、さっさと帰って貰えばいい。そう思って。ところが次の瞬間。がたん、勢いよく開いた扉と胸元にぶつかる塊のせいで、ノートンはそのまま尻餅をついた。
    「ちょっと、何のつもり」
    咄嗟に受け身は取ったもののそういう問題ではない。
    ぎゅっと握りしめられたシャツに小さく皺が寄る。
    「なんのつもり、だって? それは此方の台詞だ」
    目の前に座り込む男は俯いていて、何を思っているのか読み取ることはできない。
    「ダイアー先生から聞いたよ。無理に試合に出てるって」
    「それが? 貴方には関係ないだろう」
    どこか怒気を孕んだ声音に思わず吹き出しそうになる。お説教でも始めようというのだろうか。
    「君は! っ、もっと自分を大事にするべきだ……」
    矢張りこの男は人の想像の斜め上をいく。
    「この前だって、私にはそうやって言って、手を差し伸べたくせに、どうして自分のことは棚にあげるんだ……!」
    言ってくれなければ何もしてあげられないだろう。
    「頼りないかもしれないけれど、私だって」
    ああ、やっぱりそうだ。そういう男だった。
    腹が減ったと言われたら己のパンを与えるだろう。寒くて凍えるのだと言われたら己のローブをかけてやるに違いない。そういう男だ。イライ・クラークという男は。たとえ自分がそれで不遇な目に遭おうと相手が救われるのであればそれをよしとする。ノートンにはきっと、一生理解の出来ない考えかたをする。
    目を開けていられないほどに眩しすぎる男を前にして、ノートンは素直にそれを享受することが出来るほど出来た人間じゃなかった。
    どろり、どす暗い感情が湧き上がる。
    だったらこの人は、あなたの全てが欲しいと言われたらどうするのだろう。否、もっと端的に言ってしまおう。婚約者と自分、どちらかを選ばなければいけない状況に立たされた時、彼はどちらの手を取るのだろう。
    「言って、どうするの?」
    「え? どうっ、て」
    ぱしんと乾いた音が響いた。掌を振り払われた事実に、イライがの唇から間の抜けた声が零れ落ちる。振り払われると思わなかったのだろう。その呑気さが、癪に触る。
    「そんな関係じゃないでしょ、僕らは」
    友人ではあったかもしれないが恋人には天地がひっくり返ったところでなれやしない。
    一度引いた線を越えることは、許されない。そも、安っぽい同情なんて、誰も望んじゃいない。
    「あのね、誰もがあなたみたいに出来た人間じゃあないんだよ」
    一度振り払った掌を掬い上げて、いつかの交わりのように指先を絡めて引き寄せる。ともすれば唇が触れ合うほどの距離だ。かろうじて胸板に添えられた男の片腕によって、その一線は保たれているが。
    「みんなで仲良く譲り合い、なんて冗談じゃない。僕は、」
    「っ!」
    目の前の男の唇に赤が滲む。口内に広がる鉄の味に、動揺を隠し切れていない男に、自然と口角が上がる。
    「一個が手に入るなら、全部欲しい」
    身体が手に入ったならば、心まで欲しいと。どうして思わずにいられるだろう。気づかなければ、思わずにいられた。けれど、気づいてしまった。細やかに、けれど真っ暗闇を照らしだす導に。自分はもう囚われてしまった。一度見た鮮烈な光を忘れることなどそう簡単に出来るものではない。少なくとも自分には。
    「でも貴方はそうじゃない。でしょ」
    婚約者という絶対がいるというのに、彼に差し出せるものなどあるはずがないのだ。その身体のみならず、心を渡せと言われたとして。イライ・クラークはきっと、ノートン・キャンベルにその全てを委ねることはない。それを分かっているからこそ、自分は。
    「だから要らない。僕はこれ以上貴方になにも望まない、望めない。貴方も僕になにも渡す必要はない」
    これで、いいでしょう。出ていって。
    明確や拒絶の言葉を浴びてもなおイライは何かを躊躇していた。それが嫌で、それ以上何も聞きたくなくて。半ば無理矢理ぐいぐいと背中を押して部屋から男を追い出す。自分を呼び止める声など聞こえないフリだ。ぱたんと扉を閉じ、ずるずると背中を預けてその場に蹲る。
    扉の前の気配はしばらくの間そこに立っていたもののノートンが話を聞く気配を見せないのを悟ると自室かそれとも別のところへと去っていった。遠ざかっていく気配に漏れた溜息は落胆からか。それとも安堵からか。自分のことだというのに定かではなかった。ただ一つ言えるのは、自分が今酷く苛立っているということ。
    「驕るなよ、イライ・クラーク。この世界にはさ、貴方の手に救いきれないものだってあるんだ」
    きっと彼を待つ婚約者とやらは自分とは違い小さくて、可愛らしく、愛嬌のある女性なのだろう。豆の一つもない白魚のように綺麗な指先が男の頰を包み込む。そうして鈴を転がしたような声で男の名を呼ぶのだ。
    『イライ、大好きよ』
    まるで子供の飯事のような陳腐な愛の言葉だ。それでも男は女の手に己の掌を重ねると柔らかな笑みを浮かべるのだ。
    それは一度だって、自分には見せてはくれなかった笑みで。きっとこれからも見ることのない、慈愛に満ちた表情。
    「ああくそ、なんで」
    考えたくなどないのに。頭から追い出してしまいたいのに。まるで雨垂れが石を穿つように。じわじわといつの間にか日常に染み付いていた声が、温度が、あの男の存在が。脳裏にこびりついて消えてくれやしない。湖面に映る幻影を追い求めた男を愚者と笑ったのは他でもない自分だったというのに。
    顔も知らないイライの婚約者を想像して、顔を埋めた膝の間でノートンは小さく舌を打った。
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    Replies from the creator

    kawauso_gtgt

    PROGRESSモグ束と言ってるけど今回喋ってるのは土竜と猟犬。全ては此処から始まった。
    土竜が束縛者を引き取るまでに至る過程

    精神病院組と同じ顔の人達が存在する世界線。
    お得意の愛想笑いが崩れそうになるのをぐっと堪える。残念ながら目の前の男には通用しなかったようだが。お得意様、といえば聞こえはいいが、言ってしまえば厄介事を持ち込んでくる腐れ縁と言った方が的確だった。やれ最近違法武器を流している商人の足取りを洗えだの、やれ表じゃ禁じられた薬とやらをばら撒いている組織の裏を取れだの。土竜が一介の商人に依頼する内容にしては些か荷が重いと苦言を呈したのは一度や二度のことではない。とはいえそれ相応の報酬を寄越してくるからタチが悪い。それを理解してやってくる猟犬は勿論のこと、何よりそれで納得してしまう自分自身にも土竜は辟易していた。少しのリスクがあろうとそれを帳消しにするくらいのリターンを提示されてしまうとどうにも心が揺らいでしまう。いつだったかそのうち身を滅ぼすぞと苦言を呈されていたような気もするが、なんだかんだでいまだに土竜はこうして図太くも商売を続けることが出来ていた。悪運のいいやつとはよく言ったものだ。
    1538

    kawauso_gtgt

    REHABILIとある荘園で、来るかもしれない日のこと。
    (探占/匂わせ/解釈多様)

    古びた館の、とある一室。
    部屋の主の神経質すぎるくらいに几帳面な性格が滲み出た部屋の隅、屑籠の底。
    ぐしゃぐしゃに丸められた一枚の羊皮紙が捨てられていた。
    酷く強い力で握ったのだろう。手紙の差出人の名前は赤黒い染みが滲んでいて読むことはできなかった。
    x月x日、未明。拝啓 

    ノートン・キャンベル様

    正直なことを言うと、こうして人に手紙を書くだなんて久方ぶりなので何から書いたものかと迷っています。
    けれど、荘園(ここ)を脱出するにあたって、たった一人にだけ手紙を送ることができると言うことだったので。最後に君に何かを残せたらいいなと思い、今私はこの手紙を書いています。

    今更何を言おうっていうのかって、君は怒るかもしれない。いや、かもしれないじゃなくてきっと怒るだろうね。偽善も大概にしろ、なんて眉間に深い皺を寄せて、引き攣った笑みを浮かべてそう言うんだろう。
    私だってそれなりに君とは長い付き合いになる。それくらいはもう分かるさ。君って案外分かりやすいから。

    あっ、今手紙を握りすぎて皺ができたでしょう。最後までちゃんと読んでくれないと、困ってしまう。
    1757

    kawauso_gtgt

    REHABILIモグ束探占
    家出のそのあと
    書けない、書きかけだからちゃんと書いたらあげ直す

    リハビリ、しりきれとんぼ
    「……やっと寝た」
    何かから身を守るように両膝を抱え込んで安らかな寝息をたてて眠っていた。すっかり冷え切った頰に手を当てて溜息を吐く。
    何を聞いたのか知らないが突然失踪まがいな行動を起こすのは勘弁して欲しいものである。
    居るはずの人間の姿がなくなっていたときの心地はそうそう愉快なものではないのだから。猟犬との話を終えて自室に戻る道中、様子見がてら覗いた部屋がもぬけの殻だった時の心情を思い出した土竜は思わず額を押さえる。肝が冷えたとはまさにあのようなことを言うのだろう。
    最初(はな)から一筋縄でいく相手ではないとは思っていたが。どうやらあの白饅頭の心の奥底に住み着いた影は中々食えない存在だったようだ。会ったこともない相手へと対抗心を燃やしている自身に気付くと土竜は一人不満げに鼻を鳴らす。一人相撲など、らしくない。
    「ばかなやつ」
    それは己に対してか。それとも目の前の小さな生命に対してか。はたまた厄介な因縁の種を残していった、己と同じ顔をした人間に対してか。果たして。
    「……本当、馬鹿な奴」
    ライトのついた黒帽子をサイドテーブルに静かに載せる。冷たい室内で爛々と輝く灯りに照らされた寝顔は酷 1715

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    PROGRESSモグ束(おか束+モグ月前提&おか、月は故人)
    モグに惹かれてる事実とおかのことを自分だけは忘れちゃいけない罪悪感に苛まれて限界な束が爆発する話を書きたかった。拗らせすれ違い両片想いが好きすぎた。

    あとおかが死んだと頑なに認めない束に事実を突きつける土竜が書きたかったなどと供述しており…
    真っ暗な部屋が好きだった。
    此処にいれば誰にも痛いことをされたりしないし、理不尽に怒りをぶつけてくるような人もいない。点々と、少しだけ空いた隙間から差し込む光はまるで、いつか絵本の中で見たオホシサマのようで。閉ざされた世界を照らしてくれるそこは、いつだってイライの心の拠り所だった。
    冷たい床に転がって、暗い夜の海に意識を遊ばせていると、フードに覆い隠された耳がよく聞き慣れた足音を捉える。軽やかな足音は一歩、一歩と近づいてくると、イライのいる部屋の前でぴたりと止まった。かちゃりと開いた扉へと視線を投げると、何事もなかったかのようにイライはもう一度天井を眺める。
    扉が閉まると同時、近づいてきた影が上からイライを覗き込んで、それから数秒。地面に横になったイライの隣に、影が蹲み込む。鼓膜を震わせる声は、すっかり聞き慣れたあの子の声だった。
    「やっぱり此処にいた」
    「……どうして分かったの?」
    イライが首を傾げるのも当然のことだ。だって此処は院内の誰も知らない筈の場所。否、もしかすると気付いている人間もいるのかもしれないが少なくともイライが自らこの場所を誰かに明かしたことはない。誰も知らない、自 3152

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    MOURNINGセフレ探占の書き下ろしに入れようとしてたんだけどマイクモが難しすぎて(?)お蔵入りになったのでここに供養。いろいろあったからノは月相の衣装が好き(弊荘園設定)◇extra game

    「は〜疲れた〜!!」
    もうボクくたくた! 
    大声でそんな泣き言を言いながら隣を歩く男を一瞥すると、ノートンはぐるりと肩を回す。
    それはこちらの台詞だ。
    思わず声に出しそうになるのをなんとか堪えてため息を吐けば、それを同意と受け取ったのか。新たに荘園へとやってきた曲芸師の男──マイク・モートンは瞳をぱあっと輝かせてノートンの腕を掴んで上下に振る。
    「やっぱりキャンベルさんも思った? 思ったよねぇ! だって今日ぜぇんぶ一緒の試合だったもん!」
    数秒前までは疲労を滲ませていたかと思えばモノクル越しの瞳にぱあっと喜色が浮かぶ。ころころと変わる表情はステンドグラスのようだ。この荘園にあって異色な性格(キャラクター)の男にノートンは随分とまた忙しい人間が来たものだと思う。
    つい先日、マイクはこの荘園へとやってきた。元はどこかのサーカスの出らしい彼の自己紹介はどこか人懐っこさが拭きれない。荘園で暮らす彼らが警戒を緩めるのはそう難しいことではなかった。元より周囲の歳上に可愛がられていたこともあるのだろう。女性陣だけでなく、ノートンやカヴィン、果てはライリーにまで臆することなく 3122

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    PROGRESSこんな感じになる予定深く深く、薄暗い水底へ沈んでいた意識がゆっくりと浮上する。まるで羊水に包まれているかのような感覚は、目覚めを拒みたくなるくらい心地がいい。
    いっそ、このままずっと、眠ってしまおうか。
    そんな考えを察したかのように、緩やかな拘束が四肢を絡め取っていく。
    「……あさ」
    昨晩酷使した喉から出た声は、思った以上に掠れていて。とても他人に聞かせられたものではない。
    「……朝だ」
    もう一度、噛みしめるように同じ言葉を繰り返す。それからもう一度眠りに落ちる準備とばかりに肩までシーツを引き上げて目を閉じた。
    「……まだ起きなくてもいいよ。どうせ今日はみんな休みだ」
    耳元で聞こえる声も、未だ覚醒していないのだろう。己同様舌足らず調子のそれは、どこか幼い。背後から腹部に回された腕は、どこにも行かせないとばかりにイライの身体を締め付ける。少しだけ窮屈で、けれどそれすらも今となっては心地がいい。緩む口元を隠しきれないでいるイライに気が付いたのか。ノートンは首筋に顔を埋めながら呟く。
    「……随分とご機嫌じゃない」
    「そう見える?」
    「そうだね。まぁそもそも貴方の普段の朝の様子なんて知らないけど」
    ノートンの言葉 2330

    recommended works

    kawauso_gtgt

    DOODLE探占続き。それぞれの価値観とは。それ故にか荘園には定期的にメンテナンス日が設けられる。
    イライはどうやら同世代の女性陣に捕まっているらしい。
    元来そういった性格なのか。小さなものではあれをとって欲しいだの何を探しているだの、大きな物なら代わりに試合に出てはくれまいかと。余程の事でなければイライは大抵の頼み事を請け負っていた。
    ノートンにはわからない感性だ。なんの見返りもなしに誰かに奉仕するだなんて理解ができない。正直にそう告げたとしても、きっとイライは困ったように笑うだけなのだろうが。
    今日はエマとトレイシーに捕まったようで庭の片隅にある花壇の手入れを手伝っているようだった。庭師である彼女が丹精込めて育てた花は色とりどりで、どれもが活力に満ちた鮮やかな色を纏っている。
    「……不細工な笑顔」
    窓の外。エマに腕を引かれながらイライは及び腰で彼女の跡をついていく。柔らかな日差しの中で色鮮やかな花々に囲まれるその姿はまるで一枚の絵画のようで。
    ノートンはそうした芸術には明るくないから分からないが。
    似たような絵画が館のどこかに飾ってあったのを見たことがあった気がした。
    ***
    コンコンと軽いノックの後、「ノートン、入るよ」と 1329

    sangatu_tt5

    MEMO採掘🧲×アテ🔮の探占採掘現場から帰宅中の🧲は路地裏に人が倒れているのを見かける。面倒であることは理解出来たため無視しようとも考えたが、外面だけは良くするように努めていた🧲は周りの目を気にして、思わず声をかけてしまう。近寄ってみれば、それは人ではなかった。
    機械人形。オートマタ。神の作り出した偉業と言われる自立思考型の人形だ。動力源はネジだと言われているが、動く原理は分からず、人間と同じように立ち振る舞うことができるその人形は高値で取引される。
    それと同時に保護の為の法律も存在した。
    『人形が認めた主人は人形を破棄、放置することを禁ず。無断での転売も同様する。契約破棄を申し出る場合はしかるべき場所へ届出をすること』
    簡略すればこの通り。放置されているのであれば、通報しなければいけない。面倒に思いつつ、ぐったりと物陰に倒れた青いフードの人形の傍により、目隠し布を剥ぎ取る。
    睡眠の必要が無い人形が倒れているのは故障かなにかだ。軽率に触れた人形はパチリと目を開け、青い瞳に🧲を映す。
    「認証確認。照合開始します」
    淡い光を放つ人形の目がチカチカと点滅しながら、機械的なアナウンスが流れる。
    は?と急に動き出した 2966

    sangatu_tt5

    MEMOモデル🧲と🔮♀の立ち…ック婚姻届探占昨日まで付き合っていた彼女に「いい加減いつ結婚してくれるの?」とキレられ、結婚情報雑誌で頬を殴られた。丸められた雑誌は凶器に近い。仕事道具の顔を赤く染め、旅行カバンひとつで追い出された。
    馴染みのバーで飲んでいれば、場違いな女がずっと1人で窓の外を見ている。🧲がバメに「何あの子?」と聞けば、「好みかい?」と返ってくる。
    胸のデカさとお願いすれば簡単にヤラせてくれそうなおぼこい雰囲気は好みだが、服装があまりにも身の丈にあっていない。
    素朴な雰囲気の長い茶髪を揺らして、憂いに満ちた顔には淡い色のワンピース等が似合うのに、態とらしい黒のレースを使った大人な衣装は不相応さを演出する以外の意味をなさない。
    🧲「好みか好みでないなら抱けるかな…」
    バメ「はは、正直だね。あの子はダメだよ。婚約者がいるからね」
    🧲「こんな場所で1人なのに?」
    バメ「いつもは婚約者と来てるよ。まぁ、いい男かって言うと分からないけど」
    ふーんと背筋の伸びた彼女の姿を見ていれば、鳴り出した電話に答えている。場に合わせて潜めた声は🧲の元まで届かないが、別れ話なのはわかった。
    ボロボロと涙を流して、怒るでもなくた 1745